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「おばあちゃんの手紙」 中
第二章 手紙の記憶
「あなたがこの手紙を読んでいるということは、私はもうこの世にはいないのでしょうね」
手紙の最初の一行を読んで、僕は思わず息を飲んだ。
祖母の字は、まるで僕に直接語りかけるように流麗だった。幼い頃、僕は祖母と一緒に何度も縁側に座り、夕焼けを眺めながら話をした。その時間が、今さらながら懐かしく思えた。
「あなたがどんな大人になっているのか、とても楽しみです。でも、きっと優しい心を持った立派な人になっていることでしょう。なぜなら、あなたの心の中には、ちゃんと人を思いやる温かさがあったから」
僕は唇を噛んだ。祖母は僕のことを本当にそう思っていたのだろうか。自分がどんな人間になったのか、正直よくわからない。子供の頃に夢見た未来とは違う自分が、今ここにいる。
手紙には、祖母との思い出が綴られていた。手をつないで歩いた商店街のこと。転んで泣いた僕を、祖母が抱きしめてくれたこと。夏の夜に一緒に見上げた花火のこと。
そして最後に、祖母はこう書いていた。
「人生は思い通りにならないことばかりです。でも、大事なのは、自分が何を信じて歩いていくかです。何があっても、あなたはあなたらしくいてください」
僕の目から、静かに涙がこぼれた。
つづく
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