【偽・禍話 文字起こし】 嘘狂いの電話
ある人、まあ仮にAさんとしておきましょう、そのAさんがある日どうしてもバイト休みたくて、言い訳を考えてたんですって。
でも今このご時世体調不良っていうと
「コロナか?」
みたいに疑われて面倒じゃないですか。
それで頭を悩ませてたらしいんですよ。
ところでAさんは一人暮らしの女性なんですけど、とっても怪談が好きで、結構四六時中怪談をやってるネットラジオのアーカイブを漁って聞いたりする人だったんですね。
それで思いついてしまったんだな。
「家族が心霊スポットに行って発狂して大変だってことにしよう」
結構怪談とかで行って発狂する人って登場しますし、禍話でも何回紹介したか分からないくらいですからね、思いつくこと自体はまああるかなと思いますけど、普通そんなこと思いついても実行しないじゃないですか。
ちょっと……まあ言っちゃあ悪いとは思うんですけど、ちょっとおかしい人なんだと思うんですよねAさん。それやったんですって。
「すみません」つって。
「妹が発狂したんで実家に帰って様子見なきゃいけないんです」つって。
まあ信じてもらえるわけないじゃないですか。で、まあ案の定信じてもらえなくて出勤することになったんですって。
これ夕方の話で、その日の夜がシフトだったそうなんですよね。
で、気が重いなあと思いながらも出勤の準備をしていたら携帯が鳴った。
発信者を見てみるとバイト先の番号なんですよ。
こりゃ日ごろの勤務態度もあんまり良くないし、今日のこともあるから、とうとうクビの宣告かな?それはそれでラッキーなのか複雑な気持ちだなあなんて思いながら電話に出たんですって。
そしたら、電話して来てたのバイト先の店長だったらしいんですけど、
「ごめん、まさか本当だったとは思わなかった」
って休みくれたんですって、びっくりじゃないですか。
それを聞いて当然Aさんもびっくりなわけですよ。
だって実際そんなこと起きてないわけですからね
で、何があったのか店長に聞いたら
「今ほど店に電話があって、出たら君の実家のお母さんだったんだよ 」
「お母さんも大変そうだったね、娘(妹さんのことらしいんですけど)が馬鹿なことをやって、さっきお姉ちゃんが休めなくて帰れないって連絡をよこしたんだけどお姉ちゃんにも帰って来て欲しいって確かに言ってたんだよね」
これ聞いてAさんぞーっとした。
だってあたり前ですけど仮病……みたいなもんで休むの失敗しただけで、実際なんかあったわけじゃあないんだから実家に連絡なんてとってないわけですよ。
全く心当たりのない電話が実家からバイト先にあったってだけでも怖いじゃないですか。でもこれで終わらなかったんだな。
店長が言うには、その電話の後ろで、妹さんらしい人がズーーーっと、それこそ電話切れるまで
「お姉ちゃんのせいでお姉ちゃんのせいでお姉ちゃんのせいで」
って金切り声で叫び続けてたんですって。
で、その日は結局バイト休めたんですけど、あたりまえだけど怖いので実家に連絡したら、妹さんは別に今も普通に過ごしてるし、なんならバイト先の電話番号も知らないからそんな電話かけるわけないっていうんですって。
結局何だったか分からなくて怖いなって話なんですけど、Aさんはそれきりどんなにバイト休みたくても、嘘つくのだけはやめたそうですよ。
※これは怖い話をするツイキャス、禍話の語り手、FEAR飯のかぁなっき氏の語りをリスペクトし、文字起こししたもの風にオリジナルの怪談を書いたものです。かぁなっき氏本人とは一切関係ありません。