2021年、夏の夜に聴きたいメロウなグルーヴの音楽(感想)
時間帯としては夕方から深夜にかけて。
まとわりつくような温い風を受ながらの散歩や、エアコンの効いた部屋でひとり外の音が少なくなりはじめた頃合いに。
チル・アウトよりはメロウなグルーヴのある曲を聴きたいときのR&B、ソウル、ソフトロックで、主にここ1年くらいにリリースされた音楽などの感想を。
Mad Love/Infinity Song
NYを拠点に活動する5人組Infinity Songによる2020年10月リリースの2ndアルバム。
既にソロデビューしているVictoryとその兄妹によるユニットということで確かにカバー写真の顔が皆そっくり。
ストリングスのイントロではじまり、ゆったりとしたリズム、美しいハーモニーで聴かせる「Everything Is Gonna Be Alright」が多幸感あふれる。
ゴスペル調のまったりとしたグルーヴを聴かせてくれるR&Bにまとめられていて優しい気持ちになれる1枚。
JAY-ZのレーベルRoc Nationからのリリースで、2021年に4曲追加されたDeluxe版がリリースされている。
Figuring It Out/Samii
2020年11月リリースの4曲入りのデビューEP。
4HeroのDEGO, KAIDI TATHAMらがプロデュースしており、自然に溶け込むように座り込んだ素朴なカバー写真からは想像の出来ないセンスのよさを感じさせる4曲が収録されている。
「Wake Me Up」の軽快なリズムを刻むハイハットのサウンドと、途切れがちに響く分厚いシンセのサウンドが気持ちいい。「Here To Luv Myself」はフロア向けだけど飾り気のないトラックで、聴けば聴くほどクセになる感じがたまらない。
このSamiiはDEGOのアルバム『TOO MUCH』収録曲「Good Morning」にもフィーチャーされていた人で、レーベルはウエスト・ロンドン2000BLACKから。
An Insight To All Minds/Kaidi Tatham
2021年4月リリース。Bugz In The Atticに参加していたこともあり、ウエストロンドンのブロークンビーツを聴かせてくれるKaidi Tathamによるソロアルバム。
深いブラックミュージックでありながら、ジャズやラテン調の混在した様々な音を聴かせてくれる。ほとんどの曲がインストナンバーなので作業のBGMにちょうどいい。
「Tek Care」では途中からビートの効いたリズムに変わり、歌うようなピアノのリフが高揚させてくれる。
Magnifier EP/Cassia
英国マックルズフィールド出身の3人組による、2021年7月リリース4曲入りのEP。
カリプソ風味のインディーポップバンドと紹介されているだけあって、ロックバンドにしては音の質感がユニーク。
ゆったりとしているけどグルーヴの効いたビートと、頼りなくて気怠いヴォーカルの組み合わせが、夏の気温が下がりきらない夜にエアコン切ってから聴くと丁度よい。
Jazz is Dead 7/João Donato, Adrian Younge & Ali Shaheed Muhammad
LAで盛り上がっているAdrian Younge、Ali Shaheed Muhammadとのコラボ企画<Jazz Is Dead>の第7弾は、2021年5月リリース。86歳になるブラジルのキーボーディストJoão Donatoがラテン、ジャズ、ファンクの混ざりあったグルーヴが濃密な夏の暑さを増長させてくれる1枚。
「Forever More」のラテンビートと渋く切ないヴォーカルの響きの組み合わせがお気に入り。
Irene/Izy
オーストラリア、メルボルン出身で、ローファイでグルーヴのあるソウルを奏でる3人組Izy(アイジー)によるデビュー・アルバムは2021年3月のリリース。
「Fantic」のノリのいいジャズ・ギターとヴォーカルのハーモニーが夏の夜を豊かにしてくれる。
全曲、楽曲としては地味だけどこのセンスは好き。
Septet/John Carroll Kirby
LAのプロデューサーとして既に活動実績があり、Solange「When I Get Home」やFrank Ocean「DHL」でコラボしてきたJohn Carroll Kirbyによるセカンド・アルバム。
もったりとしたテンポで、浮遊感のあるシンセとパーカッシブなリズムに宇宙を感じさせる「Rainmaker」のサウンドはリピートしても飽きない。
2021年6月リリースで、レーベルはStones Throwから。
In These Dreams/Tulip88
2021年5月リリース。ザラついた音の質感がノスタルジーを思い起こさせる質感のHip Hop。
Tulip88はDJやプロデューサーとして活躍してきたソロ・プロジェクトで、英国Nottinghamで活躍してきたということ以外、他は何もわからなかった。
10曲トータルで22分しかないのだけけど、この抑圧されたサウンドのセンスは深い夏の夜にちょどいい。
I Know I'm Funny haha/Faye Webster
シンガー・ソングライターのFaye Websterによる2021年7月リリースの4thアルバム。
アトランタで活躍しているだけあって、わずかにカントリーぽっさもあるのだけども、コケティッシュなヴォーカルとねっとりとしたドラムサウンドの組み合わせに泥臭さはほとんど残っていない。
だけど、カバー写真のように爽やかなサウンドを想像すると肩透かしなくらいビートはもったりしているから、湿気の多い日本の夏によく合う。
Abstractions/Zo! & Tall Black Guy
デトロイト出身でシルバースプリングを拠点に活動しているプロデューサーZo!(Lorenzo Ferguson)が、 Tall Black Guy(やはりデトロイト出身)と組んで2021年4月リリースしたアルバム。曲ごとに様々なゲストを参加させている。
小洒落たソウルフルなR&Bで、ほどよくポジティブなサウンドは少しだけテンションをあげてくれる。