「スパイダー咲きガーベラ」 下
1分小説
この物語は2章構成になっています!
第2章:心に咲く花
ある日、翔が和菓子屋に入ってきた。瑠璃は驚いた。いつも通りの落ち着いた表情で彼は言った。
「この前、母がここの和菓子を買ってきて、それを一緒に食べたんですが、本当に美味しかったんです。母がまた食べたいって言ってたので、今日もいくつか買おうかと。」
彼が自分の作った和菓子を食べてくれていた。その事実に瑠璃の胸は少しだけ高鳴ったが、すぐに落ち着こうとした。淡々と注文を受け、彼の手元に商品を渡す。
「この花、綺麗ですね。」
不意に翔がスパイダー咲きガーベラを指差した。彼の目は優しく、その花を見つめている。
「崇高な美って花言葉なんです。少し派手すぎるかと思いましたけど、意外と店に合いますよね。」
瑠璃は、自然に口を開いてしまった。なぜこの言葉が出たのか、彼女自身もよくわからなかったが、その言葉に翔は笑顔を見せた。
「派手でも、こんなに美しい花は、きっと誰にでも似合うんですよ。」
その瞬間、瑠璃の胸に静かな温かさが広がった。翔がスパイダー咲きガーベラを美しいと言った時、それはまるで自分自身がその花であるかのように感じた。
その後、翔は和菓子を手に店を出て行ったが、その日から何かが変わった。瑠璃は少しずつ、彼に話しかける勇気を持つようになった。毎朝、花屋の前を通る度に、彼に笑顔を見せるようになり、彼もそれに応えてくれた。
そして秋が深まり、店頭には紅葉の和菓子が並ぶ頃、瑠璃は翔から一輪のスパイダー咲きガーベラを手渡された。
「この花、君に似合うと思うんだ。」
彼のその言葉と共に、瑠璃の心の中で静かに、一輪の花が咲いたのだった。
おわり
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よろつよ