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The Last Starfighter(スター・ファイター)(感想)_詐欺師にのせられて宇宙を救うSF映画

『The Last Starfighter(スター・ファイター)』は1985年日本公開のアメリカ映画で、監督はニック・キャッスル。
宇宙を舞台にしたSF作品で、CGを本格的に導入した初期の映画というだけあって、仕上がりにはチープを感じさせる。しかしやり過ぎと感じるほどドラマチックな展開には何ともいえない魅力がある。
なお、墜落事故が多発したとされる戦闘機の「F-104 スターファイター」とは無関係。
以下、ネタバレを含む感想などを。

寂れたトレーラーパークの青年

アレックス・ローガンはトレーラーパークに母と弟と3人で暮らす青年。いつかはこの場所を抜け出したいと考えて奨学金の申請するも、申請が通らずに行き場のない焦りを感じている。
トレーラーパークの人々は平均年齢が高くて高齢者が目立つ。時代から取り残されたような集落は寂れた印象で、若者には明るい未来が見えないかのような閉塞感が伝わってくる。

アレックスの数少ない娯楽の一つガンスターという宇宙船で戦う「スターファイター」というアーケードゲームで、アレックスが記録を更新して最高得点プレイヤーになると、その日の夜に見慣れない高級車でやってきたセンタウリという怪しい男にライロスの宇宙基地へ連れて行かれてしまう。

センタウリによると、「スターファイター」はゲームだが、ズアーとコダン艦隊を倒すためにガンスターへ搭乗するパイロットをテストする目的でつくられたゲームだった。そのため優れた才能を持つアレックスをスカウトしにはるばるやって来たというのだ。
なし崩し的に戦争へ巻き込まれるのを嫌ったアレックスは一旦は地球へ戻るも、刺客に狙われたことで既に他人事でないと覚悟を決めて、結局はガンスターで戦うことになるというストーリー。

身近にいたら迷惑な男センタウリ

本作の物語が痛快なのは、たまたまゲームが巧かっただけの青年がなぜか宇宙を救ってしまうというギャップにある。いくつもの偶然がたまたま重なっているというのも見所で、これらは愛すべき詐欺師センタウリによる型破りで身勝手な行動のおかげというのは見逃せない。
そもそもライロスではスターリーグに未加入の地球人をスカウトすることは禁じられていたし、テスターであるゲーム機はラスベガスに置くつもりだったが、手違いで人口の少ないトレーラーパークに設置されてしまったといういい加減さ。

しかもパイロットの中で唯一アレックスだけが助かったのも、基地が襲撃された際にセンタウリが無理やり連れ出したことにアレックスが怒って地球へ戻れていたことが原因だ。

チャンスは待っているだけでは駄目で、自らの手で掴み取らなくてはと教訓めいたことを言ったりもするが、金に汚い詐欺師でしかなく、目的の為なら手段を選ばないところがはた迷惑なおじさんでしか無いのだが、コロコロと表情を変えながら軽快な口調で語る様子はなんだか憎めない。

盛り上がるドラマチックな展開

荒唐無稽なストーリーだけれども、ドラマチックな演出は盛り上げ方が巧みで話しに引き込まれる。

まず序盤のアーケード・ゲームの記録を破るシーン。たかがゲームの記録を更新するだけで、住人たちが続々と集ってくる場面。
たかがゲームの記録ごときで集まるなんて「そんなバカな」とも思うが、世間からは忘れられたような寂れた場所で、変化に乏しく娯楽の少ない生活だからこそ、目新しいことに飢えていていることが伝わるし、アレックスがトレーラーパークの英雄的存在という印象付けもされる。
繰り返すがとにかくこの『たかがゲーム』には、当時よりもさらにゲームが世間に普及した現代にも通じる夢がある。

そして、艦隊との決戦直前に宇宙と地球の時間軸を同時進行させる演出も素晴らしい。それまではベータ・ユニットが男女の機微が分からずにマギーの怒りを買うコメディ展開なのだが、アレックスを演じることに耐えられずにベータが告白すると、一気に緊迫した展開に変わる。

コダン艦隊がいよいよ侵略するというタイミングで、ベータがトラックで暗殺者を追いかけながらマギーへ状況説明、暗殺者からズアーへの通信を妨害するために「貸しが出来たな」とつぶやきながらの捨て身の体当たりには、それまでのふざけた態度だったベータへの印象が変わる。
これはベータがアレックスの複製だったことを考慮すると、自分の身を犠牲にしてでも目的を遂行する強さがアレックスにも存在することが仄めかされる。

スターファイターが死んだと勘違いして侵攻するコダン艦隊をやり過ごして、家族写真に写ったマギーを無言で見つめるアレックス、そして炎上するトラックを背後にしたマギーによる「アレックス・ローガン、愛している」からの、グレッグのカウントダウンに合わせて、アレックスがガンスターの機能をひとつづつ確認するシーンはかなりベタだけれども、このいかにも『舞台は整った』という演出にグッとくるのだ。


Craig Safanによる音楽も素晴らしい。何年も前のことになるが好きすぎてサントラCDを購入したが、音圧が低かったこともあって後に再リリースされたリマスタリング盤も購入したほど。
「Main Title」のメロディーはオープニング、出撃タイミングなどの重要な場面で様々なアレンジで聴ける。雄大でドラマチックな展開は聴いていると勇気をもらえる印象的な曲となっている。
エンディングでかかる多幸感あふれる「Into The Starscape」のアレンジも、映画の余韻に浸れる素晴らしさがある。

私が最初にこの映画を観た頃、家庭で映画を観るにはVHSデッキへビデオテープを挿入するのが一般的で、街にレンタルビデオ屋が何軒もあった時代(恐らく売上を支えていたのはアダルト需要)
それから何十年も経過してからふと思い出してBlu-Rayディスクを購入したのが2013年で、長いこと寝かせていたけど久しぶりに見直した。日本語の吹替/字幕が無いので全てを理解出来ていないけど、単純な展開だからまぁまぁ理解出来ているハズ。
地上波での放送時は水野晴郎による解説付きだったらしく、そういう時代のSF映画だけあってチープではあるが、たまに見直したくなるのだ。


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