秋空の入口 下
1分小説
この物語は2章構成になっています!
第二章:影の向こうに
その日、瑠璃は手紙に従って嵐山へ向かった。紅葉が色づき始めた山々が美しい景色を作り出し、観光客たちがその光景に酔いしれている。しかし、瑠璃の心は不安と期待で揺れていた。渡月橋に立つと、秋風が彼女の髪を優しく揺らした。
日が沈みかける頃、橋の向こうに一人の影が現れた。瑠璃はその影に向かって一歩を踏み出した。近づくにつれて、その影が少しずつ鮮明になっていく。彼女の胸が高鳴る。影は男のもので、彼は瑠璃に微笑んでいた。
「君が瑠璃さんだね。」彼は静かに言った。
「あなたは…誰ですか?」瑠璃は緊張しながら問いかけた。
男は一瞬、言葉を探すように空を見上げた。「僕は、君のお祖父さんの友人だった者だ。君には話すべきことがある。」
瑠璃は驚いた。彼女の祖父は数年前に亡くなったが、生前はとても静かな人で、瑠璃が知る限り、特に秘密はなかった。しかし、この男の表情には、何か重大なことを隠しているような色が見て取れた。
「君のお祖父さんは、ある秋の出来事で大きな秘密を抱えていた。その秘密は、和菓子作りに関わるものだが、同時に彼の命を危険にさらすものでもあった。」
瑠璃は戸惑った。「それが、今の私に何の関係があるんですか?」
男は真剣な眼差しで瑠璃を見つめた。「君は、その秘密を守るために選ばれたんだ。そして、秋の入り口とは、君がその役割を果たすための場所なんだ。」
瑠璃は言葉を失った。彼女は和菓子作りを愛し、祖父から多くのことを学んだ。しかし、そんな深い秘密が隠されていたとは知らなかった。
「でも、何をすれば…?」
そのとき、男は手を差し出し、一枚の古びた紙を瑠璃に渡した。それは、古い和菓子のレシピだった。だが、そこには奇妙な暗号が書かれていた。
「このレシピを解読しなければならない。そして、それを作り出すことで、君は祖父が守ろうとしたものを見つけるだろう。」
瑠璃はレシピを手に取り、深く息を吸った。「わかりました。やってみます。」
男は満足そうに頷き、「気をつけて。君の後を追う者もいる。」と言い残して、秋の夕暮れに溶け込むように消えていった。
瑠璃はその場に立ち尽くしながら、これから始まる新たな運命を感じ取っていた。祖父が守り続けた秘密、それを解き明かすための彼女の旅が、今、始まろうとしている。
終わり
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よろつよ
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