【エピーについてのお願い】
約2週間前、雨あがりの蒸し暑い夕暮れどき。スリングに入ったエピーを抱え、ぼろぼろ泣いて動物病院からの帰り道を歩いた日のことを、ぼくはたぶん一生忘れられないと思います。
エピーを迎えて約1年4ヶ月、1歳半になりました。600gほどしかなかったちいさな体は、これまで一度も大きな病気も怪我もすることなく、順調にすくすく成長してくれました。親孝行だなあと思います。親バカな感想だけど。
そんなエピーが、愛しい愛しい、だれより可愛い我が子が、FIP──猫伝染性腹膜炎と診断されました。
FIPは猫コロナウイルスが突然変異して発症する、数年前まで致死率99.9%と言われていた病気です。人間のコロナ・パンデミックの影響で近年急速に研究が進み治療法が見つかった現在においても、命に関わる重篤な疾患であることに変わりはありません。
ちょっと変だなあと感じ始めたのは、おそらく先月頭くらいのことです。食べる量自体が極端に少なくなり、体重も200gほど減りました。知人の猫飼いさんやエピーの出身の猫舎さん、保護猫活動をしているかた、かかりつけの病院の主治医に話を聞くと「子猫期を卒業するとよくあること」だそうで、ドライフードを変えたりふりかけをかけたりして食欲を刺激するよう勧められました。
猫が成長し切るとムラ食いになるのは、ありがちだそうです。先月半ばの健康診断の際にも相談したのですが、主治医の先生いわく「お腹ぽっこり子ども体型からシュッとした大人体型に移行する時期なので200g程度の体重減少であればそこまで神経質になる必要はない」とのこと。そのためしばらく様子を見ていたのですが、健康診断から約1週間後、病院から着信がありました。
「健康診断での血液検査の結果は郵送する、万が一なにかあった場合には電話する」と伝えられていたので、嫌な汗が背骨を伝う感覚がしました。総蛋白の数値が高く出ており脱水か炎症を起こしている可能性があるので念のため再検査をしたいと言われ、現在のエピーの様子を訊かれました。嘔吐も下痢もしておらず元気もあると答えたところ、「急を要するものではなさそうですね」と言っていただき、ひとまず安堵して翌日に予約を取りました。それが冒頭の日です。
関東地方に竜巻注意報が出た、雷雨のひどい午後でした。緊急のものではないと先生に言われていたこともあり、エピーを連れて強風と豪雨の中を歩くのは危険だと思ったため一度はキャンセルの連絡を入れたのですが、雨が止んだこともあり迷った末やっぱり連れて行くことに決めました。本人は目をらんらんとさせながら雷を観察していたけれど、なぜだか胸騒ぎがしたのです。
病院に着いて確認のために再度血液検査をすると、前回よりも総蛋白の数値がさらに上がっており、貧血を示す数値も高く出ていました。そしてレントゲンとエコーを撮った結果、エピーのお腹に2センチほどの腫瘍が複数あることが判明。体を抑えられる施術の際に大暴れしてしまうほど元気な様子を見ていた先生も、検査をするまで予想できなかったのでしょう。説明する声のトーンは暗く、動揺しているのが伝わってきました。先生の見立てではおそらくリンパ腫かFIPだろうとのことで、腫瘍が胃を圧迫していたために食欲が落ちていたそうです。
採血した血液を検体に回し外部に検査を委託すること、別日に細胞診をすることを伝えられ、その日は対症療法として胃腸の動きを良くするお薬を出してもらって帰宅しました。
それから2週間後の一昨日、8月4日、主治医から連絡があり、FIPのドライタイプであることが確定したと告げられました。すべての検査結果が出揃うのにかなり時間がかかると言われていたのですが、先生が頑張ってくれたようです。すぐにでも治療を開始したいので今から病院にエピーを連れて来てほしいと言われ、仕事終わりのパートナーと共に再び病院へ。
主治医と相談し、GSというお薬での治療を開始することに。GSには飲み薬と注射薬の2種類があるそうです。食欲減退気味であるとはいえエピーは現状どうにか食べることができているため飲み薬を選びたかったのですが(度重なる検査ですっかり病院嫌いになってしまったので少しでもストレスを軽減してあげたかった)、飲み薬は現在かかりつけに在庫がなく、届くまではまいにち通院して注射で投与することに決まりました。
検査結果が出るまでのあいだ、我が子を失うかもしれない可能性に怯え、涙が止まらず、毎日まいにち検索をかけてあらゆるSNSで情報収集をし、寝不足の日々を送っていました。いや、病名が確定した今も泣いているし、怯えているし、慢性的に寝不足の日々を送っています。
エピーには食欲減退と体重減少以外、ほとんどそれらしき症状が出ていません。腫瘍が見つかってから数日経ってややぐったりした様子がやっと見られるようになってはきたものの、おおむねいつも通り元気だし、よく喋って走り回って、自分からおやつをねだってきます。また、検体から検出された猫コロナ抗体はごく僅かだったそう。これらの点を鑑みるにおそらくは初期段階だろうと先生はおっしゃっていたのですが、しかし早期発見ができ、猫コロナ抗体が微量であったとしても、「症状が軽い」とは限らないらしいです。
そしてFIPの治療薬は現在数種類出ているのですが、そのほとんどが日本未承認のため保険適用外です。また、円安の影響で薬の価格も高騰しています。ゆえに治療費は高額で、薬代だけでも(84日間連続投与のちに経過観察をして異常が見つからなければ寛解、という流れ)ざっと30万ほどかかります。加えて経過観察のための定期的な通院、検査があるため、治療費は合計で50万近くになる見込みです。考えたくないですが、もしも容体が良くならず投薬期間延長になったり、悪化して入院になったり、再発したりすれば、金額はもっと上がってきます。実際、ここまでの検査ですでに10万円以上が飛んで行きました。
幸いなことにパートナーが会社員で収入が安定しており、また倹約家なおかげで、治療費はどうにか捻出できそうです。ただ、ぼくたちはそれこそ猫と──エピーと暮らすために、動物と生活できる物件をフルローンで買ったばかりです。さらに昨年ぼくの聴覚障害が発覚し、急遽、補聴器(80万円)を購入。加えてエピーの介護をメインで担うのはフリーランスで時間の融通が効くぼくなのですが、仕事を減らさざるを得なくなりました。
ぼくはライターで、表に出るメインの仕事はエッセイやコラムの執筆です。しかし主な収入源は、広告系のライティング(記事LPやコピーなど)になります。広告系の仕事は先々のことを考えるとなにがなんでも優先的に取り組みたいところですが、ぼくは発達障害(ADHD)を持っています。特性上、得意でないことを後回しにする傾向があり、マルチタスクも不可能なため、“スキルがあるから”という理由のみで続けてきた広告の仕事とエピーの介護を両立することは大変に困難です。したがってエピーの状態が落ち着くまでのあいだはエッセイやコラムのみに専念すると決めたのですが、月収は10万円近く下がることになります。
パートナーの収入とぼくの収入を併せた概算で、今の家を購入しました。そのうえで世帯収入が10万円減るということはつまり、月々のローンの返済も今より大変になります。生活はおそらくそれなりに厳しくなるでしょう。
いま自分にできることはなんだろう。我が子のために、いったいなにができるんだろう。支出のプレッシャーをパートナーのみに背負わせないためには、どうすればいいんだろう。
悩んで悩んで悩んだ結果、「エピーの闘病記録をnoteに公開し、“原稿料”としてサポートを募ってみよう」という試みを思いつきました。
「原稿料」というかたちでいただくのであれば、「仕事」になり得ます。一方的な支援ではなく、情報を必要としているご家族のかたがたにも貢献できると思います。特にエピーは幸いなことに早期に発見できたため、そのあたりの詳細を明かすことで他の子たちの命を助けるヒントにもなり得ると自負しています。有料マガジンにすることも考えましたが、少しでも多くの情報を血眼で探しているかたがたの目に留まらなくなってしまうのはやはり避けたい。そのため、「エピーの病状報告に価値があると思ってくれた金銭的に余裕のあるかたに、この記事やこれから執筆し公開していく記事に対し“原稿料”をお支払いいただく」という形式を取りたいと思います。
更新頻度はおそらく高くないと思います。エピーは現状、食事介助が必要で、1日数時間置きに複数回に分けてごはんをあげています。定期的な通院もあります。そして引き続きエッセイやコラムのお仕事は受注します。その合間を縫っての執筆となるので、毎月何本等のお約束はできません。
それでもよければ、どうかぼくに「エピーの闘病記録執筆」という「仕事」をさせていただけないでしょうか。お支払いいただく“原稿料”は、読んでくださったかた自身が見合うと思われた価格で大丈夫です。また「応援したいが“原稿料”を払うことはできない」というかたは、けっしてご無理をなさらなずご自身の生活を優先してください。祈ってくださるだけで、じゅうぶん励みになります。
サポートは記事のいちばん最後からできます。また、アプリからはできないようなのでブラウザでこちらの記事を開いてみてください。
ぼくのちいさな愛しい我が子と、この子を共に支えるパートナーを、大切な家族を助けるための力をぼくに貸してください。
よろしくお願い申し上げます。