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松江泰治 マキエタCC(感想)_膨大な情報量を含む都市の写真

東京上空から撮影された写真のビジュアルがずっと気になっていた、東京都写真美術館にて2021年11月9日から開催されていた『松江泰治 マキエタCC』へ、遅ればせながらやっと行けたのでその感想などを。

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実物と模型の境界が曖昧に

写真展では<CC>と<マキエタ>、2シリーズの作品が並列に展示されていた。CCとは「シティー・コード(City Code)」の略で、各作品には撮影地の都市コードだけが付けられており、詳細な場所までは説明されない。
画面に地平線や空を含めず、被写体に影が生じない順光で撮影するというルールのもと、俯瞰で撮影された街並みの写真は、画面全体にピントが合っているため、遠近感をあまり感じられない平面的な写真に仕上がっている。

マキエタ「マキエタ(makieta)」は、ポーランド語で模型を意味する言葉とのこと。こちらのシリーズにもCCが付けられており、やはり同じルールで街並みなどのミニチュアが撮影されている。
展示室内は薄暗く、写真が壁から浮いて見えるようにライティングされているせいか、写真の平面的な印象が強調されているように思えた。

2つのシリーズは同じ室内に混ざりあって展示されており、撮影技法によって意図的に「実物は模型に寄せられ、模型は実物に寄せられている」ため、パッと見ただけでは被写体がどちらか分からない。
観賞者は実物または模型を判別するためつい見入ってしまうのだが、入り口すぐの解説にあった「曖昧な境界は写真の本質を浮き彫りに~」とはこのことで、2つのシリーズの境界はとても曖昧になっている。

雑然としているけども、整った風景

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告知用ポスターに使用されていた<TYO>について、図録の解説にもあった東京の台東区を上空から撮影されというのは恐らくこの作品。
全体的な色合いはとても無機質な灰色で、茶色の建物が点在するのも目に入るが、特に目立つのは中央にある広場に併設された建物の屋上にある緑色。
建物が校舎で広場は校庭だとすると、校舎の屋上にあるのはプールの水だと思われる。シーズンオフで塩素の入っていない水は苔のせいで変色しているのだが灰色の建物とのコントラストが鮮やかで、画面全体の調和を保っている。

海外の写真はさらに色鮮やかで、色数も豊かな印象だった。また、定点カメラで撮影された動画も4作品展示されていて、こちらも興味深い作品だった。

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<AOB>はどこかの市場の様子で、発色のよい緑やオレンジの野菜が大量に並べられており、狭い通路を日焼けしたアジア系の人々がゆっくり歩きながら店の人とやり取りしている様子が映し出されている。野菜にはほとんど動きはなく、人々だけに動きのある動画なのだか、鮮やかな野菜と彩度の低い人々の服装などがひとつの画面の中で調和が取れており、ずっと眺めていたくなる。

<HAV>では、くたびれたコンクリートの街並みに太陽が照りつけており、いくつかの建物の屋上には濃い青の給水タンクのような物体がバランスよく画面内に配置されている。しかも画面内をのんびりと走る車の色も同じトーンの青色をしていた。

膨大な情報量を持つ都市の写真

被写体には山や墓地などもあったが、私にとっては街並みの写真が特に印象深かった。
似たような形や色をした建物が、大量に画面内にバランスよく配置されている写真になぜこんなにも心惹かれるのか。

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同じ風景であっても眺める角度によって印象が大きく異なり、全く別の物に見えるという気付きがある。例えば<ATH>では灰色の建物が画面全体を占めるも、カラフルなひさしの色が点在する様子はモザイクタイルのような美しさも感じられる。
また、高所から撮影されているため大量の建物が写り込んでいるわけだが、情報量が膨大だから、細部を眺めて発見する楽しみもある。
ひとつの建物の中に何十~何百人もの人が生活や仕事をしていて、計画的なまたはツギハギなのか、いずれにせよ建物が増殖することで都市が形作られた様子を俯瞰して観られるというのは楽しい気持ちになれる。

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