![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/172812465/rectangle_large_type_2_9f577cc8081ef88038574637a3280f67.png?width=1200)
月影の門 中
第二章 影の国の謎
月の光は静かだったが、妙に重く感じられた。高坂は刀の柄に手をかけ、辺りを見渡した。空気が異様に澄んでいる。まるで、世界が一枚の絵になったようだった。
しばらく歩くと、一本の鳥居が見えた。黒ずんだ木の柱には古い文字が刻まれていた。
――月影神社
聞いたことのない名だった。高坂は鳥居をくぐった。その瞬間、背後の道が消えた。振り返っても、ただ月光が揺れるだけだった。
「これは……何かの仕掛けか?」
やがて、奥に社が見えた。朽ちかけた祠の前に、一人の男が座っていた。黒い着物に身を包み、白い面をつけている。
「影を踏んだ者か」
男はゆっくりと顔を上げた。
「お前は誰だ?」と高坂は訊いた。
「私は影の門を守る者。お前は既に、この世界の一部になりつつある」
高坂は眉をひそめた。
「この世界とは何だ?」
男は微笑んだ。
「影の国。月の影を踏んだ者が迷い込む場所。ここに入った者は、元の世界には戻れぬ」
「冗談ではない」と高坂は吐き捨てた。「私は旅の途中だ。ここで足を止めるわけにはいかぬ」
男は静かに頷いた。
「ならば試練を受けよ。影を断つ力があるか試すのだ」
風が吹いた。社の前の影が動き、形を変えた。それはやがて人の姿を成し、高坂に向かって歩み寄ってきた。
「影を斬れ」と男が言った。「それができれば、お前は元の世界に戻れる」
高坂は刀を抜いた。月光が刃に反射し、冷たい光を放った。
つづく
いいなと思ったら応援しよう!
![よろつよ](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/141130479/profile_6b4948d509c7b9c6e21ae4b3be93930b.png?width=600&crop=1:1,smart)