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洋服と海
082 洋服と海
年始に服を1着買った。ぱっと見、色遣いは私の好みではないと思ったのだが、ふと目について着てみると色も形も自分に驚くほど似合う。これを着て歩けば、どんな道も私のランウェイとして闊歩できそうだった。
私の好む民族系の外套である。脇がモモンガのように少し広くなっていて、袖に行くにつれて絞られている。袖口はゴムの入った薄手の布できゅっと柔らかく締められる。体幹の部分は広く空間ができるようなかたち。
その外套を着れば、心が穏やかで豊かな気持ちになれる。朝ごはんを食べるときには、両手を丁寧に合わせて、いただきます、と言う。小さな一口を口に入れ、しっかりと咀嚼して味わって食べる。養分が身体に入っていくのを感じる。
この外套を着ていれば、今を味わえる。
*
年末からのうつ状態から抜けられずにいる。最底辺からは脱却したものの、小康状態と波にのまれる状態を繰り返している。まるで夜の海にある浮き。何かおもりが入っているようで、少しの波の刺激で沈んでは時間をかけて上がってくる。静かな寒い海で星空を眺める。知っている星が瞬き、私に話しかけてくれればうれしい。
軽うつ状態にだと、動きが緩慢になり、そこに滞在する期間が長くなるので、その場所空間時間をよく見るようになる。いろいろなことに気が付き、行動が丁寧になる。それで私は私をなんとか保っている。
夏から秋にかけた躁状態が少し長かった。軽うつ傾向は少し長引くかもしれない。詩と小説と音楽と外套と文章が私を保ってくれる。心強い。遠くにいる友人たちの存在もまた私をここに居させてくれる。
アラユルコトヲ ジブンヲカンジョウニ入レズニ
ヨクミキキシワカリ ソシテワスレズ
ここでの「カンジョウ」を「勘定」ではなく、私は「感情」といつも読みたくなる。
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澄んだ冷たい空気と黒い海の間で、凍えながら溺れそうになりながら、美しい星々が受かぶ空を眺めて、沈まずにここに居ようと一生懸命だよ。
2025.01.08 鷲田清一さんのファッションについての本を読みたい。