はじめてのリサイタルはコーヒーのでがらしと初恋の味
マリンバ弾きの木上智保子です。
2021年10月30日、延期を重ねた人生初のソロリサイタルが開催出来ました。
会場にいらっしゃってくださったお客様、素敵なステージを作り上げてくださり映像に残してくださったスタッフ様、クラウドファンディングで支援くださった皆様、受付と終演の挨拶をしてくれた夫氏、本当に本当にありがとうございました。
マリンバソロを初めて人前で弾いたのが約12年前の広島音楽高校の定期演奏会。全部木上智保子の演奏会を30歳にて開催出来ました。本当に感慨深いです。
今回『企画・運営・演奏』全部1人でやりました。
会場の予約・打ち合わせ、撮影とチラシとプログラムの外注、資金集めの為のクラファン、助成金の為の書類作成・提出・打ち合わせ、委嘱作品を依頼した作曲家と打ち合わせ、チケット販売の準備、プレスリリース発信、練習etc…
これまで積み上げてきたスキルを120%発揮し、上手くいかなかった部分も、上手くいった部分もありました。人から見たらそう思えない部分もあるかもしれませんが、木上智保子30年史の中では、がんばったんです。(特に最後の3週間)
ですが、がんばるのが遅かった事や計画的に出来なかった後悔もあります。公演直後は「もうダメだ。終わった。辞めよう。ローンも終わるし、楽器も売ろう。私には無理だったんだ。」と、冷静なのか、頭が真っ白だったのか、燃え尽きて無になった姿を目撃されています。
公演の動画が手元に届いても、再生した途端に悔しさと内臓から湧き上がる物理的な気持ち悪さでその後の動きが遅れてしまいました。無事、なんとか年内には全ての作業が終えられそうです。本当にありがとうございました。
(トップの画像はご来場者様が素敵に撮影してくださったお写真を使用させて頂きました。プログラムに記載した「#木上リサイタル」ご使用ありがとうございます!!)
私にとってはじめてのリサイタルは、言葉で表すならば「コーヒーのでがらしと初恋の味」となりました。深煎りの豆をハンドドリップで抽出したあとのでがらしをもったいないと飲んだ時の、本物だけど本物には遠いあの感じ。初恋に振られた後入ったお風呂でいくらシャワーに当たってもお湯も水も感じない、身体中が凍った様な時間が無限にそこで止まってしまった…でも恋なんてこれが最後じゃないんじゃけえ次の事考えよう?みたいなポジティブとネガティブに両手を強力に全力で引っ張られているような…複雑な感じのお味でした。
これは全部が失敗だとか、ダメだった、とかではなく、いや失敗も多かったのですが、あの日の為に用意したイベントが、健康には問題なく最初から最後まで完遂出来たからこそ出来ている、うだうだぐじぐじの結果報告です。
良い事もたくさんありました。最初の1音目を出した瞬間、本当に気持ちよくて最高で幸せな気持ちが全身を駆け巡りました。クラファンでは目標金額に到達は出来ませんでしたが支援が頂けました。プレスリリースのおかげで情報サイトに掲載も頂きました。
北海道新聞に掲載も頂きました。(2021年11月16日(火)さっぽろ10区にて)
札幌の新進気鋭の作曲家三関くんの新曲初演、長年の友人ともみちゃんの新曲初演、この世に新しいマリンバ作品を生み出すという目標も達成出来ました。
当日は天候に最高に恵まれた為、演奏中はもちろんその他の時間帯でも公園と公演を楽しんで頂けたのは本当に本当に良かったです。
反省の根源は1つだけ。最高の環境を手配出来たのに演奏を最高のクオリティに仕上げられなかった事です。
「全部1人でやらないといけない」の呪いにかかった私は、出来ない自分を許せなくて、目を逸らしたくて、でもやらないとと1人で浅瀬でばたばたと溺れてました。
楽器の前に立ってマレットを持って手を動かしても気がそぞろ。基礎練習をして、楽譜を開いて、手を動かして、全く頭にも身体にも何も入ってこない。やる気を出す為と戒めに、SNSに「準備してる感溢れる何か」を投稿しても今回は効かない。愕然としました。でも本当に出来ませんでした。
残り3週間という所で弾けたのは数曲。半分以上がどうにもなっていない状況で、3週間は毎日2、3時間の睡眠でとにかく弾きまくりました。なんとか1週間経った頃から何かがやっと見え始め、同時にこれを1か月前にやらないといけなかったと絶望します。もう1週間経つと、この状態を10月頭には用意出来ていればと絶望します。最後の1週間は睡眠時間と同じくらい泣きながら楽器の前に立ち続け、弾きまくりました。そして、どうしても弾けないと判断した曲は当日変更をして臨みました。
「ソロリサイタルは全部自分で準備したい」
これは間違った目標ではなかったと思います。やり方を大幅に間違えました。自分1人で出来なくて何かおかしくなった時点で、レッスンに、病院に、さくさくと行けば良かったのに…今ならさっさと予約!と電話やメールが出来るのに、その時は出来ませんでした。
マチネは準備したままに、演奏とトークを私自身楽しくお送り出来ました。ソワレで事件が起こります。
どうしても間に合わなくて曲目変更して演奏したヴェロシティーズの暗譜が曲の途中で飛んでしまい何も出来なくなりました。自信のあった、マチネより丁寧に弾けていた演奏だっただけに、楽器の前で呆然と立ちすくんでしまいました。もう一度止まった場所から弾こうとしても、全く思い出せません。恥ずかしながら、最初から演奏させて頂くとアナウンスし、最初から弾かせて頂きましたが、1ページ弾き終わったか終わってないか…どうしても先に進めませんでした。
はじめてのリサイタルの終曲で暗譜が飛んだらどうしたらいい?とGoogle検索かSiriに聞きたくなりましたが、叶いません。どれくらい時間がかかったかは不明ですが、真っ白な頭でも何かを言わなければと、何かを言って一度楽屋に下がって、アンコールの為に用意していた楽譜を手に掴んで会場に戻り、何かを言って演奏しました。終演のご挨拶も言った様な言ってない様な…、機転をきかしたスタッフ様の対応で夫氏に終演の挨拶をしてもらいはじめてのリサイタルは終了しました。
楽屋に戻っても涙も出ない、無。
準備不足。側は最高に作り上げたのに、肝心の中身が未完成でした。本気で12月末で終わるローンを払ったら売って、マリンバも音楽も辞めてしまおうと、真っ白な頭にはそれでいっぱいでした。
外でお客さんが待ってくれてるよ、と夫氏の一言で外に出たら、皆さま温かい言葉をたくさんかけて頂き、ふっと生気が戻って来たのか、ボロボロ涙が止まりませんでした。心も、マスカラが染み込んだ涙も苦かったです。しかし、私の演奏のファンでこれからも頑張って下さい!応援します!とお声かけを頂き嬉し涙に変わりました。更には演奏会を新聞の記事にも載せて頂きました。全部ダメじゃなかったんだ…!と自分を取り戻すきっかけになりました。
1人で準備は進めましたが、スタッフ様や夫氏の多大なる配慮とお力のおかげでリサイタルを始まらせて終わらせられました。
ダイジェスト動画もYouTubeに載せた今、恐ろしい事に次の演奏会はどうしようかと妄想が始まっております。次は、今回の反省を活かして「1人でやる事はやるけれど、様々なプロフェッショナルに正しく協力を得て、健やかに音楽を届ける」を目標に来年も秋頃また演奏会を開けたら良いなと画策しております。
今回の経験で、生きてるか生きてないかわからない事が多々あり、コンプレックスの塊で、卑屈で嫌な奴と、鬱に悦っていた自分の足を地面に押し付けることが出来ました。いつも言ってる気がしますが、少しずつ地球人に成長した感じがしています。ミリ単位の成長ではなく、次は5センチ10センチと大きくなります。あとは自分が死ぬ時に後悔しないよう、生きている間にたくさんやれる事をやる。
今、マリンバ弾くの、ちゃんと楽しいです。それって、本当に嬉しくて幸せなことですよね。2022年も、健やかにちょっとずつ音楽していきたいと思ってますので、たまーに木上の活動を思い出して頂ければ幸いです。
はじめてのリサイタル終わり!!!!!
CHIHOKO