#カワイクイキタイ26「つよわい」
時間や、季節や、天気のように。どんな時も、どんなことも、いいこともわるいことも、しかたないかと笑って生きてゆけたらいいのに。
動物や植物がしないこと、私もせずに済んだらいいのに。いっぺんの悪意なく、誰のことも傷つけず、静かに生きてゆけたらいいのに。
わりと本気で思っているのに。
ね。
白い持ち物をすぐ汚し、白いまま長持ちさせた試しがない。時間通りに電車に乗ることも、朝からピシッと起きることも、私にはむずかしい。数字全般がだめ。動物が人間のせいで死ぬ話は辛くて見れない。眠いのを我慢できない。おばあちゃんを人質に取られたら降伏するしかない。
あれこれ同時にできない。終わるまで他のことができない。なのにやり始めるまで腰が重い、のに集中しだすとやめない。
嫌いな奴には、愛想よくした方がいい時でも、うまくできない。
意地悪な人間。意地の悪さを隠さない、意地の悪さに気づかない、バカがなによりも、人の悪意のなにもかもがきらい。
大切なものを失うのがこわい。大切な人とさよならしたくない。
こんなに弱点だらけ。
無敵だったらいいのに。
嫌いなものや嫌なこと、怖いこと、できないこと。私は弱点でできている。他の人にできることが、私にはできない。
どうしてできないんだろ、こんな簡単なこと。どうしてわからないんだろ、子供でもわかるようなこと。
恥ずかしい。できないことばっかりで。いつもさみしくて。誠実さにムラがあって。立派じゃなくて。
こんなことしてて、あんなことが好きで、好きなことしかできなくて、好きな人しか好きじゃなくて。それが、うれしいだなんて。
あぁ、恥ずかしい。
でっかいしまむら。山や川。電線のない空が、窓の外を流れてゆく。あの街にない何もかもが、何もないこの町にある。不思議。何を求めて、あの街に向かったんだっけ。大切なものをたくさん残して。
この街の空は四角い。なにかとなにかに挟まれた、隙間からしか覗けない手のひらの空。こんな空しか見てないなら、肩をぶつけてくるのもしかたないか。
うまく書けないな。あれもこれもできなくて悔しいな。もっとすごくなりたいな。いくら書いても、いくら恥をかいても、自分を好きにならないな。
好きになれなくても、しかたないかと思えたらそれでいいのに。時間や、季節や、天気のように。動物や植物のように。いられたらいいのに。いられないから、いようとするから、なろうとする時だけ、ちょっとだけマシ。
手の届かないものが好きだ。
たぶん弱いから強いんだ。