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満月の涙 上

1分小説
この物語は2章構成になっています!


第一章: 月光の中の出会い


里田瑠璃は28歳の独身女性。都心の喧騒から離れた古い町で、和菓子屋「月見堂」に勤めていた。彼女は職場の小さな空間で働くことが好きで、季節の移ろいを感じながら、丁寧に和菓子を作る毎日を送っていた。

ある夜、仕事を終えた瑠璃は、ふと外に出て空を見上げた。雲一つない澄み切った夜空に、ひときわ美しい満月が浮かんでいた。その光は、まるで古代の伝説にあるように、神秘的でありながらもどこか儚げだった。瑠璃はその美しさに心を奪われ、しばらくの間、何も考えずに立ち尽くしていた。

その時、彼女の足元に一滴の水が落ちた。驚いて下を見てみると、足元に小さな水たまりができていた。瑠璃は雨が降っていないことを確認し、月から涙がこぼれ落ちたのだと信じた。彼女はその水を手ですくい上げ、月の光に透かしてみたが、何の変哲もないただの水だった。しかし、その瞬間から、彼女の中に奇妙な感覚が生まれ始めた。

瑠璃はその夜、夢を見る。夢の中で彼女は、満月の下に佇む謎の女性と出会った。女性は深い青色の和服をまとい、肩までの黒髪を風に揺らしながら瑠璃を見つめていた。瑠璃がその女性に近づくと、彼女は微笑み、静かに言った。「あなたがこの涙を受け取ったのね。」

瑠璃は不思議に思いながらも、何か答える前に目が覚めた。目が覚めたとき、彼女の手には夢の中で受け取った月の涙が確かにあった。夢と現実が交錯する瞬間に瑠璃は、ただただ困惑した。

翌日、瑠璃はその涙を持って月見堂に向かった。その日から、瑠璃の作る和菓子には不思議な力が宿るようになった。和菓子を食べた客たちは、一瞬にして幸せな記憶を思い出し、心の底から温かい気持ちになるという噂が広まった。しかし、同時に瑠璃の心の中に、あの夢の女性への疑問と不安が膨らんでいった。


つづく


#ファンタジー小説 #満月の涙 #和菓子の魔法 #心の物語


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よろつよ


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