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“美しい”ということは、“美しいと思える瞬間に立ち会うこと”

「私は、三回ほど金閣に行って、しかし一度も、『美しい……』と思えるような瞬間に出会えなかった。昼の光を浴びる金閣は、なんだか異様にのっぺりした“金色のようなもの”でしかなくて、私はそういう金閣しか見てはいないのだが、それでも私は、金閣というものが美しいものだと信じている。自然というものは、いつか突然、思いもかけないような形でその美しさを現すものだから、金閣だって、いついかなる時にそうなるかは分からないのだ。
私は金閣の美しさを全然疑っていなくて、見たこともないくせに、『雪の中の金閣はきれいだろうなァ……』と、勝手なことを考えている。『金と白』のコーディネイトは絶対に美しいはずで、“美しい”ということは、“美しいと思える瞬間に立ち会うこと”でもあるのだから、それでいっこうにかまわないのだ。」

橋本治「とんでもなく美しいもの」
(『ひらがな日本美術史2』)


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