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「おばあちゃんの手紙」 下

第三章 祖母の願い


 手紙を読み終えたあとも、僕はしばらく動けなかった。祖母の言葉が胸の奥に響いていた。

 僕は、ずっと自分に自信がなかった。周りに流されて生きてきた。何を信じていいのか分からずに、ただ日々を過ごしていた。でも、祖母はそんな僕に、静かに語りかけていた。

 僕は手紙をそっと胸に押し当てた。そして部屋の中を見渡す。祖母がいつも座っていた椅子、使い込まれた湯飲み、机の上に置かれた小さな置時計。どれも祖母がここにいた証だった。

 ふと、机の上にもう一つ、小さな封筒があるのを見つけた。

 それは、祖母が僕に残した最後の贈り物だった。

 封筒の中には、一枚の紙が入っていた。

 「あなたが人生に迷ったとき、空を見上げてごらんなさい。どんなときも、あなたの道を照らす光は必ずあるから」

 僕はそっと窓を開けた。外の空には、雲間から淡い光が差し込んでいた。

 祖母はもういない。でも、その言葉は、僕の心の中でずっと生き続けるのだ。

 僕は手紙をそっとしまい、祖母の遺影を見つめた。

 「ありがとう、おばあちゃん」

 小さくそう呟いて、僕は歩き出した。


おわり

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