カウンセリングで、最初に生育歴・家族歴を聴取する必要性があるのか
私が東大心理教育相談室所属だった時代に、東大・名大・京大・広大・九大合同で毎年一回2泊3日宿泊研修会が各校持ち回りで開かれるという今では考えらない催しがあったのだが、東大の事例発表だけが、
「なぜ最初に 生育歴・家族歴を聴取しないのか?」
という質問が他大学の相談員から必ず出た。
生育歴・家族歴 の聴取に関しての私の考えを述べれば、インテーク面接のあとで話し合いで担当カウンセラーを決めるような相談機関でない場合、事前にまとめて聴いてしまう必然性はないどころかむしろ弊害の方が大きいと思う。
クライエントさんが、いつ、どのように成育歴や家族歴 を語りたい心境になるかどうか自体が、クライエントさんにいきなり「開示」を迫らず、安全なカウンセリングの場だと信頼してもらえることにつながるのではないか。
クライエントさんが、カウンセラーに「秘密」をかかえていられることは、極めて重要なことだと思う。
最初の面接3回ぐらいかけて自然な流れの中で聴取できる、くらいでいいのであり、これをしなやかに柔軟にできないカウンセラーは力量不足だと私は考える。
初回でみんな訊(き)こうとすることがどれだけクライエントさんの負担になる場合があるか。
だだし、申し込み用紙の時点で、虐待の可能性や自殺企図をうかがわせるような場合とかは家族の状況や成育歴を(コンパクトに)聴取して、危機介入やとりあえずの環境調整(病院だけではなく警察への要請すら本人の許可を得てあり得る)やケースワーク的動きをすみやかに判断せねばならない場合もあろう。