DeFiにデルニューで参入してみた
Chisikiです、以前デルタニュートラルヘッジポジションを構築してFundingRateを受け取る運用方法の紹介をしました。
高APY(年間利回り)で注目されがちなDeFiですが、この記事では上の記事のように限りなくリスクを抑えて利回りを最大化してみようと思います。
DeFiとは
DeFiについての説明ですが日本語の解説記事が多々存在する為、今回の記事に則した説明をしたいと思います。
DeFi(分散型金融)内のDEX(分散型取引所)がこの記事のメインになりますが、巷で話題のUniswap・Sushiswap・PancakeswapなどはAMMという機能を採用しており取引板がなく流動性提供された流動性プールから通貨の交換を行うことが可能です。
そして通貨の交換を行う際に発生する取引手数料の一部が流動性提供者に配られるので、これがDEXで収益を得るメインの方法になります。
※後述で利用する取引所はPancakeswapですが、BSCを主体とした取引所になるので完全な分散型金融ではなく中央集権的分散型金融となり、ややこしいですがUniswapなどと比べるとリスクが異なるので注意が必要です。
デルタニュートラルヘッジとは
詳細は先ほど貼った記事へのリンクで見れますが、先物取引にて現物と同数量のショート(売り)を行うことにより損益を固定する方法です。
100dogeを担保にレバレッジ1倍で100dogeショートを行うのが通常のデルタニュートラルヘッジです。
しかし100doge所持している内50dogeを担保にレバレッジ2倍で100dogeショートすると50doge分を自由に動かせることができ、リスクは増えますがレバレッジを活用する方法もあります。
この記事の目的
最初の説明で限りなくリスクを抑えて利回りを最大化すると言いましたが具体的には、値上がり・値下がりによる影響を抑え金利手数料・流動性提供手数料などを収益の主体にする運用方法です。
この運用方法だと暴落には強いですがレバレッジを活用してデルニューを組んでいる場合、暴騰した際に清算価格に気を付けないとポジション管理が忙しい&値上がり利益が得られないので好き嫌いが分かれると思います。
低リスク運用のAPY比較
※あくまでも目安なので状況によって変わります(21年5月4日時点)
・ステーブルコインステーキング
APY:5.79%
・デルタニュートラルヘッジ
APY:11%
・ステーブルコインペアの流動性提供
APY:15%
・デルタニュートラルヘッジ+流動性提供
APY:56%
・デルタニュートラルヘッジ+流動性提供+アグリゲーター
APY:64%
※下二つを下記で紹介するやり方で運用する場合、資金を分配して行うため実際のAPYは異なります
上から下に行くほどリスクとポジション管理の手間が増えます。
この記事では1番下のデルタニュートラルヘッジ+流動性提供+アグリゲーターの実践と解説をしていきたいと思います。
準備編
まず一通り並べて、その後軽く解説していきます。
・Binance Coin-M future
・Metamask wallet
・Pancakeswap
・Beefy Finance
・Yield watch
~Binance Coin-M future~
USDTなどのステーブルコイン担保ではなく現物を担保に取引できる取引所であればどの取引所でも大丈夫です。
~Metamask wallet~
Pancakeswapに接続できるウォレットであれば大丈夫ですが、Metamaskは解説記事も多いのでこだわりがない限りMetamaskでいいと思います。
~Pancakeswap~
BSC上にありガス代が安いので利用しています、完全な分散型取引所ではないので注意が必要です。
~Beefy Finance~(アグリゲーター)
報酬として貰えるCakeトークンを自動で原資に戻し複利運用してくれます。
~Yield watch~
損益確認に使います、インパーマネントロスの詳細も分かるので今回の運用の中でかなり重要度が高いです。
通常版とPro版がありますが、Yieldwatchが発行してるWATCH$1で運用額$200までPro情報を見ることが出来ます。つまり$1000運用している場合、Pro情報を見るには合計$5のWATCHが必要です。
実践編
先程と同様にまず手順をまとめて、解説していきます。
1.Pancakeswapで流動性提供をするペアを選定
2.Binanceでデルタニュートラルヘッジを構築
3.選定したペアにLiquidity、LPトークンを受け取る
4.Beefy FinanceにLPトークンを預け複利運用を開始
5.Yield watchでインパーマネントロスをチェック
6.必要に応じてBinanceのポジションを管理する
~Pancakeswapでペアを決める~
Pancakeswapには最大APR(複利無し)335%のペアなどがありますが、今回はデルニューと組み合わせるのでBinance Coin-Mで取引できる通貨同士のペアでなければいけません。
下記リンクにCoin-Mの通貨リストと詳細情報があります
はぐれメロンさんがBinance FundingRateをまとめたWebサイトを公開しているのでペア選定するときにかなり役立つと思います!
Coin-Mで取引可能な通貨のうちPancakeswap内で比較的APRが高いのがXRP/BNBだったので今回はこの通貨ペアでいきます(APR44.42%)
~Binanceでニュートラルポジションを構築~
運用するペアを決めたので、まずはXRPとBNBを用意する必要がありますが合計運用額の50%~80%がおすすめです。
残りはステーブルコインで保有しておいて、インパーマネントロスによるポジション管理用に使います。(ガス代も余裕をもって確保しておきましょう。)
1.XRPとBNBを同価値分用意
2.XRPの半分を担保にレバレッジ2倍でXRP合計分ショート
3.BNBの半分を担保にレバレッジ2倍でBNB合計分ショート
ややこしいですが、担保+流動性提供=ショートポジションで釣り合うようにするだけです。
・100XRP用意している場合、50XRPを担保にレバ2倍100XRPショートし残りの50XRPを流動性提供用として使う
・0.24BNB用意している場合、0.12BNBを担保にレバ2倍0.24BNBショートし残りの0.12BNBを流動性提供用として使う
流動性提供用に残しておいたXRPとBNBはMetamask walletに移して次の段階に進みます。
~PancakeswapでLiquidity~
ここからは比較的簡単です、流動性提供用に残しておいたXRPとBNBをLiquidityしてXRP/BNBのLPトークンを受け取ります。
受け取ったLPトークンはBeefy Financeで運用するので、Pancakeswapには流動性提供の追加&削減(入出金)以外で訪れることは基本無くなります。たまに様々なペアの利率を確認しておくといい感じです
~Beefy Financeで流動性提供開始~
Beefy FinanceでXRP-BNB(Uses Pancake)にLPトークンを預け流動性提供を始めます。複利運用なのでPancakeswapより利率は高くなっています。
~Yield watchとインパーマネントロス~
DeFiで流動性提供&デルニューを行う上で1番の問題がインパーマネントロスです。具体的にはインパーマネントロスにより預け入れた通貨が増減するのでニュートラルポジションが崩れてしまいます。
なのでニュートラルポジションを保つためにBinanceの方で証拠金(margin)を追加&削減したりショートポジションを積み増しする必要があり、少額運用であれば1日1回ほどの頻度で管理すれば大丈夫ですが、高額運用であればあるほどbotがないと厳しいと思います。
ちなみに執筆時点での流動性提供利益はこのようになっています
次の項ではYield watchでインパーマネントロスを確認してどのようにポジションを管理するか解説していきます。
インパーマネントロスに対応するポジション管理
まずYield watchでインパーマネントロスが発生しているか確認します
XRPを預け入れた際は106.54XRPなのに対し現在の数量が106.80XRPなので少しだけ増えています。
開始して1週間程度の履歴ですが一時期111XRPまで増えていたこともあり、既にポジション管理を何回か繰り返してBinanceの証拠金とだいぶ差があるのでこれから実際にポジション管理をしていきたいと思います。
まずはBinanceのポジション詳細から
※実現損益がマイナスですがデルニューなので損失は発生していません
流動性提供しているXRPが106.80XRPに比べBinanceの証拠金は112.3959XRP、ショートポジションのサイズは223.5902XRPです。これらの数値を突貫で作った計算表に入力してみると2通りのポジション管理方法が分かります。
・パターンA 証拠金を-4.3943XRP削減・ショートを-8.7866XRP削減
・パターンB 証拠金に4.3943XRP追加
この場合だとパターンBの方が楽なので、ポジション管理用に残しておいたステーブルコインの一部を4.3943XRPに換え証拠金に追加することでポジション管理が終わります。
パターンAかパターンBのどちらでポジション管理を行うかは実現損益であったり状況により変わるのでその都度最適な方を選ぶ感じです。
※計算表を新しくちゃんと作り直しました
~計算表の使い方~
・ポジションサイズ
・参入価格
・マーク価格
・証拠金
・実現損益
・Farm deposit
上記をBinanceポジション&Yield watchを見ながら入力していきます、そうするとショートサイズと合計現物残高が算出されます。完全なデルタニュートラルヘッジであれば乖離率が0%になり均衡が取れていることが確認できます。
ニュートラルポジションが崩れていれば、証拠金追加・ショート追加の欄に最適な額を表示してくれます。(パターンから選ぶ必要無し)
Margin&Farm movableは証拠金とファーム残高を同数量にする場合に動かすべき数量を表示します。Marginの場合、証拠金→ファーム。Farmの場合はファーム→証拠金になります。
Binanceのポジション状況によって証拠金が動かせないことがありますし、ポジションが清算されそうな状況でない限りファームを解除するメリットはないのでどのくらい差があるのかの目安程度で確認するのがおすすめです。
※乖離率0%を目指しシビアにリバランスするのではなく2%以下など基準を決めて調節するとリバランスコストが抑えられます。Binanceポジションが含み益の時に証拠金追加は効率的ですがショート追加は乖離率が大きくない限り含み損の時に行うのがおすすめです。
特徴及びリスク
メリット
・通貨の値動きに損益が基本左右されない
・ステーブルコインペアの流動性提供より高いAPYが得られる
・FundingRateがマイナスに下振れてもカバーができる
デメリット
・ポジション管理など手間がかかる
リスク
・完全な分散型取引所ではない
・既存の運用よりカウンターパーティーリスクが増える
・USD/JPY為替リスク
追記:usd-mとcoin-mの違い
・証拠金
usd-mはUSDT建て、coin-mは現物建てになりますがデルニューにおいてはかなり資金効率が変わってきます。
・ペア数
coin-mは18ペアusd-mは113ペア、かなりの差があります。特にファームと組合わせるならusd-mの方が選択肢が広がります。
・デルタニュートラルヘッジのやり方
coin-mのやり方はよく紹介されてますがusd-m(USDT建て)のやり方と比べてみます。
~レバレッジ1倍,100万円運用の場合~
coin-mなら100万円(現物)を証拠金に100万円分をショートすることでデルニューが組めます。coin-mのレバレッジ1倍であれば基本的にロスカットの心配はありません。
usd-mは100万円のUSDTを証拠金に100万円分をショートする所までは同じですが、同時に100万円分の現物を保有する必要があります。usd-mのレバレッジ1倍はロスカットの危険性がある為、100万分の現物をファームに組み込んで運用するにはポジション管理用の資金を多めに確保しておく必要があります。
・結論
usd-mの方が高FundingRateであることが多いですが、coin-mより必要資金が増えます。高額運用であればcoin-mより高利率が目指せますがbot必須レベルでシビアなリバランスが必要なのでcoin-mの方が資金効率的になんだかんだ良かったりします。(あくまでもファームと組合わせる場合です)
さいごに
まぁかなり面倒くさい方法ですが、リスクをある程度抑え高APYが確保できる運用方法の紹介でした。私自身、執筆時点でDeFiに参入してからちょうど1週間なので何か齟齬があるかもしれません。
その場合はTwitterのDMなどで教えて頂けると幸いです。保険をかけるような言い方になってしまいましたが、自分でもしっかり勉強し知見を深めていく所存です。