Khruangbin(感想)2018-2022年_様々な変化を聴かせるコラボ
テキサス州ヒューストン出身のKhruangbin(クルアンビン)による、2018年以降のリリース作品についての感想などを。
2018年以前リリースの感想についてはこちら。
Kingdoms In Colour/Maribou State(2018)
ロンドンのチルミュージック・デュオ、Maribou Stateのアルバム『Kingdoms In Colour』へ、「Feel Good」という曲で参加したKhruangbin。
女性の声をサンプリングして変な声に加工したのをぶつ切りにして、ノリのよいビートにのせた楽曲はかなり好物だから気分がアガるし、アルペジオでメロディーを奏でるベースもかっこいい。他ミュージシャンとのコラボでは現時点では最も好きな曲。
アルバムを通してクオリティの高い1枚。
Kingdoms In Colour Remixed/Maribou State(2019)
こちらは上記したアルバムの翌年にリリースされたリミックス盤。
リミックスされた「Feel Good (feat. Khruangbin) (Mount Liberation Unlimited's Reduced Funk Tripp)」は9分以上の尺があり、ゆったりループするベースラインと、途中挿し込まれるサンプリングされた奇声がピッチを変化させていく展開も好き。ダラダラと聴くことが出来て心地よい。
ダブっぽい雰囲気と陶酔感がThe Stone Roses「Fools Gold」を彷彿とさせるかも。
全てが君に微笑む(2019)
初期3枚のシングル/EPとなるA Calf Born In Winter」「The Infamous Bill EP」「「History Of Flight」をまとめた日本独自の編集盤。
全曲アルバム未収録で、どの曲もクオリティが高いから既に持っていたマニアが悔しがる1枚。
Hasta El Cielo (Con Todo El Mundo in dub) (2019)
2019年には2ndアルバム『Con Todo el Mundo』のダブバージョンをリリース。
空間の拡がりを感じさせるリバーブと濃厚で重苦しいリズムのせいで、ただでさえ暗かった2ndアルバムがさらなる深みへ沈み込んでいく。深海の底かと思うほど深いサウンド。
抑圧された乾いたビートが響く「Mary Always」など好きな曲はあって2ndアルバムを聴き込んでいるとまぁ、別べージョンとして楽しめる。
しかし全編ダブバージョンというだけあって、よっぽどダブっぽい曲が好きでないとKhruangbin入門編としてはこれ単体だと厳しい。
Texas Sun EP(2020)
シンガーのLeon Bridgesとコラボした4曲入りのEP。
独特のグルーヴ感はいつもの感じだけど、Khruangbinらしさは少しだけ薄まってソウルまたはカントリー・ソングのようなトラックに仕上がっている。
表題曲「Texas Sun」の長閑な感じはKhruangbin単体では聴かれないようなコラボならではの曲だし、「Midnight」のようにまったりとした曲もすんなり耳に馴染む。どの曲もクオリティが高い。
Evan finds the third room (Leslie Lello RMX)(2020)
2ndアルバム収録曲を原曲の良さを残したまま、ディープ・ハウスにリミックスした1曲で、深夜にフロアでぽつんと聴きたい感じ。もともとノリの良い曲ではあったのでハウスビートにハマっている、好ミックス!
Mordechai(2020)
2年振りのリリースとなる3rdアルバム。
多くのトラックに霧のようにあいまいなヴォーカルが入っている1枚。
2ndアルバムは全体的に暗かったが、本作では情感豊かな曲が増えた印象で、その変化に最初は少し戸惑ったけど聴き込むと馴染んでくる良さがある。
日本の栃木で撮影された「So We Won't Forget」のMVも、事故で死んだ娘に父が会いに行く悲しげな展開でありながら、ほんのり笑っているぬいぐるみの顔面に何度もズームするコミカルさがあったりと趣があった。
私はボールになれる~、と不思議な歌詞がエキゾチックなギターのフレーズにのったポップなメロディーの「Pelota」もお気に入り。
No Distraction (Khruangbin Remix) /Beck(2020)
Beckの「No Distraction」をリミックスした1曲。
原曲は元気の良い曲だったのに、深いリバーブをきかせたBeckのヴォーカルは原形をほとんど残しておらず、いかにもKhruangbinらしくリミックスされているから、身体をゆっくり揺らしながらチル出来る。
Christmas Time Is Here (2020)
基本的に躁状態な楽曲の多いクリスマスソングを、まさかKhruangbinが?と意外だったが、いい意味で予想を裏切ってくれる曲。
シンプルなドラムとのんびりとしたベースラインはまったりとしていて、ギターの響きには心なしかホリデーっぽさもあるけど、クリスマスっぽさは控えめだから聴きやすい。
LateNightTales: Khruangbin(2020)
コンピシリーズ『LateNightTales』の選曲をKhruangbinが担当。
深夜に聴くのがテーマに選曲されているだけあって、ダウンテンポな曲が集められているが、ジャンル分けしづらいユニークな曲が多い。
意外なところでは柳ジョージ「祭りばやしが聞こえるのテーマ」が収録されていたりするが、全体的に国籍不明なエキゾチックな印象の曲が多いので違和感なく馴染んでいる。
McCartney III IMAGINED(2021)
Paul McCartneyがリリースした18作目のソロ作『III』を様々なアーティストがリミックスまたはカバーした1枚でKhruangbinは「Pretty Boys」という曲にfeaturingで参加。
このリミックスにはPaul McCartneyぽいポップさはほとんど無くて、グルーヴ感とエキゾチックな感じのいつものKhruangbin節が聴ける。ノリが良くてまぁまぁ好き。
Mordechai Remixes(2021)
3rdアルバム『Mordechai』のリミックス集。
こういう複数アーティトによるリミックス盤はたいてい統一感が無くて、品質にバラツキがあったりするものだけど、本作はまとまりがあって、かつジャンルのバリエーションも様々で聴きやすい。
Ginger Rootによるリミックスで、ブレイクビーツのかっこいい「Connaissais de Face (Tiger?)」がお気に入りで、ディープ・ハウスに仕上げた「If There is No Question (Soul Clap's Wild, but not Crazy Mix)」もかなり好き。
アフロ・ビートのようなリズムの「Time (You and I) (Put a Smile on DJ's Face Mix)」も原曲の良さを引き出していて、後半にウネってくる分厚いシンセ音とかも好み。
Texas Moon EP(2022)
約2年ぶりにLeon Bridgesと再び組んでリリースした5曲入りEP。
前作同様に、ソウル/カントリーのテイストを感じさせる1枚になっているけど、個人的には前作よりも深みがあるような気がするから本作の方が好き。
Leon Bridgesの優しいヴォーカルが郷愁を誘う「Mariella」が特にお気に入り。
Ron Trent Presents Warm:What do the stars say to you(2022)
ハウス・ミュージックのクリエイターRon Trentのアルバムに「Flos Potentia (Sugar, Cotton, Tabacco)」という曲で参加。
アジアや中東あたりを思わせるギターサウンドが印象的で、陶酔感のあるディープ・ハウスに仕上がっていてセンスの良さを感じさせる。
Ali/Vieux Farka Toure & Khruangbin(2022)
マリのギタリスト、Vieux Farka Touré(ヴィユー・ファルカ・トゥーレ)とのコラボ作品。
Vieuxの亡き父で、やはりギタリストだったAli Farka Touré(アリ・ファルカ・トゥーレ)へのオマージュ作品とのこと。
哀しみを帯びたギターサウンドはスピリチュアルで土着的。これまでリリースされたKhruangbin作品の中で最も渋い1枚になっていると思う。