見出し画像

「シオン」 下

1分小説
この物語は2章構成になっています!


第2章:忘れられない思い



それから数日後、悠斗は再び店を訪れた。今回は、シオンの花束を手にして。

「これ、君に渡したくて。」

瑠璃は驚いた。シオンの花を見て、胸が締めつけられるような感覚が広がった。それは、彼女が忘れようとしても忘れられない思い出を象徴する花だった。

「昔、君が好きだった花だって覚えてて……渡したくなった。」

悠斗の言葉に、瑠璃は言葉を失った。彼が、あの時の自分の気持ちをどこまで知っていたのだろうか。彼女の中でずっと封じ込めてきた感情が、再び息を吹き返すような気がした。

「ありがとう……でも、今さらこんなことを言われても、どうしていいかわからない。」

瑠璃は正直な気持ちを伝えた。悠斗に対する想いはまだ心の奥に残っていたが、長い年月が経ち、今の自分がその感情をどう扱っていいのかがわからなかったのだ。

しかし、悠斗は静かに頷いた。

「わかってる。でも、君を忘れることができなかったんだ。それだけは、伝えたかった。」

その言葉に、瑠璃は胸が温かくなるのを感じた。シオンの花は、ただの追憶ではなく、新たな始まりを告げるものかもしれない。彼との関係が再びどのように進んでいくのかはわからないが、少なくとも、彼女はもう過去に縛られることはないと感じた。

「私も、忘れてなかったよ。」

瑠璃はそう言い、彼の手からシオンの花束を受け取った。そして、その紫色の花は、彼女の心の中で静かに咲き続けるだろう――過去の追憶ではなく、これからの未来を映し出す花として。


おわり


#シオンの花 #再会の恋 #追憶の花言葉 #和菓子屋の秋 #君を忘れない


Kindle unlimitedで無料で読めます


よろつよ



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?