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維新の嵐(感想)_幕末の雰囲気を味わえる独創性の高いゲーム

『維新の嵐』は1988年に光栄からPC-9801用に発売の幕末を舞台にした歴史シミュレーションゲーム。
後にPC-8801、FM77AV、MSX2、X1などに移植されているが、ゲームシステムには変更が加えられていた。
今振り返ってみても、思想統一のために要人を説得するというのがゲームとしてユニークだと思う。
以下私のプレイしたPC-98版の感想などを。

日本全国を説得してまわる

アメリカ太平洋艦隊司令のペリーが浦賀へ来航して以降の時代を舞台に、井伊直弼や坂本龍馬、西郷隆盛などの歴史上の人物を操り、全部で13藩存在する雄藩を、佐幕/公儀/尊王いずれかの国体思想で日本を統一することが目的となっている。

プレイすることの出来るシナリオは全部で3つ。
・新時代の幕開け‥嘉永6年(1858)1月28日
・長州の攘夷実行‥文久3年(1863)5月10日
・明治維新の戦乱‥慶応3年(1867)11月15日

吉田松陰が生きている「嘉永6年」、京都に新選組が存在する「文久3年」、坂本龍馬の海援隊で日本の港を自由に移動出来る「慶応3年」など開始シナリオによって状況が異なっていてそれぞれに特徴がある。

このゲームがユニークなのは、各雄藩の国体思想を統一するために、武力による制圧だけではなく「説得」で雄藩の藩主たちを攻略出来ることにあって、5つの選択肢「賄賂、脅迫、理論、威圧、本音」を切り替えながら相手になるべく多くのフキダシをぶつけることになる。

商人だったら金があるので賄賂が、学者だと学力があるから理論が有利など、能力値によってフキダシの大小や色による強弱があって、説得状況を示すメーターの振れ幅への影響が異なってくる。
さらにリターンキーを連打することで気迫ゲージが溜まり、一方的にフキダシをぶつけられるようになるため、もはや説得バトルと言っても良い。
頭の上をめがけてフキダシをぶつけていく絵面も含めてかなりシュールなのだが、これが結構ハマる。

要人たちにはレベルがあって、レベル差が大きいと説得にすら応じてもらえず、藩主などはそれなりに高くレベル設定されているため、ゲーム開始当初は地道にレベルの低い人々を説得してレベルUPする必要がある。

さらに、説得によって要人の信頼度を上げて心服させたならば、その要人もプレイヤーが自由にコントロール出来るようになる。だから西郷隆盛でプレイして大久保利通や吉田松陰を心服させたりすると、同じ思想を共有する仲間が増えていくようで楽しい。
そうして仲間が増えたら、集団で雄藩の藩主を見つけ出して日本全国を説得しに巡ったりするのだが、相手の体力が無くなるまで集中的に説得をして、1~2日ほどで思想転換させる様はもはや洗脳に近い。

思想には、国外思想というのもあって開国または攘夷の値も設定されている。吉田松陰のように攘夷思想MAXの要人に対して、開国思想の要人で国体思想についての説得を試みようものならば「開国派だな、たたき斬ってやる」と、問答無用で斬りかかってくるのも可笑しい。

存在感のある歴史上の人物たち

本作には数多くの要人たちが登場し、当時としては質の高い顔グラや能力値によって、個性を感じられるのも魅力となっていた。

岩倉具視や、車善七、佐久間象山、月照、グラバーなど、登場する要人は武士だけではなく、バリエーションに富んでいるのも良かった。

ゲーム開始時点で、選択出来る要人の種類は20人にも満たないが、主人公にしたい要人を心服させておいて、主人公の要人が死ぬ。または国体思想が変化すれば、予め説得によって心服させておいた要人に主人公を変えることも出来る。
なので通常プレイに飽きてきたならば、三条実美で武力を鍛錬し、新選組の隊士へ斬りかかったりという荒唐無稽なプレイも可能になる。

さらに藩主を心服出来ると、その藩の藩兵を動かせるようになって、異なる国体思想の藩へ戦闘を仕掛けられるようになる。
敵兵をゼロにすれば負けた藩主は浪人となり、その藩を支配出来るようになる。戦闘シーンのUIが要人同士の戦いと全く同じなのは残念だが、小藩で雄藩を叩くことで支配出来る藩を増やせるのは楽しい。

昔のゲームならではのユーモアも

幕末の志士たちが、それぞれの思想をぶつけ合うような硬く大真面目なゲームかと思いきや、昔のゲームならではのユルさや細かい演出も嬉しい。

戦闘シーンでは、脳天に剣が刺さり、腹を斬られて血が吹き出ようとも体力さえゼロにならなければ死ぬことは無い。
賭場では丁半博打が出来たり、藩主には自分の城での大奥コマンドがあり、銭湯に行って若い女性が多ければ体力が回復するくだらなさもある。

マップ移動は平面的なヘックスとなるが、五稜郭や厳島神社などの名所を通過するときには各地のグラフィックが表示されたりして、日本各地を旅する気持ちもわずかに楽しめたりもする。


外国からの圧力と弱体化している幕府。そのような日本の各地では志士たちによって様々な議論がなされたであろうし、影響力のある反対派の人物が邪魔ならば、粛清したり暗殺されたりもした。
歴史上の人物たちを操り、日本全国を巡りながら思想統一を目指していると、幕末のそういう雰囲気を楽しめるのがとにかく良かった。
さらに、佐幕、尊王の場合はゲームクリアのために最終決戦が必要となるが、ゲームクリアのために戦闘を避けて「説得」を中心に思想統一出来るというのが斬新で、混沌とした幕末の雰囲気を味わえる独創性の高いゲームとなっていると思う。

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