こどもプロコン2021作品レビュー
今年もこの季節がやってまいりました。「こどもプロコン」と聞くと、あぁもうそんな時期かと春を実感する私です。
正しくは「PCNこどもプログラミングコンテスト」と言うこのイベントは、日本全国(そして世界各地)の小中学生によって行なわれるプログラミング大会とでも言うべきもの。ここに出てくる内容はゲームから実用的なもの、電子工作入ってるものまで多岐にわたり、そんな作品群の中から優秀賞、最優秀賞、協賛企業による協賛賞などが決定されるのです。
見るたびに小中学生の技術力と意識の高さを実感するこのイベント、さっそく当方が着目した作品を紹介してまいります。応募総数282作品、うちノミネートは59作品とのことですが、本記事では特に私が着目した作品に絞って紹介させていただきます。
※ 作品のビジュアルや表彰式などは上記公式サイトよりご確認ください。
ソフトウェア部門小学生の部
コロナをやっつけろ!
吉能湊(小学3年生)/Scratch
PCN特別賞
やっぱりかというべきか、今回はコロナに絡めたネタものが多かったです。
今回のこれはコロナに関する○×クイズとカンタンなシューティングゲームで構成。小学生の図工の時間に描いて作りました感が満載でなんだかほっこりとさせられます。ちょっと暗めなBGMの選曲もさすが。エンディングでは「みんなもコロナウイルスに気を付けよう!」で締め。少し気が引き締まるとともに、小学3年生にこういうことを言わせるいまの世の中に少し心の痛みを感じた次第です。
高速列車3Dシュミレーター High-speed trains 3D simulator
鹿毛幸太(小学3年生)/Scratch
個人的にはこれに賞あげたかったよ…。画面見たら分かるんですが、これ「電車でGo!!」ですよ。Scratchでこれ作っちゃうとか「ホントにっ!?」と思ってしまいました。UnityとかC++とかじゃないんですよ?審査員の方にはそこをもっと見てあげてほしかったな…。
ゲーム内容も列車種別とか車両とか選べたり、走行中に雪が降ってくるなど凝っています。いやこれ遊んでみたいわマジで。
ホッピング竹取物語
安藤優那(小学6年生)/Scratch
ブロンズ協賛賞(ジャムハウス賞)
作者の安藤さん、あなたこれ絶対「源平討魔伝」見て作ったでしょ?というくらい「源平討魔伝」ですよこれ。あぁ脳内によみがえる琵琶法師。
文字の表示と言いビジュアルといい雰囲気と言いまぎれもなく「源平」なのですが、でも「竹取物語」なんですよねこれ…。小学6年生であれを知ってるとしたら将来有望な兵ですが、もし全然知らずたまたま作ってこれになったのだとしたら、それはそれで恐ろしいです。
The color picker
船橋一汰(小学6年生)/HTML+JavaScript+CSS
ソフトウェア部門小学生の部最優秀賞
R(赤)とG(緑)とB(青)のメーターをいじって目的の色を作ればクリアというゲーム。シンプルながらアイデアがズバ抜けているなと感じました。「操作するときのカチカチという効果音やクリアしたときの画面効果がプレイする気持ちよさにつながっている」とは審査員の弁。作者の船橋さんにはノートパソコンが賞品として与えられました。すごい!
この類の「色に対する感覚」は私なんかだと仕事柄いつもお付き合いしてるものなのですが、小学生くらいだとどうなんだろ?グラフィックやる方なら少なからず意識してると思うのですが…。
ソフトウェア部門 / 中学生の部
〇×ゲーム改
村山慧吾(中学2年生)/Scratch
若葉賞、ソフトウェア部門中学生の部最優秀賞
なかなか決着が付かない○×ゲームを、盤を任意で追加して延長戦ができるようにした作品。いやこれは最優秀賞取るでしょ!!
どれだけエリアが広くなったとしてもルールは「どちらかが3つ揃えたら勝ち」なので、どちらに広げるかが戦略のカギを握ります。ボードゲーマーとしても血が騒ぐわこれ。いまごろどこかのメーカーが商品化に向けて動き出しているのではとすら感じます。
こちらも賞品としてノートパソコンをゲットされました。
文章分析!その文章ポジティブ?ネガティブ?
齋藤楼貴(中学3年生)/python
NSD賞
きたよPython!!このプログラムは小説などのテキストデータをまるごと読み込ませ、その文章の中のポジティブな言葉とネガティブな言葉を抽出し、その傾向を明らかにするというもの。使用頻度の高かった言葉をポジディブとネガティブに分け、ベスト5を棒グラフで表示し、最後に円グラフで全体傾向を表示してくれます。統計やデータ分析はPythonのお家芸っていうけれど、それを遺憾なく発揮したプログラムと言うことができるでしょう。
最優秀とか優秀賞ではなかったものの、こちらもノートパソコンをゲット。
ロボット・電子工作部門 / 小学生の部
Space Box
宮本蒼(小学6年生)/Arduino UNO
「ティッシュを抜くとセンサーが作動して残り枚数を教えてくれるという商品です!」って、商品だったんかいそれ!!(笑)
残念ながら賞には届かなかったようですが、私はこういうの好き。というか欲しい!これ欲しい!!ボックスティッシュって残り枚数が少なくなると、絶対あと何枚かって気になるもんね。リアルに商品になることを密かに期待しております。
階段掃除ロボ ver.2.1
白川瑛士(小学6年生)/IchigoJam BASIC
ロボット・電子工作部門小学生の部最優秀賞
お掃除道具のウェーブを付けたロボットが何と階段を登りながら掃除をしていくという、何とも力技な作品。階段のある家ならこれ欲しいでしょう。IchigoJamがこんな使われ方をするなんて…。
そして掃除が終わるとLINEに通知が送られるというのもポイント。こういうことに活きる可能性があるから、小学生であってもLINEとか最新のIT技術に親しませるべき。こういうの見て痛切に感じます。
この方もノートパソコンを賞品としてゲットしました。
ロボット・電子工作部門 / 中学生の部
うちのはこいりネコ
遠田陽紀(中学3年生)/IchigoJam BASIC
「おい、そっちにソリッドスネーク行かなかったか?」「いえ、こちらにはまだ…」というシーンが思い浮かんでしまう私はどうせ懐かしゲーマーですよーだ。そう、あの「メタルギア」(コナミ)の名物アイテム「段ボール」のようなシュールな外見。決して箱から出てくることのない、まるでシュレディンガーの猫のような設定。それは存在しているのと同時に存在していない論理の迷宮。誰が賞を授けなくとも、私はこれにリスペクトを捧げます。
コロナ対策腕時計
上村悠真(中学1年生)/IchigoJam BASIC
ブロンズ協賛賞(ithink賞)
まぁ来るだろうねこういうの。付けているだけで体温を測定し、さらにソーシャルディスタンス対策として誰かに近づくとセンサーが反応して警告、注意を呼び掛けるというもの。解説動画を見た限りでは服の上に装着していたけれど、最近の体温センサーってそんな性能いいのか…。
誰かに近づくだけで警告が鳴るんじゃしんどいなぁと思いつつ、でもそのくらい神経質な人は確かにいるので、こういうニーズ本当にあるのかもなぁ。
コロナ対策ロボットAI助(アイスケ)
高橋理企(中学2年生)/Python3, Raspberry Pi 4, micro:bit, LINE Notify
国立高等専門学校機構賞、ラズベリーパイ財団賞
ロボット・電子工作部門中学生の部優秀賞
顔認証で家族や配達の人、知人などを識別し、それぞれに異なった声がけをするという装置。さらに誰が来たかをLINEで通知してくれる機能付き。作者の方はこれを「来客対応によるコロナ感染リスクを減らす」という狙いで作ったようですが、むしろ防犯にその効果を発揮する作品と感じました。
絵面もとこかユーモラスに感じさせられる感じになっており、審査員はそこを高く評価したようです。
Inter Notify~視覚的にわかるインターホン~
安東鷹亮(中学1年生)/M5StickC、Arduino IDE
ロボット・電子工作部門中学生の部最優秀賞
インターホンが押されたとき「いつ鳴ったか」をネット経由でスプレッドシートに記録するシステム。インターホンが鳴らされるとパトライトが回転して中の人に知らせます。
審査員の方によれば「自宅のインターホンを分解して実装したということ」と「これを実際に運用している」というところを高く評価したようです。
賞品としてノートパソコンをゲットされました。
まとめ
以上、私なりに評価した作品をまとめてみました。
受賞しているのにここで取り上げなかったもの、逆に賞を取れなかったのにここで高く評価したものもあります。そこは私の感性で書かせていただいているので、偏っているとはいえご了承いただければと思います。
全受賞作品見たい方はこちら。
全体的なタイトルの傾向見るとコロナに絡めたものが多いです。それだけ小中学生にとっても深刻な関心事なんだろうね。行事だってことごとくぶっ潰されまくったわけだし。まぁでも、そこに技術の力で立ち向かっていこうとする姿勢に意識の高さを感ずる次第でありますよホントに。
あとあれですよね、これらの中にはガチで商品化してよって思うものが確かにあります。まぁ実際に商業ベースに乗せるとなるとやれ何台売れるんだとかマーケットのニーズはどうよといった大人の事情が腐るほど湧き上がってきて、なかなか世に出せないのは嫌ってほど分かるんですけどね。
とはいえモノ作りを生業としている身としてはこういうのに少しでも触れてアイデアを研ぎ続けなくてはなって思いでこうしてまとめさせていただいてます。
大人はなかなか思ったことを形にできないから。
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