平安時代は和歌が必須教養でした。枕草子を書くくらいですから、清少納言は和歌が得意です。でも、必須教養だからと言って誰もが和歌を好きなわけではありません。
清少納言が結婚していた橘則光は、和歌が嫌いでした。清少納言によれば、「和歌を詠んでくるやつは敵と思うぞ」という愚痴をよく言っていたそうな。妻は和歌で突出した才能を発揮していて、男たちから称賛されることは誇らしく思う気持ちがある一方、和歌は好きになれない夫..。
「古典を読んでみましょう」という本でこのエピソードを知ったとき、私は初めて「枕草子が読めるかもしれない」と思いました。
結婚、家族、女の自立、生き方について、今“当たり前”になっている考え方から自由になりたい。「昔はよかった」と言いたいのではなく、時代によって“当たり前”はこうも幅があるんだということを知りたい。中巻で最も長い註を読みながら、私は深い理解者を得たように感じました。