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ブルースター 上
1分小説
この物語は2章構成になっています!
第一章:甘い花の香り
里田瑠璃は、毎朝同じ時間に目覚ましが鳴る前に起きる。京都の小さな和菓子屋で働き始めてから、もう5年が過ぎた。小さな店は、季節ごとの美しさを反映した繊細な和菓子で地元でも評判だ。彼女が得意とするのは、彩りの美しい生菓子作り。花や季節の植物をモチーフに、見た目も味わいも丁寧に仕上げる。その中でも、瑠璃が特に心を込めて作るのは、青い星形の小さな生菓子、「ブルースター」だ。
「瑠璃ちゃん、このブルースター、ほんまに可愛らしいわ」
店の主人、伊藤さんは彼女の才能を素直に褒める。瑠璃は微笑みながら、少し恥ずかしそうにうつむいた。彼女はいつも、人に褒められるのが苦手だ。特に、自分のこだわりが強く表れたものについては、どうしても自信を持てない。小さな気遣いをしすぎる彼女は、周囲の反応を気にしすぎてしまう。
ある日、店に一人の客が現れた。スーツを着た背の高い男性で、手にはブルースターの花を一輪持っていた。彼はふと和菓子のショーケースを覗き込み、瑠璃が作った「ブルースター」をじっと見つめた。
「この和菓子、いただけますか?」
その声に瑠璃は驚いて顔を上げた。どこか懐かしさを感じる目に、瑠璃は一瞬動揺したが、すぐに微笑んで彼に商品を手渡した。
「ありがとう。この花が好きでね、和菓子にもあるなんて不思議な縁だ」
そう言って、男性は和菓子を見つめる。
「ブルースターは、願い事が叶う花と言われているんです」
瑠璃がそう説明すると、彼は少し考え込むような表情を浮かべた。
「願い事、か……。叶うといいな」
彼のつぶやきは小さく、そしてどこか寂しげだった。その後、彼は何も言わずに店を去っていった。
つづく
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よろつよ
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