利休の夢 上
1分小説
この物語は2章構成になっています!
第一章: 利休の影
里田瑠璃は、28歳の独身女性。京都の小さな和菓子屋で働いている。彼女は色彩の資格を持ち、日々の仕事にその知識を活かしていた。和菓子の色彩は、味覚と同じくらい重要だと瑠璃は信じていた。だから、彼女が作る練り切りや羊羹には、季節や時間、時には感情すらも映し出されていた。
ある日、瑠璃は店の片隅にある古い書棚を整理していると、一冊の古びた茶道の本を見つけた。表紙には「利休の夢」と書かれている。その瞬間、彼女は不思議な感覚にとらわれた。まるで本が自分を呼び寄せたかのような感覚だった。好奇心に駆られ、瑠璃はその本を手に取った。
ページをめくると、茶道の心得や歴史が記されていたが、最後の数ページだけが白紙だった。不思議に思った瑠璃は、その白紙に触れると、突然、目の前が暗くなった。意識を取り戻した時、彼女は見知らぬ茶室の中に立っていた。室内は薄暗く、静寂が支配していた。
「ここはどこ…?」と瑠璃が呟くと、背後から低い声が聞こえた。
「ここは、利休が見た夢の中。貴女はその夢を覗き込んでしまったのです。」
振り返ると、そこには和服を着た古風な男性が立っていた。彼の目には深い知恵が宿っており、瑠璃は言葉を失った。彼は千利休その人であった。
「なぜ私がここに?」と瑠璃は尋ねた。
「貴女が本を開いたからです。そして、この夢の中で貴女が成すべきことがあるのです。」
瑠璃は困惑しながらも、利休の言葉に耳を傾けた。利休は続けて言った。
「茶道は単なる作法ではなく、心の在り方を映し出すものです。貴女はその色彩の感覚で、この夢の中の乱れた世界を正し、私の魂を解放しなければなりません。」
瑠璃は理解できないまま、利休に導かれ、夢の世界を進むことになった。しかし、その道中で彼女は次第に、この世界が自分自身の内面と繋がっていることに気づき始める。色とりどりの和菓子が次々と姿を変え、瑠璃の心に潜む迷いや悩みを映し出していた。
つづく
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よろつよ