証券分析(2)

本書は一章を割いて投資と投機の違いについて論じている。下のテーブルは章の冒頭で一般的な違いをまとめたものである。現代の基準で考えると、この分類はかなり古風なように思う。例えば、キャピタルゲインを目的とした株式投資は今では立派な投資と思うが、ここでは投機と分類される。

 投資               投機
1.債権             株式
2.現物買い           信用買い
3.長期保有           回転売買
4.インカムゲインが目的     キャピタルゲインが目的
5.安全な証券          リスクの大きいな株式

章の後半では、投資と投機についてさらに以下のように定義している。
投資とは詳細な分析に基づいて、元本の安全性と満足すべきリターンを確保する行為である。この原則を満たさない行為を投機と呼ぶ。

続いて、安全性についても言及している。
投資における「安全性」は絶対的または完全なものではない。それはむしろ、平時またはかなり一般的な状況の下で損失から身を守るといった程度の意味である。

この二つの言葉を合わせて考えてみたいと思う。2つ目の言葉は安全性に関するものである。これは1つ目の言葉の補足になると思うが、安全の確保といっても、投資にしろ投機にしろ絶対的な安全は存在しないということを理解しないといけない。逆に言えば、絶対的な安全を保証する投資話があれば、まずは疑ってかかるべきである。平時ではとても当たり前のように思えるが、いざ当事者になると果たして冷静に判断できるか、自分も常に自分に問いかけている。

少し話がそれるが、最近はシェアハウスに係わる投資で、多くサラリーマンが分不相応な借金に苦しんでいることが話題になった。この人たちの無謀さを指摘する厳しい声も多いが、個人的には同情的である。ある(大手と思われる)会社から「30年は家賃保証する」といわれ、実際に契約書を交わす段階でその会社が倒産するリスクを考慮できる人は極めて少ないのだろう。サラリーマンだからこそ会社は永続するものだと考えてしまうのではないだろうか。

「絶対的な安全は存在しない」ということを何度強調してもしすぎることはないように思う。私もいちサラリーマンとしてこれを肝に銘じたい。

次に、一つ目の言葉に戻って、「満足すべきリターン」とはどのようなものだろうか?比較的安全といわれる債権の利回りと比べて満足すべきリターンなのだろうか?それとも投資家本人が期待するリターンなのだろう?私の読む限り本書では明示されていない。個人的には後者、投資家おのおのが期待するリターンだと理解している。

絶対的な安全が存在しない以上、投資のリターンはどのようなリスクをどこまで取れるかにかかっている。自分の取れるリスクを取れる範囲でコントロールしながら自分の期待するリターンを求めていけばいいと思う。

例えば、米国と日本に拠点を持ち両方の通貨に対して実需があれば、そうでない人と比べてドル・円の為替リスクに対する許容度は大きい。また一般的には若い人は年配の人よりも投資できる期間が長い分、リスク許容度が大きいといわれる。自分の属性を理解することは、投資のリターンを考えるうえで大事な要素となる。

最後に個人的な考え方ではあるが、投資と投機は優劣の問題ではなく、それぞれ異なるリスクとリターンがあるので、自分はどっちのゲームをやっているのかを認識すべきだとは思う。そういう意味でもこの章はいろいろ考えさせられる一章となった。

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