「秋の夜明け」 下
1分小説
この物語は2章構成になっています!
第二章:宵の風、月の味
その夜、瑠ガラスは店の厨房にこもり、彼女の試作を作っていた。 秋の夜空に渡る月のように儚く、そして心を落ち着かせる甘さ。 彼女の目指す和菓子のコンセプトが徐々に形を成っていた。
団子の柔らかな食感をベースに、淡い柚子の香りを忍ばせ、そこに季節を感じるための隠し味として焼き栗のパウダーをまぶす。仕上げに、表面を透明な寒天で包み込み、菓子の中に小さな小さな金箔を置いていた。 見る角度によって、月が雲の合間から覗くように見えるその和菓子は、「月見饅頭」と思われた。
次の日の朝、瑠ガラスはこの新作を持って店長の元へ向かった。 緊張の面持ちで試食をお願いすると、店長は彼女の表情を見て微笑んだ。
「瑠ガラスさん、勝手と自信ありげな顔をしてるね。早速いただこうか」
店長たまに口食べると、眉がほんの少し持ち上がって、口元が和らいだ。
「ふむ……ほのかな柚子の香りと、焼き栗の風味が口の中に広がりますね。なんというか……心が穏やかになる味だ」
瑠ガラスは胸を撫でて収録した。新作が伝統を重んじながらも、しっかりと現代の感性を捉えたことに手に応えた感じだった。
「ありがとう、店長。これはお客様にもきっと喜んでもらえると思います」
その時、扉の向こうからまた声が聞こえた。
「すみません、瑠璃さん……これ、昨晩のお礼です」
そこには見習いの清水くんが、昨日と同じように新しい包みを持って立っていた。彼を照らしているようだった。
瑠璃はその光景を見ながら、ふと自分の心の中色づいていくのを感じた。
それは、今まで見たどんな色よりも美しく、鮮やかな秋の夜明けの色だった。
おわり
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よろつよ
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