【感想】井上尚弥 vs TJ・ドヘニー

井上尚弥 vs ＴＪ・ドヘニーの試合、やや不完全燃焼でしたが今回も井上選手が強すぎました。

井上選手が７ＲＴＫＯにより元ＩＢＦ世界スーパーバンタム級王者のＴＪ・ドヘニーに勝利しました。

最後はドヘニーが腰を痛め、レフェリーストップによるＴＫＯというフィニッシュとなりました。

試合内容は井上選手のワンサイドゲームと言ってもいい内容で、全局面で圧倒していたと思います。

１Ｒこそお互い様子見の展開でしたが、２Ｒからは両者ともに徐々に手が出てきて、ラウンドが進むにつれて井上選手のペースとなっていき、７Ｒにドヘニーが力尽きたという感じでした。

井上選手の戦績はこれで２８戦２８勝２５ＫＯです（ＫＯ率約９０％）。

軽量級でこのＫＯ率は本当にモンスターですね。

しかも井上選手が闘ってきた相手はかませ犬とかではなくて、名だたるチャンピオンや元チャンピオンばかりですから凄すぎて言葉が見つかりません。

井上選手は前回のルイス・ネリ戦で左フックを浴びてキャリア初のダウンを喫しており、今回対戦したドヘニーもサウスポーで強烈な左のパンチを持っているので井上選手がどう対応するのか注目していましたが、ほとんどまともにパンチをもらわずに完勝しました。

この試合が発表された時に「ドヘニーよりも強い選手との試合が見たい」という声も一部で上がりましたが、そもそも井上選手はスーパーバンタム級の２トップだったスティーブン・フルトンとマーロン・タパレスの両者を倒して４団体の王座を統一しており、この階級のトップに立つ存在です。

そのため、今の井上選手は誰とやっても見劣りしてしまいますし、相手がいない状況です。

そして、まずドヘニーもかなり強いです。

井上選手と闘う前の戦績は３０戦２６勝４敗で、２６勝のうち２０ＫＯとＫＯ率も高いです。

また、ＩＢＦ世界スーパーバンタム級の元王者であり、ＷＢＯの世界ランキングで２位、『リングマガジン』の階級ランキングでもスーパーバンタム級でトップ１０に入っており、紛れもない実力者です。

年齢は３７歳でキャリアの終盤に入っていると思われますが、直近３戦は全てＫＯ勝ち、そして試合前にドヘニーのプロモーターが「彼（ドヘニー）には失うものは何もない。彼はリラックスして試合に臨むはずだ」（ショーン・ギボンズ／８月２６日）と言っていた通り、下馬評も低くて失うものがなく、万が一井上選手に勝てばいきなり４本のベルトが手に入るという状況でメンタル的にも良い環境だったと思います。

そんな状況にも関わらず、井上選手は実力者のドヘニーを圧倒し、今まで一度もＫＯされたことがないドヘニーを（腰を痛めてではりますが）ＴＫＯで下しました。

この勝利で井上選手は
「日本人の世界戦勝利数１位（２３勝／２位は井岡一翔選手の２２勝）」「日本人の世界戦連勝数１位（２３連勝／２位は具志堅用高の１４連勝）」「日本人の世界戦ＫＯ勝利数１位（２１ＫＯ／２位は井岡一翔選手の１１ＫＯ）」
など自身の持つ記録をさらに更新しました。

井上選手はこの他にも
「日本人の世界戦最短ＫＯ（７０秒）」
「日本人初のパウンド・フォー・パウンドランキング１位」
「アジア人初の４団体王座統一」
「ボクシング史上２人目の２階級４団体王座統一」
などさまざまな記録を残しており、日本のボクシング界で圧倒的な存在となっています。

【井上尚弥の今後】

井上選手は２０２４年５月にルイス・ネリを倒した後のリング上でサム・グッドマンと「９月頃対戦できるように交渉している」と発言していました。

なので当初はグッドマンと対戦すると思われていましたが、グッドマンが７月にノンタイトル戦を行い、しかもその試合で拳を負傷したため、グッドマン戦は消滅しました。

一方で、ＷＢＡとＩＢＦの元統一王者ムロジョン・アフマダリエフが井上選手との対戦を熱望していましたが、最終的にかねてより噂されていたＴＪ・ドヘニーとの試合に落ち着きました。

井上選手は「あと２年くらいはこの階級で戦う」と発言しており、試合後のリング上では年内にもう１試合戦うという意向が示されたため、候補は先ほど述べたグッドマンかアフマダリエフではないかと思います。

ただ、この２人でも井上選手に勝つのは非常に難しいと思うので、個人的には現在ＷＢＣ世界バンタム級のベルトを巻いている中谷潤人選手との対決が見たいです。

中谷選手も井上選手と同じく無敗街道を走っており、身長も高くていずれ階級を上げると目されているので、うまくいけばスーパーバンタム級で激突する日がくるのではないかと思います。

無敗の４階級制覇王者・井上尚弥と無敗の３階級制覇王者・中谷潤人、両選手とも『リングマガジン』のパウンド・フォー・パウンドランキングトップ１０に入っており、これが実現したら日本人ボクサーの頂上対決であり、東京ドームも余裕で埋まると思います。

ぜひ実現してほしいです。

欠点が全く見つからない井上選手がこれからさらにどんな景色を見せてくれるのか、考えるだけでワクワクします。

ということで、井上尚弥 vs ＴＪ・ドヘニーの感想でした。