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Electric Light Orchestra(感想)1971-1975年_実験的なプログレ・バンドからポップ路線への変化

まだ音楽がCDにパッケージングされても売れていた1990年代、アルバムを買うと1枚あたり、J Popが3,000円くらいで、洋楽でもだいたい2,400~3,000円の値付けがされていた。そんな中CBSソニーから発売されていたElectric Light Orchestra(以下ELO)のアルバムは1枚1,800円で購入できたから買い易かったこともあって、よく知らないのになんとなく聴きはじめた。
そんな、アルバム1枚あたりの値段がきっかけで思いがけず長い付き合いになっているELOおよび中心メンバーとして活躍してきたJef Lynneがソロでリリースしてきたアルバムの感想などを。
なお、Bev Bevanが中心になって活動していたPart IIについては聴いたことが無いので割愛する。


Electric Light Orchestra(No Answer)

[1971年] 全英32位/全米196位
前進バンドとなるThe MoveRoy WoodJeff Lynneが中心になってリリースされた1stアルバム。
シングル・カットされた「10538 Overture」(全英9位)は聴きやすいが、アルバム全体の印象はヒット曲を連発していた頃のポップなELOを期待するとかなり落差がある。
実験的と言えば聞こえは良いが、ロックとオーケストレーションの融合がまだよく馴染んでいないような曲が多いというか、Roy Woodがいくつもの楽器を演奏して多重録音したとされ、プログレっぽい印象。

とはいえ、そういうものだと思えば聴きどころもあって、「Nellie Takes Her Bow」のように曲が終わったと思ったら、唐突に続きがはじまったりとアイデアを詰め込みたかったという思いは伝わってくる。

本作のあとにRoy Woodは脱退。リーダーシップを取りたい性格の人間が2人いたのでこの体制で継続することはそもそも無理だったのだろう。


Electric Light Orchestra II

[1973年] 全英35位/全米62位
このアルバムからELOは、Jeff Lynneの全面プロデュースとなっていく。
前作よりもかなりメロディーがこなれてきた印象だが、やはりジャンルとしてはプログレに括られると思う。

曲も長くてたった5曲で40分弱もの尺がある。11分もある「Kuiama」の動と静を包括した展開に聴き応えはあるが、音楽配信のストリーミングサービスが普及して以降、3分に満たない尺の曲が増えた最近の風潮とは真逆を行っている。
ヒットした「Roll Over Beethoven」(全英6位)はChuck Berryのカバー。


On The Third Day

[1973年] 全英46位/全米52位
日本盤のタイトルは「第三世界の曙」とスケールの大きさを感じさせるだけあって、壮大なイメージの曲が多いが、かなりポップな曲が多くてクラシック音楽の引用などもこなれてきた。

ストリングスが哀愁を漂わせている「Bluebird Is Dead」が好きで、こういうスローテンポな曲にはJeff Lynneの柔らかいボーカルとの相性が良い。
サザン・ロックの「Showdown」(全英12位)、Marc Bolanの参加した「Ma-Ma-Ma Belle」 (全英22位)なんかはグイグイくるロックとなっていて聴き応えはあるが、カバーデザインの輩っぽさが、曲の印象とかけ離れていて可笑しくて「第三世界の曙」というワードとのギャップもすごい。
そもそもロックっぽい印象を出さないと売れない時代だったのかもしれないが、いずれにせよこのデザインのせいでいつも聴くのをためらってしまう1枚。


Eldorado

[1974年] (全英40位/全米16位)
夢の国「エルドラド」にて巻き起こる出来事を描いたコンセプト・アルバムとなっているだけあって、緩急のある展開でも統一感のある1枚。

シングル・カットされた上品な質感のバラード「Can't Get It Out Of My Head」が素晴らしい。
曲間が途切れていないトラックもあるので通して聴くことになるのだが、これまでの作品と比較してアレンジが格段に良くなっていて、クラシックの上品で厳かな要素と、プログレの重厚で賑やかな印象のバランスが素晴らしくトータルでも飽きない。
アルバムとしての完成度の高さは、今作以降にも起用されることになるストリングスのアレンジに指揮者のLouis Clarkの影響があるのかもしれない。

Face the Music

[1975年] (全英30位/全米8位)
インストナンバー「Fire On High」の過剰にドラマティックな展開は、アルバム1曲目のキャッチとしては優れていて、ディスコテイストの「Evil Woman」(全英10位/全米10位)もヒットしだけあって、ポップで聴きやすい。

「Strange Magic」(全米14位)の甘美なメロディは、映画『The Virgin Suicides』(日本公開2000年)に使用されていたのが印象的で、歪んだ家族関係の表面的な幸せな様子とよく合っていた。
緩急のあるポップソングに仕上がった「Nightrider」も好きだし、ラスト「One Summer Dream」も、まったりとした夏の気だるさを感じさせて良い。

前作と比較するとアルバムトータルというより、ポップソングの寄せ集めといった印象で、このアルバム以降、これまでの実験的要素が減っていく。
ヒット曲狙いの路線は商業的と言えば聞こえは悪いが、バラエティに富んでいて私としてはこういうポップスをやっているELOの方が聴きやすい。
しかし、なんでカバー写真を暗い印象の電気椅子にしたのか。どうもカバーデザインと楽曲のギャップがある。

本作で5枚目のアルバムとなるが、1stから比較すると徐々に音楽性が変化して行っているのが、Jeff Lynneなりの実験精神ともいえる。音楽の”売り方”が現代ほど確立していない時代だったから、自由にやれたというのもあったのだろう。
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ページが長くなってきたので、続きは次回以降。


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