戦後教育の歴史
みなさんは学習指導要領というモノを知っていますか?
それは、文部科学省が出している小学校・中学校・高校における教育課程の基準です。
つまり、学習指導要領の歴史をたどれば戦後の日本でどのような教育が施されていたのかを紐解く鍵となるのです。
この記事では学習指導要領の歴史を大まかに説明した上で2020年以降の新しい教育について紹介していきたいと思います。
みなさんが受けてきた教育について振り返ってみるのもおもしろいかもしれません。
また、2020年から大幅に変動する日本の教育について関心を持っていただけたらと思います。
1・1947年版〜学習指導要領の始まり〜
ではここから学習指導要領の歴史を説明していきます!
1947年版の特徴は、教師のための手引書としての性質がある「試案」の銘記、「社会科」「家庭科」「自由研究」の新設、児童の発達・経験を重視した経験主義などが挙げられます。
しかし、経済成長への期待からアメリカ流の経験主義により学力が低下したとの批判がありました。
また、この時期の社会的背景には、教育基本法・学校教育法が公布され「6・3・3・4制」が採用され、この制度によって、小学校6年間、中学・高校3年間、大学4年間になったわけなんです。
また、1950年の朝鮮戦争後教育への管理統制の強化が本格化されました。
2・1951年版〜教育課程と自由研究の廃止〜
1951年版の特徴は、初めて教育課程という言葉が使用され、問題解決学習が重視され始めました。
そして、自由研究が廃止され特別活動になり、その3年後には、高校進学率が50%を超えました。
3・1955年版〜愛国心重視と試案の削除〜
1955年版では、社会科のみが改訂され愛国心が重視され、「試案」が削除されました。
4・1958年版〜法的拘束力と系統主義〜
1958年版の特徴は、官報告示として学習指導要領が法的拘束力を持つようになりました。
そして、道徳の時間の特設や教科中心の系統主義の強調などがあります。
しかし、道徳の時間などが、修身(戦前教育の国に命を捧げるなどの道徳教育)への逆戻りであるという、批判や中学段階での進路に応じた教育が差別であるという批判がありました。
5・1968年版〜能力主義と理数系重視、おちこぼれ〜
1968年版の特徴は、能力主義が重視され、1957年ソ連のスプートニクショックの影響が本格化し、教育の現代化、理数系の重視、学習内容増加などが起きました。
しかし、新幹線授業により落ちこぼれや非行問題、受験競争の激化などの批判がありました。
また、この頃の社会的背景には1973年にオイルショックがあり、高度経済成長が、終焉した影響もあったと思われます。
6・1977年版〜初のゆとり教育〜
1977年版の特徴は、 落ちこぼれや非行問題、受験競争の激化の批判から反省し、豊かな人間性、ゆとりと充実、授業時間、学習内容の削減などが挙げられました。
いわゆる「ゆとり教育」の始まりです。
しかし、もっとゆとりが必要だという意見から「名ばかりゆとり」として批判がありました。
7・1989年版〜新学力観と技術・家庭科〜
1989年版では、臨時教育審議会答申の影響により、新学力観(知識・理解<興味・関心。意欲)が台頭します。
また、小学校低学年の理科と社会を生活科に、中学「技術・家庭」高校「家庭一般」が男女共修になりました。
しかし、新学力観に基づく成績評価が難しいとの批判があり、そしてこの頃の社会的背景として、1991年にバブル崩壊などの出来事がありました。
8・1998年版〜ゆとりの中で生きる力と総合学習〜
1998年版の特徴は、ゆとりの中で生きる力を育む、総合的な学習の時間が創設されました。
そして更に、情報科が新設されましたが、学力低下に対する批判が急速に高まっていきました。
9・2008年版〜学力低下の反省と武道・ダンス〜
2008年版の特徴は、生きる力と確かな学力であり、学力低下の批判からの反省で、学習内容と授業時間数を増加させました。
他にも、体育で武道とダンスを必修化し、小学校5.6年で、外国語活動を設置するなどが挙げられます。
10・2017年版〜「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)〜
最後の2017年版の特徴は、「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力」、「学びに向かう力・人間性」、「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」を重視し、外国語教育やプログラミング教育に力を入れ、各学校のカリキュラム・マネジメントの実現を目指しています。
また、高校の現代社会が廃止され、公共の新設などの特徴も挙げられます。
11・2020年以降の教育
ここまで、戦後の日本の教育について説明してきましたが、2017年版の学習指導要領が、2020年以降から実行されます!
なので、その内容をもう一度学習指導要領の意味や、特徴を掘り下げながらさらに深く取り上げていこうと思います。
12・学習指導要領の意味・特徴の振り返りと最新学習指導要領
最初に、学習指導要領というのは、全国のどこの学校でも一定の水準が保てるよう、文部科学省が定めている教育課程の基準です。
目指すのは、「社会に開かれた教育課程」の実現であり、およそ10年に1度改訂され、子供たちの教科書や時間割は、これを基に作られています。
改訂される理由は、学校とは本来、社会と切り離された存在ではなく、社会の中にあり、グローバル化や急速な情報化、技術革新など、社会の変化を見据えて、子供たちがこれから生きていくために必要な資質や能力について見直しをする場所である為です。
現在考えられている学習指導要領の改訂案の特徴をまとめると、小中高全てにおいて共通で、社会の一員としての社会とのつながり、社会との関わりが重要視されています。
そして、日本国民としての自覚を促す特徴は、幼児教育にも見られます。
今回取り上げる学習指導要領改訂案の目玉として、領土や伝統・文化の記述が増えた、社会科教育の改訂が代表的です。
しかし、それには問題があり、ある教授によると「主権者として社会を認識する力を育てる点が重要なはずの科目で、態度や心情など道徳的目標が重視されている。生徒をいったいどう評価するのか。」が問題なんだそうです。
生徒評価に関する問題は、社会科だけの問題ではなく、小中共通で教科化される道徳でも、他人と比較せずに評価する生徒評価方法は難しいのです。
新たに科目化されるのは道徳だけではありません。
小学校教育では、外国語科が教科化されます。
これらにより、危険視されているのが教員への負担です。
今回の学習指導要領改訂案は「質」と「量」の二兎を追うものであり、ただでさえ教員の多忙が指摘される現代社会で、「主体的・対話的で深い学び」が掲げられ、教員は討論やグループ学習などの指導法を身につけ、小学校の外国語やプログラミング教育、教科化された道徳も研究しなければならなくなり、「時間」がなく、教員への負担が大きくなるのです。
そこである会長は、ポイントとなるのがカリキュラム・マネジメントであり、「教員が個々で取り組むのではなく、連携し、学校全体の教育力を高めるイメージだ」というのです。
それ故に改訂案では、子ども達の「資質・能力」を育てる為、一方的に教員の話を聞く授業ではなく、議論や体験、継続的な調査などを通じた「主体的な学び」が欠かせないと位置付けました。
そのため、各教科を横断的に結びつけ、地域の人たちとも連携して授業を作るなどをして、教育の質の向上を図る目的を明確にして「カリキュラム・マネジメント」と位置付けられました。
まとめると、学習指導要領を改訂するのはグローバル化や急速な情報化、技術革新など、社会の変化を見据えて、子供たちが必要な資質や能力について見直しをするためであります。
ですが、近年出された学習指導要領改訂案は、生徒・児童が社会への関心をもち主体的に学び、探究し、資質・能力を育成するという良い特徴が考えられますが、その一方で、教科化された科目が多く、現在でさえ時間がない教員への負担が大きくなりました。
更に、「道徳的な目標が重視され採点基準が難しい」という問題が指摘されており、重要になるのが「カリキュラム・マネジメント」であることは間違いありません!
13・次世代に向けて
いかがでしたでしょうか?
かなり難しい内容もありましたが、今後の日本を紐解く要因として教育は必須といえます。
新しい教育を知ってこそ未来を知る鍵となるのです!
ぜひ、この記事を見てくれた方は、教育についてもっと深く考えてみてもらえたら良いなと思います!