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Khruangbin(感想)2014-2018年_チルとグルーブ感のバランスの絶妙な音楽
テキサス州ヒューストン出身のKhruangbin(クルアンビン)。メンバーはベースのLaura Lee、ギターのMark Speer、そしてドラムのDonald "DJ" Johnson Jr.の3人組。
バンド名の由来はタイ語で飛行機とのこと。
60年代タイの音楽に影響を受けたとされている音楽のジャンルはソウル、ファンク、サーフロック、ダブ、サイケなど様々な要素がブレンドされていてかなりユニーク、そしてインストナンバーが多い。
楽曲はプリミティブで、音の隙が多いから耳が疲れなくてメロディはエキゾチック。独特なグルーヴ感とスピリチュアルな空気感が心地よくて飽きずに聴いてしまう。
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2人のメンバーが黒髪のカツラをつけたり、珍妙なPVだったりと、音楽以外の要素もどこか外してぶっ込んできたりと目が離せない。
以下、リリースされた作品についての感想などを。
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A Calf Born In Winter(2014)
Bonoboによるコンピ『Late NightTales』へ、収録されたことで注目を集めたのが「A Calf Born In Winter」。
牧歌的なタイトルどおり穏やかな時間の流れる曲で、爽やかな一日のはじまりを感じさせるシンプルな1曲。
こもった質感の気怠いギターと、スローテンポでメリハリをつけて刻むリズムの心地よい「The Recital That Never Happened」も好き。
白い背景に水彩絵具のような淡い色彩で塗られた抽象的なモチーフは
Samuel Muirによるデザイン。以後もしばらく似たようなトーンのデザインが続くことになるが、楽曲の印象とよく合っている。
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The Infamous Bill EP(2014)
捨て曲無し、4曲入りのEP。
ポジティブなメロディでありながら、気怠いビートにのった「Master Of Life」も好きだけど、疲れた身体をほぐしてくれるまったりとした「The No.4」も良い。
表題曲となる「The Infamous Bill」は、かなりお気に入りの1曲で初期の名曲。チルアウトできる曲が多数を占めるなか珍しくノリが良く、細かく鳴り響くギターサウンドなどの音の抜き差しによる展開に趣きがある。
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History Of Flight(2014)
4曲のカバーを収録したEP。(残念ながらSpotifyに無さそう)
1曲目「Il Clan Dei Siciliani」はEnnio Morricone『シシリアン』のサントラから。元曲の雰囲気をあまり壊さず悲しげで淡々としている。
2曲目「Ha Fang Kheng Kan」の元曲はTeun Jai Boon Praraksaという人のカバーらしいけど、詳細は不明で元曲の動画から察するに恐らくタイの音楽で、なぜか日本の昭和歌謡に雰囲気が近い。
3曲目「La Javanaise」はSerge Gainsbourgのカバーで、ギターの響きがほんのり楽しげで洗練されている。
4曲目「Firecracker」はYMOのカバーで、珍しく緊迫感があってノリの良い曲に仕上がっており楽しそうな雰囲気が伝わってくる。
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White Gloves(2015)
1stアルバムからのシングル・カット。まったりとして悲しげな様子はいつものKhruanbingだけど、音量は控えめで演奏へ溶け込むように控えめなヴォーカルが入っている。
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The Universe Smiles Upon You(2015)
1stアルバムはテキサスの田園地帯、人里離れた納屋で録音されたというだけあって、日常生活へ自然の息吹を吹き込むようなチルアウトができる1枚。
個性的なギターのフレーズはエキゾチックで、シンプルなベースとドラムはスピリチュアルさを増す。そして少しこもった音の響きがどこか懐かしい。
しかしそれらが合わさった音楽は洗練されていて、色褪せないから飽きることも無い。
ストレス過多な現代を生き抜かなくてはならない我らにとって、なんとも機能的で心地よい1枚。
「Two Fish And An Elephant」のどこか郷愁を誘うメロディーに涙腺がヤバくなるし、まったりとしたギターとユルいシンセのようなサウンドが南国っぽさを感じる「Little Joe & Mary」も好き。
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People Everywhere (Still Alive) Remixes(2016)
1stアルバムへ収録されていた、「People Everywhere (Still Alive)」のExtendedバージョンと、低音を強調させてダブっぽっさを増したリミックスの2曲を収録。
アルバムを持っていれば目新しさは感じないので、コレクターズ・アイテムだと思う。
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Con Todo el Mundo(2018)
前作よりも暗く内省的な2ndアルバムは名盤。
ギターフレーズが中東っぽい冒頭3曲が特にお気に入り。絶妙なグルーヴ感がありながらも、夜眠れない時間に流しておくと心地良いチルな機能もあり全体の流れを含めて完成度が高い。
リリースから何年も経過しているのに、聴く音楽に迷ったらコレを選んでおけば取り敢えず外さない汎用的な1枚。
他にこんなの聴いたことが無いから目新しい筈なのに、様々なジャンルの要素が混在したエキゾチックな音楽は無国籍でありながらどこか懐かしさもあるから不思議。
内省的でひとりでひっそりと味わうように聴いていたい1枚だが、タイトルはスペイン語らしく、Google翻訳にかけたら「みんなで」とのこと。
「Evan Finds The Third Room」のPVがまた気になる。緑色のカーディガンを着た小さいおばはんが中国らしき街の中を楽しげに踊る謎のPV。
もっさりした身のこなしはダンスというより、体操と言った方がしっくりきて、フラフープをエアーで持ち上げたはずなのに、それを回していることすら忘れそう。やがてしかめっ面すら微笑ましく見えてくる不思議。
途中ですれ違う市井の人たちによる、異様な存在のおばさんをスルーして通り過ぎる風景に既視感があると思ったら、格ゲーの名作Street Fighterの背景だった。
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Live At Lincoln Hall(2018)
2ndアルバムからの曲を中心にしたライブ盤で、元曲よりもテンポが早まっていたりするのはライブ盤ならでは。こちらもSpotifyへ無さそう。
「Lincoln Hall Potpourri」(7:45)はカバー曲のメドレーになっており、Dr. Dre、Ice Cube、A Tribe Called Quest、J Dillaなどのヒップホップクラシックをカバーしているとのこと。
少し長くなってきたで、2018年以降のリリースについては続きで。