Zero 7 2002-2010年(感想)_ダウンテンポ路線からの変化
Zero 7は、Sam HardakerとHenry Binnsからなるプロデュース・ユニット。
以下2010年までにリリースされたアルバムといくつかのシングル、リミックスをピックアップした感想などを。
2001年までの感想はこちら。
Another Late Night (2002年)
シリーズ化されているDJミックス『Another Late Night』にZero 7が登場。
タイトル通り、踊るというより主に静かに聴くような楽曲でミックスされている。
90年代を思い起こさせるSouls Of Mischief「93 'Til Infinity」などは意外な選曲だった。
ヒップ・ホップ、ソウル、ジャズ、フォークなど雑多なジャンルを放り込んでおきながら全体の流れがまとまっており、良質な選曲センスの良さを感じる。全体的に普段私の聴かないアーティストの曲が多いのだけどすんなりと耳に馴染む。
タイトルにLate Nightとあるだけあって、夜中にひっそりと一人で聴いていたい。
Provider (Zero 7 Remix)/N.E.R.D (2003年)
N.E.R.Dのシングルカット曲をリミックス。
Zero 7ならではの低音の心地よいリズムによって、心地よいソウルに仕上がっていて好ミックス。
N.E.R.Dとは音楽のジャンルは違えど、質感にこだわる音へのこだわりなどかなり相性の良い組み合わせだと思う。
デンマークのフォークシンガー、Tina Dicoがヴォーカル参加した2ndアルバムからのシングルカット。どこかアンニュイな女性ヴォーカルと、アコギ・サウンドが印象的な1曲。
忙しなく展開が変わる「Home (Stereolab Remix)」はあらゆるZero 7のリミックスでも異色で、いかにもStereolabらしく混沌としている。
さらに、Everything But The GirlのBen Wattによるディープ・ハウスに仕上がった「Home (Ben Watt Remix)」も好ミックス。テンポは速めだが、アコギとキックの4つ打ちの組み合わせが良い。
When It Falls (2004年)
2ndアルバムの音楽性は、1stの延長線上にあるダウンテンポだがインスト曲は減った。
ヴォーカルにMozez、Tina Dico、Sia、Sophie Barkerと4人起用しているから曲のバリエーションは豊富な印象。
女性ヴォーカルが静かに響く「Passing By」や、低音のヴォーカルの「Warm Sound」が好き。
生音の質感にこだわり、ダンスミュージックとチルアウトの中間にいるような、唯一無二の音楽は長く聴いていたいと思わせる名盤。
2019年にはSpecial Editionもリリースされており、素朴なライブ演奏の聴けるRadio Sessionといくつかのリミックスが収録。
尺が10分以上もあって、中盤からキックの4つ打ちでビートの強調される「Home (Motor City Drum Ensemble Remix)」も良かった。
Somersault (2004年)
Siaがヴォーカルが気怠い雰囲気を醸し出している曲で、2ndアルバムからのシングルカット。穏やかなブレイクビーツにリミックスされた「Somersault (Reworked by Yam Who?)」も素晴らしいけど、MF Doomのラップによってファットなヒップホップに仕上がっている「Somersault (Danger Mouse Remix ft. MF Doom)」もユニーク。
Futures (2006年)
3rdアルバムからのシングル・カット。
アコギの音やJosé Gonzáleznoのヴォーカルを起用したトラックはこれまでの路線を踏襲しているようだが、エレクトロっぽいシンセベースの音色がこれまでの作風と異なっている印象を受ける。
The Garden (2006年)
3rdアルバムは、テンポが速かったり電子音が存在感を主張している曲が増えたことで、これまでリリースされた2枚のアルバムと比較するとかなり印象が異なっている。UKアルバムチャート4位。
最初に聴いた時はこの路線変更に正直戸惑った記憶がある。どういうことかというとZero 7の音楽にはクールダウンしたい時に聴くといった機能性も求めているところがあったが、本作ではそういうのは期待出来なくなったから。
しかしそういう先入観を抜きに改めて聴き直してみると、メロディーは明快で曲のバリエーションの幅が増えたことでかなり聴きやすい1枚になっていると思う。
シンセによる合成音のリズムがエレクトロニカっぽい「Today」や、カントリーぽい「Throw It All Away」のポップセンスはユニーク。
これまで同様にSiaの参加している曲もあるが、男性ヴォーカルではスウェーデンのフォークシンガーJosé Gonzálezを起用。Mozezと比較して線の細い印象はあるが声に透明感がある。
2020年にはSpecial Editionもリリースされており、色んな音が複雑に響く「Dreaming」が良かった。
Throw It All Away (2006年)
3rdからのシングル・カット。
B面にはSiaを起用したフォークトロニカのような「Thistles」と、ダウンテンポのインスト曲「Inaminute」が収録され、2曲共にアルバム未収録曲。
You're My Flame (2006年)
Siaがヴォーカルを担当したアップテンポな曲をシングルカット。
リミックスは個人的な好みでは、少しイマイチな印象で、レゲエとエレクトロが合わさったような「You're My Flame (Blunt Laser remix)」が少し気になるくらい。
Medicine Man (2009年)
ジンバブエ出身、ロンドン育ちのEskaをヴォーカルに起用したシングル曲。
リミックスはエレクトロっぽい激しめの印象のためあまり好みでは無いのだが、「Medicine Man (Baby Monster Remix)」だけは、複雑に色んな音が鳴っていて楽しい。
Yeah Ghost (2009年)
4枚目のアルバムはさらにエレクトロニックな音が増えて、生音にこだわった内省的な印象のダウンテンポは減っているため、最初の2枚のアルバムと比較すると、かなり明るくて元気な印象に変わっている。
ヴォーカリストも刷新されてEska、Henry Binns Jackie Daniels、Martha Tilston、Rowdy Superstarと新人を起用したりと多彩。
「Ghost Symbol」ではヴォコーダーが使用されていたり、過去作との違いを感じさせ、「Mr McGee」、「Everything Up (Zizou)」などは、ポップで聴きやすい仕上がり。
心のどこかでZero 7にこういう音楽を求めているのか?とも思うのだが、聴き込むほどによいアルバムに感じてくる確か。
RECORD (2010年)
これまでにリリースされた4枚のオリジナルアルバムの曲を編集したベスト盤。
CDでは2枚目にリミックスの追加された2枚組のDeluxe Editionも存在しており、大抵はこれまでにリリースされたシングルのB面に収録されていた曲。
意外なところでは「Futures (Carl Craig Remix)」が収録されており、José Gonzáleznoのヴォーカル以外はオリジナルの面影がほとんど無いテクノに仕上がっているがイマイチかも。
また、ベスト盤のリミックス集ということなら、「Home (Ben Watt Remix)」や「In The Waiting Line (Dorfmeister Con Madrid De Los Austrias Dub)」が収録されていないため、こちらの選曲は個人的にイマイチだと思う。