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英雄伝説 空の軌跡FC(感想)_主要キャラの魅力が高いRPG

『英雄伝説 空の軌跡FC』は2004年に日本ファルコムからWindows OS向けの発売されたRPG。英雄伝説シリーズとしては、初期2作品とガガーブ3部作の後発となるため通算6作目となるけど、シリーズとしての物語や設定の繋がりは特に無い。
本作は後にWindows 8対応版、PSP、PS VITA、PS3、モバイルなどに移植されてヒットしたことで、PC向けのメーカーから脱却したという印象がある。
以下、ネタバレを含む感想などを。

どんな依頼でも引き受ける

本作はエレボニア帝国とカルバード共和国という大国に挟まれたリベール王国という架空の小国を舞台にしたRPGで、16歳の男女エステルとヨシュアという義理の兄妹が、王国内を旅しながら成長していく物語。

ゲーム内の建物や宗教などの世界観は中世ヨーロッパにイメージが近いけども、導力器(オーブメント)という技術によってエレベーターや飛行船が登場したり、通信手段に固定電話のようなものが使われているから技術的には近代にも似ている。

リベール王国には遊撃士(ブレイサー)という職業があって、この遊撃士には自警団と便利屋を合わせたような役割がある。行方不明になった猫の捜索から、護衛や魔獣の退治、そうして盗難被害の解決や、街の人々の困りごとだけでなく、街へ訪れた旅人の依頼までとにかく何でも引き受ける。
また、王国には軍隊も存在するため縄張り争い的に遊撃士教会との軋轢もあったりする。
エステルとヨシュアは正遊撃士を目指しており、リベール王国を旅て経験を積みながら、行方不明になった父カシウスの行方を探ることになる。

恋愛に疎い単純な女

本作の魅力は、なんといっても物語の中心になるエステルとヨシュアのキャラが立っているところにあると思う。
主人公のエステルは身の丈よりも長い棒術具を使い、どんな状況でも諦めないポジティブな性格。思い込んだら一直線の元気娘で正義感に厚くスニーカー好きで釣りが趣味。戦闘での移動範囲は狭いが棒を振り回して360度の攻撃も可能。

ヨシュアは11歳の時に怪我した状態で父カシウスから連れられてきて以来の義理の兄妹となる。それまで何をしていたのかはストーリーの都合上終盤まで意図的に隠されており、冷静沈着で頭も切れるからエステルのフォローをすることもしばしば。漆黒の髪と琥珀色の瞳を持つ涼しげなルックスは女性受けも良い。
得物は鋭利な双剣で射程は短いが移動範囲は広い。

ヨシュアは密かにエステルへ思いを寄せているが、まだ恋愛感情に疎いエステルはそれに気付かず、むしろ同年代の女子がいたらヨシュアをけしかけるほど。しかし二人で旅をするうちに恋敵たちと出会うことで、エステルもヨシュアを異性として意識しはじめるようになる。

メインの二人の印象を要約すると、乱暴で豪放磊落な女と常に冷静で見目麗しい男の組み合わせとなる。いわゆる王道RPGにありがちな「王子様がお姫様を助けにいく」であったり、「恋愛感情に鈍い男と密かに恋心を抱く女」といったそれまでのお約束事と真逆にプロットされているのが、当時はとても新鮮だった。

お笑いコンビに例えるなら、天然キャラのエステルがボケて、冷静なヨシュアがそれにツッコミという掛け合いがしばしばあり、遊撃士と対立することになるカプア一家のボクっ娘ジョゼットによるエステルへの罵倒が的を得ていたと思う。
パーティーへ追加出来るキャラが何人かおり、サブキャラとの会話もそれなりに楽しめるのも本作の魅力で、男女の性別を問わずに口説くエレボニアのお気楽演奏家オリビエとの掛け合いも楽しい。

余談だが、私はRPGの主人公キャラは喋らなくてもそれなりに楽しめると考えている。
ウィザードリィや初期のドラクエやFFなどもそうだが、喋らないならプレイヤーが脳内で補完すればいいだけの話しで、むしろ在り来りで陳腐なセリフのせいで魅力を失った作品もあって最近のRPGは、それを理由に投げ出してしまうこともしばしばある。
その点『空の軌跡 FC』は会話の掛け合いが良くて、先述したジョゼットや頭脳派のティータとの掛け合いも、考えるよりも先に行動するエステルのさっぱりとしている性格が伝わってくるから、主人公キャラが喋ることが作品としてプラスに働いている。

緩急があって、よく考えられた物語

エステルとヨシュアは何らかの依頼をこなすために、フィールド上の移動や戦闘を繰り返すことになるのだが、マノリア村の風車で海を前に見晴らしいの良いベンチで揃ってランチをとるところや、ヴァレリア湖畔の釣りのシーンなどの穏やかな時間が何気に良い。
これによってそれぞれのキャラの情緒的な面が強調され、物語の進行にも緩急が出る。

最終章では王都グランセルが舞台になるが、各地方を旅する過程で解決してきたトラブルの元凶がリシャール大佐の軍情報部だったことが判明するも、問題解決に絶対的な存在となるはずのカシウスの不在を、エステルとヨシュアが埋めるというお膳立ては、まさしく役者は揃ったという感じで盛り上がる。

また、主要キャラも王都へ集って来るからパーティーを組む選択肢が増えるのも嬉しい。手柄をジンに持ってかれるのは納得行かないが、武術大会では軍や正遊撃士たちと戦えるところも、これまで育ててきたエステルとヨシュアの腕試しといった感じで楽しめた。

また、掲示板に掲載されていないサブクエストをこなしたり、リシャール通信収集やレシピ手帳、魔獣手帳を埋めるなどのやりこみ要素もあるから久しぶりに2週目をプレイする時の楽しみもある。

単純なターン制にしない戦闘システム

一戦ごとの戦闘は、戦闘を自動化出来ないため格下であってもいちいち命令する必要があるから、慣れてくるから少し面倒に感じるものの、体力回復や攻撃力UPなどのバフ要素が可視化されているおかげで、攻撃順序の割り込みができるブレイクによって、通常攻撃ボタン連打などの退屈になりがちなターン制の戦闘に戦略要素が追加されている。

ファンタジー系RPGのお約束となる魔法については、本作ではアーツと呼ばれており、地/水/火/風/時/幻の6つの属性のクオーツの組み合わせによって使える魔法が異なってくる。
より強力なアーツを探るために様々な属性の組み合わせを試行する作業は、過去作からのファンからするとかつてのソーサリアンを彷彿とさせる。

音楽が素晴らしいのは安定の日本ファルコムで、グラフィックも今となっては粗い3D表示だが、いい感じにデフォルメされているから気にならないし、むしろ2004年発売当時のPCであってもカメラ角度の変更などをスムーズに描画されていたのも驚きだった。


日本ファルコムのゲームは初代Ys(イース)からプレイしており、この『空の軌跡FC』を約20年ぶりにプレイしてみたけど、過去作と比較しても完成度が高いから最期まで楽しめた。
続編のSCについては、以前のプレイが何年も前のためストーリーをほとんど覚えていないのだが、前回クリアした際にFCほどに楽しめなかった記憶だけ残っている。

FCが区切りの悪いエンディングのため、今回もSCを少しだけ進行させたのだが、物語の進行の遅さもあって途中で投げ出してしまった。
敵となる登場キャラが出揃ってしまうと、それぞれの個性によって与えられた役割がいわゆるファンタジー系RPGのセオリーから外れていないため、およその展開に想像もついてしまう。
FCのラスト、記憶を取り戻したヨシュアが自身の感情を押し殺してエステルと別れるシーンは、両者の切なさが伝わってくる名シーンだっただけにとても残念に思うが、FCで息切れしたように思えてならない。

それでもFC単体の魅力が褪せるわけではないため、いつかまた再プレイしたと思う。


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