2022年9月の記事一覧
[ショートショート] 日本ダイエット
日本は情報過多だった。
街を歩けば広告がつきまとい、端末を開けば画面上を数百億バイトの情報が飛び交っている。
情報が人々の健康を害していると考えた政府は、ひとりが1ヶ月に浴びれる情報量に上限を設けた。
当然ながら強い反発が起き、あちこちでデモが行われた。
デモ隊に対し、政府は無差別に政見放送を照射する事で反撃に出た。
複数の放送を照射された一般市民はたちどころにその月の限度情報量を超過し、次
[ショートショート] 二重人格ごっこ
バイト仲間のミキコちゃんとデートすることになった。
今時珍しい正統派アイドルのような女の子だ。
奇跡としか言えない。
待ち合わせ場所に現れたミキコちゃんの姿を見て俺は少し驚いた。
普段着は随分とパンクな感じだったのだ。
戸惑う俺をよそに、ミキコちゃんは何食わぬ顔でタバコに火をつけ煙を吐いた。
「なんか、今日は雰囲気が違うんだね」
恐る恐る俺が言うと、ミキコちゃんはあははと笑った。
驚く俺
[ショートショート] 違法の健康
私はソワソワしながら料理が運ばれてくるのを待っていた。
ここは合法ギリギリの健康食を出す店だ。
注文した品が運ばれてきた。
ピラフとスープのセット。
私はピラフの具を見てギョッとした。そこにはエビではなくイカが鎮座していた。
イカは超絶健康食として法律で禁止されている。
「こ、これ、本当に合法なんですか?」
私は震えながら店員に尋ねた。
「ええ、油で炒めるとイカは別物となります。法の抜け
ドアの向こう [2000字のホラー]
娘がまだ赤子だったころ。
玄関の呼び鈴に興味を示し鳴らしたがるようになった。
鳴らすとなったら絶対。「押させない」という選択肢は私には無く、ダメなどと言ったら最後、のけ反って狂ったように泣き叫ぶほどだった。
呼び鈴くらい好きにさせていいだろうと思うかもしれないが、誰も居ない家に向かってベルを鳴らす行為が、私には不自然で不気味に思えていた。
できればやりたくなかった。
キンコーンの後にプスと小
[ショートショート] 感想文部
私の学校には感想文部に感想文を依頼できるポストがある。
図書室の片隅にある空き箱がそれなのだ。
その箱の中に書籍のタイトル、著者、そして自分の氏名とクラスを書いて入れておくと、翌日にはきっちりした感想文が教室の机の引き出しに入っている。
感想文部は非公式の部活だった。
作文が得意だったのでぜひ入部したいと考えた私だったが、入部方法が不明だった。
例の箱をこっそり見張ったりもしたのだが、依頼
[ショートショート] 株式会社のおと
目の前の赤いランプがまた点灯した。
私は指示通りカラスの鳴き真似を目の前のマイクに向かってやった。
かれこれ一時間以上はこうしている。
職安で特技を聞かれてカラスをやったらここに就職が決まった。
「あの…」
私は隣の男に話しかけた。男は無言で壁の張り紙を指さした。
それにはこう書かれていた。
この世のあらゆる音を作る『株式会社のおと』
君が〇〇の音となる。雑談禁止。
優秀発音者には快楽報