「山猫の謎」 下
1分小説
この物語は2章構成になっています!
第二章: 「みたらしの秘密」
翌日、瑠璃はいつもより少し早めに店に到着した。カウンターの上に並ぶ和菓子の色はまだどこか鈍く、明るさを欠いていた。彼女は心の中で決心した。あの男性客が来たら、この奇妙な出来事について何か糸口を見つけようと。
そして昼過ぎ、予感は的中した。再び彼が店に現れ、また「みたらし団子を一つください」と言った。瑠璃は団子を手渡しながら、思い切って質問を口にした。「あの、昨日もいらっしゃいましたよね?和菓子の色が少し変わったように見えるんですけど、何かご存じですか?」
男性は一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに静かな笑みを浮かべた。「気づくとは思っていませんでした。でも、あなたの目は特別ですね。」
彼はそう言うと、ポケットから小さな瓶を取り出した。それは透明な液体で満たされていて、まるで何かのエッセンスのように見えた。「これには色彩を吸い取る力があります。そして、その色を新たな形で再利用できるんです。」
瑠璃は驚きと好奇心が入り混じった表情で彼を見つめた。「どうしてそんなことを?」
彼は静かに答えた。「色には記憶が宿るんです。そして、私にはその記憶が必要なんです。」
その言葉に瑠璃は少しだけ理解した気がした。彼は何かを取り戻すために、その色を集めていたのだ。そして、彼の中には何か大切なものが欠けている。彼の持つ瓶が何を意味するのか、全てを理解することはできなかったが、瑠璃はその色を取り戻す手助けがしたいと思った。
「もしよかったら、その色を和菓子に返してもらえませんか?お客様たちが待っていますから。」
男性はしばらく考えた後、小さくうなずいた。「あなたなら、信じられるかもしれませんね。」そう言って、彼は瓶の中身をそっと和菓子に戻した。途端に、和菓子たちは鮮やかな色を取り戻し、店内が一瞬輝いたように見えた。
瑠璃はその光景を見て、心の中で小さな満足感を覚えた。彼女は色彩を守ることができた。そして、男性もまた、何かを取り戻したようだった。
その日、瑠璃は和菓子を包みながら、心の中で新たな希望を感じていた。色彩には人々の記憶や感情が込められている。そして、それを守ることが彼女の役割なのだと。彼女はこれからも、小さな気遣いを続けていくつもりだった。
おわり
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よろつよ