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「紅葉の贈物」 上

1分小説
この物語は2章構成になっています!


第一章:秋風と赤い葉の秘密


里田瑠璃(さとだるり)は、28歳の独身女性。東京の下町にある小さな和菓子屋「紅花堂(こうかどう)」で働いています。その連続の作業は、彼女にとって心地よいセッションのようなもんだった。 和菓子作りに必要なのは細やかな感性だと思う、彼女は信じていた。

店に並ぶ季節の和菓子は、すべて瑠ガラスが構想したのものだ。 春の桜餅、夏の水ようかん、そして今の時期は、紅葉を模した練り切りが主役となる。 赤や黄色、橙色のグラデーションを丁寧にに手でぼかして作り上げるその一品は、見る人に秋の感動を感じさせました。

今日の午後、瑠璃はいつものように練り切りを仕上げていた。 彼女の手元には、京都から取り寄せた特別な着色料があり、それを使うことでかなりな色合いを表現できる。 、何かがいつもと色々あった。

「なんだろう、これ……?」

瑠ガラスは少し手を止め、その赤色をじっと見つめた。 まるで紅葉の葉っぱが溶けるような、深い赤。ふと外から見て、店の前の銀杏並木がちょうど色づき始めていた。客足は秋になると増え始める。涼やかな風に吹かれながら、和菓子を楽しむがこの店の贅沢だった。

しかし、その日、瑠璃はどうしてもその赤色に違和感を感じていた。お客さんが訪れました。

「こんばんは、瑠璃ちゃん。今日の紅葉のお菓子も素敵ですね。」

彼女は毎年この季節になると、必ず紅花堂を訪れ、紅葉の練り切りを買っていくのだ。 瑠ガラスがこの店で働き始めた時からの常連でどこ、か懐かしい雰囲気を持っている。

「ありがとうございます。今日は少し、赤を待ってました。」

「そう……。では、この色……。」

老婦人は静かに微笑んだ。その目は、かなり昔を見ていたようだった。彼女はそっと和菓子を手に取り、しばらくそれを眺めていた。

「この色を見ると、私の若い頃を思い出しました。あの時も、こんな赤い赤い葉が……。」

老婦人の声が少し新鮮だったように聞こえた。 しかし、彼女はすぐに微笑んで言葉を続けた。

「ありがとうね、瑠璃ちゃん。このお菓子、大切にいただきます。」

そのまま老婦人は紅花堂を後にした。 彼女の後ろ姿を見送りながら、瑠璃は何も胸がざわめくのを感じた。 ――まるで、老婦人の言葉の中に、何か大事な秘密が隠されていたいるように思われたのだ。

そしてその夜、瑠璃は不思議な夢を見た。 赤く色づいた木々の間を一人の女性が歩いている。 その姿は、夜中の老婦人にそっくりだった。手を差し伸べた。

「この紅葉の色はね、永遠に消えないのよ。」

そう呟くと、彼女の体はふっと消えて、残ったのは一枚の真っ赤な葉だけだった。


つづく



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よろつよ



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