日本人間性心理学会第43回大会(in新山口)で個人口頭発表いたします。
私の個人口頭発表は、
044・ある統合失調症の女性との月定額制電話相談の過程:ジェンドリンのアプローチを参考に
です。
事例の具体的な内容については守秘義務ですのでご紹介いたしませんが、趣旨のみご紹介いたします。
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今回の発表には、2つの目的がある。
ひとつは、電話相談において、敢えて月定額制(サブスクリプション)を導入することの可能性とその意義である。
もうひとつは、Gendlin,1963における、統合失調症者への、治療者の純粋性からの表明を重視するアプローチを、事例に、発表者なりに意識しながら電話相談に臨んだことの意義についての考察である。
月定額制を導入した場合、クライエントは、いつでも電話をかけることができる。通話時間の長さも特に取り決めはしていない。
ただし、
1.できるだけ良識的な時間帯にかけることを予め(一応)要請
2.電話がかかった時、対応困難な場合は、「間髪を入れずに」今は無理だと言い渡す(何時何分になったら可能かは告げ、その約束は厳守する)ということについて、事前に言い渡している。
これはこれで、ひとつの「構造化」であると考える。
この原則を「完全に」守って応対する限り、クライエントは、良識的な時間に、良識的な長さで電話相談する方向に自然と収束していくというのが、発表者の考えである。
ただし、こうした電話相談の「中で」、どういう治療的関係性を持った相互作用を形成するかということが両輪であるというのが発表者の認識である。
ジェンドリンのアプローチは、言語下(subverbal)次元での相互作用を重視する。
面接場面でクライエントと共に座っていて、自分の中に生じて来るフェルトセンスに対してセルフ・フォーカシングし、そこから生じてきた言葉をクライエントに差し出すというものであった。
その言語化をするまでに、ジェンドリンは数時間に及ぶ沈黙のまま患者と共に過ごすことも厭わなかった。
これによって、統合失調症者の場合も、了解可能な対話へと変化していく。