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物語のカケラ 2021-2024 stories

ベッドに入ってから眠るまで
そのくらいの わずかな時間

今日を振り返ったり
明日を思い描いたり
空想に耽ったりする

まぶたの内側に映った物語ストーリー
そんなカケラを集めました

けれどわたしは目を閉じると
すぐに眠ってしまうんです
復習も予習もあやふやに
反省も準備もそこそこに
ころんと落ちてしまいます

物足りなかったらごめんなさい
前後は みなさんどうかご自由に…


***

『空はいかがですか』

あいにく星空の在庫がなくて…
以前から探し求めてはいるんですけど なかなか巡り会えていないんです。

なにぶん とびっきりのナチュラル素材、いいものに出会えるかどうかは これもご縁というか タイミングというか…
それにたとえ出会えたとしても、うまく手に入れられるかどうか、これがまたとても難しいのです。

空気の澄んだ 静かな場所のきれいなものをと思うのですけど、今は仕入れにも行けなくて もどかしいところです。

ステキな星空や 楽しい景色が入りましたらまたご案内いたしますね。

人がなぜ空に惹かれるのかってね、どこか似ているからかもしれないですね。
笑ったり怒ったり泣いたりしてね。ころころせわしないですね。

ほら雲行きがちょっとあやしくなってきましたよ。
ひと雨くるかもしれません、お気をつけて。

またどうぞいつでもお立ち寄りくださいね。
扉を開けてお待ちしています。
お帰りになるまで 穏やかな空でありますように。

ちるnote『ぼんやりのおともに空はいかがですか 〜photo SKY〜』より


『雨の散歩道』

雨音が急に小さくなって 街はリズムを失うとシンと静まりかえります
空が明るくなってくると 転調の合図のような小鳥の高音が 楽しさを添えます

傘をずらして空を見ました
太陽の在処ありかを あの雲の向こう側に見つけました

傘を肩にもたせかけ、くるんくるんと回したら
短い横断歩道の向こう側の小さなボクも
閉じてた傘を開いて真似をしました
すれ違いざま にっこりすると
うっかり反射してしまったみたいに
真顔で無言のバイバイをひとつ返してくれました

ちるnote『雨と花とおいなりさん』より


『はんぶんこ はんぶんこ』


「だっこ だっこー」
「みぃちゃんも だっこー」

じゅんばんね、ひとりずつ。

「やだやだー」
「まてないー」

ふたりいちどには だっこできないな。

「だっこしてぇーー」
「ねぇはやくぅーー」

4本の手が まっすぐに伸びてきてせがまれる
小さくなってふたりをいっしょに両手でくるむ
はぐはぐと抱きしめて ふりふり揺らす

「きゃははははは」
「もっともっとー」

ほかほかとあたたかくなる
ふんわり揺れて歌をうたう
かわいい声も重なった

いっぺんにだっこはできないけれど
いっしょにおててならつなげるよ

両腕を伸ばしてみると
ふたりのかわいい手が
ひとつずつ くっついてきた

ゆっちゃんがみぃちゃんの余った手をとって
小さな輪になった
どちらからともなく歌がはじまり
そこに声を重ねてみると
ゆっくりとその輪は回りはじめた

まわりのみんなも笑ってる
ほらみんなもこっちへおいで
みんなでいっしょに手をつなごう
みんなでいっしょに歌をうたおう

輪っかは少しずつ大きくなると
それだけ歌も笑顔も大きくなる

「たのしいね」
「たのしいね」

はんぶんこ はんぶんこ
それをまたはんぶんこしていく
きっと大切なものは増えていくよ

ちるnote『はんぶんこ はんぶんこ』より


『いちごとおかあさん』

あ、そうだそうだ…
ちょっとわざとらしく振り向いて
かあさんに ちょんと冠をかぶせた
なんか とてもよく似合ってるよ
かあさんは真っ赤になって
照れくさそうに肩をすぼめると
ありがとっ て言って笑った
今日くらいは僕のほうが先に
ありがとうって 言いたかったのにさ

ちるnote『いちごとおかあさん』より


『思いがかさなる』

真っ昼間だというのに
部屋が暗くなっていく
突然の雷雨に注意って
天気予報で言ってたな

カーテンを全開にした

「ねぇ」と呼びかける声
続くことばとメロディに
わたしはふと手をとめて
ただじっと耳を澄ました

魔法にかけられたみたいに
思考回路がぷつんと途切れ
そこにしずかに突っ立って
そのままじっと聴いていた
よくわからないまま涙がこぼれた

「強く手を握ろう…」
そういってその歌は静かに終わると
パーソナリティの明るい声に紛れた
雨はあっという間に土砂降りになった

雷雨が怖いくらいに窓を叩いて
わたしは黙ってそれを見ていた

ちるnote『思いがかさなる〜自分と自分〜』より


『ゆうれいなおとうちゃん』

ねぇ、おとうちゃんはゆうれいなの?

そう、おとうちゃんはゆうれいなんだ

おとうちゃんはいつもどこにいるの?
まいにちあえないの?
ボク まいにちまってるんだよ

空のずっと遠く… ほら、あのお月さまの
もっともっとむこうにいるんだ

おとうちゃんはひとりぼっちでさみしくないの?
たいくつじゃないの?

ちっともさみしくなんかないぞ
お月さまも お星さまも みーんな友達なんだ
それに、おまえやおかあちゃんのことを守るのにいつも大忙しだ

あっ、ながれぼしだよ!

あぁ、もうそろそろおとうちゃんは またお空に帰らなくちゃいけない

またあえる? またきてくれる?

もちろんさ、あんまりイタズラばかりして おかあちゃんをこまらせるんじゃないぞ
おとうちゃんはいつでも空から見てるんだからな

ながれぼしが またもうひとつながれると
おとうちゃんはきえたんだ

ちるnote『ゆうれいなおとうちゃん』より


『バイバイ マイマイ』

ねぇ、どこ行きたい?

ホッと安心できるような
自然の豊かなところかな

静かでのんびりできるところがいいね
わたしたち、人一倍のんびり屋だしね

水は好きなんだけど、泳げないな…

わたしも 水辺や海が大好きだけど
いつもぼんやり眺めてるだけ
ザブンと潜ってヒラヒラと泳げたりしたら
きっと気持ちいいんだろうね

空も好きなんだけど、飛べないし…

わたしもね、空が大好きなんだけど
いつもぼんやり眺めてるだけ
自由に飛べる翼があったりしたら
きれいな空を飛んでみたい

海も空も 夢や憧れみたいに眺めてるのが
きっとわたしたちには ちょうどいいんだよ

都会を離れて 空気のきれいなところへ行こう
どこか水辺にたたずんで
澄んだ空を眺めよう
きれいな星が見られたら
翌朝そこで お別れしよう

ちるnote『続・カタツムリ〜バイバイマイマイ〜』より


『Smile』

つぎに会ったときの
合言葉を決めておこうよ
なににしようか
そうだ… Smile
せーので言うから
おぼえていてね

ちるnote『合言葉は「Smile」』より


『Smile again』

いつのまにか季節が変わってた
いつのまにか景色が変わってた

夏が秋に 秋が冬になってくように
時間がたてばそうなっていくものなんだよって
大袈裟なことでも特別なことでもないよっていうみたいに
もうずっと前から決まってたことみたいに
そこにあったものが静かになくなっていった

突然ぽっかりと空いた場所は
思ってたよりも大きかったんだなぁって
なくなってから気づく

つらいというより
悲しいというより
なんていうか
妙にだだっ広くて
ひっそりとして
ひんやりしてて
それが “さみしい” ってことなんだなって気づく

そんな場所にもそのうちに
何かが芽吹いたりするかな
あたらしく何かが生まれて
またあたたかくなるのかな
冬が春になっていくみたいに

うん たぶんきっとまたね
けれど おんなじ春は二度とこない
だから今を大切にしたい

笑ってますか
たとえ遠く離れていても
たとえ会えなかったとしても
いつでも笑っててほしくて
わたしも一緒に笑いたくて

おぼえてる?
合言葉は 「 Smile 」

早くあったかくなるといいな
うんとあったかくなるといいね

ちるnote『スタート2023☆Smile again』より


『うれし たのし ハンバーグ』

ねぇねぇ、撮影のとき『はい チーズ!』のかわりに『ハンバーグ!』って言ってみない?
ピースサインや指ハートのかわりに
ガッツポーズやグッドポーズにしてさ
きっとスタミナ満点、元気いっぱいの写真になると思うの

え、おかしい?
そんなことないって、楽しいって
恥ずかしがらないで大丈夫
みんな一緒だから 平気平気
きっと笑顔が溢れ出すよ、 肉汁みたいに
もしよかったら入って入ってー

よし、一枚 ガッツポーズで揃えよっか
記念だからね、がっつりいってよー
ほらほら いくよー
せーのっ

『ハンバーグーー!』

ちるnote『嬉しい日にはハンバーグを』より


『春へ』

ねぇ、このままじっとこうしているの?
いったいいつまでここにいればいいの?
もう出て行ったっていいでしょう?

あれから随分経った気がする
冷たさや淋しさも我慢してきて
けっこう辛いのこらえていたし
どうにかしたいと思っていたし
何も言わずに ずっと待ってた

目をつむって ただ眠ってたんじゃない
この時のために準備してきた
今もこうして確かに生きてる
だからもう 心配なんてしなくていいよ

さぁ、春へ飛び出すよ

ちるnote『飛び出せ、春』より


『かさとおとうさん』

ほらだから言ったのに
午後から雨になるって
ろくに言うことを聞きやしない

せっかくの休みだっていうのに
たいした雨でもないというのに
こんなときばっかりだ
まぁ 親父なんてそんなもんか
そうだ ついでに…

『こどもたちが傘忘れたって  駅でピックアップするからそっちにも寄るよ  着いたら連絡する』 ポチッ
『17時北口に集合  遅れたヤツはしらんぞ』 ポチッ

ピコン  『 ありがと 』
ピコン  『 サスガ! 』
ピコン  『 カッコイイ!』
ピコン  『 おとうさん だいすき!』

なんだよ こんなときばっかり…

帰りはついでに
ちょっとドライブでもしよう
あじさいロードを
少しスピードをゆるめて走ろう
雨のついでに
甘いついでに

ちるnote『かさとおとうさん』より


『夏がきた』

最高気温 37.5℃

冷えた地下鉄に乗り込むと 汗が引いた
さっきまで海へ行きたいと思っていたけど
そんな気持ちも少し冷めた

このごろは電車内でも マスクの人はずいぶんと少なくなった
そんな中 目の前のサラリーマンらしきスーツの人は マスクを隙間なくきっちりとつけ、ワイシャツの首元やネクタイにもゆるみがない
膝に寝かせた鞄の上に ノートパソコンを置いて、画面を睨み ひたすらにパチパチと操作していた
どこにも隙間がなかった

その人は時々 マスクの中で行き場のないため息をつく
大丈夫ですか…
窓ガラスに映る後ろ姿へ だまって問いかける
もう少しゆるめても…
余計なお世話も投げかけた

パソコンを荒く閉じて鞄につっこむと 忙しなく立ち上がり、前に立つわたしに すみませんと言うように微かに頭を下げて、隙間をすり抜けるようにして 暑さへと飛び出して行った
真面目に汗をにじませていた

この夏はじめての蝉の声を聞いた
産声を聞くみたいに 毎年ハッとなる
暑さを助長するみたいな声だけど
どこか少し安心する
ようやく自分の息ができたようで

日が暮れても 窮屈な都会の街は
湿気と熱がこもったままだった
あの人はマスクをはずし、
ネクタイをゆるめて、
大きく息をしただろうか
シャワーを浴びて、
冷えたビールでも流し込んで、
今日頑張ったぶんだけ 笑えてるといい

ちるnote『暑中お見舞い申し上げます』より


『おかあちゃんもゆうれいちゃん』

おとうちゃん おかえり
おかあちゃんは? 一緒じゃないの?

あぁ、先に行っててって
途中に花畑があったもんだから
ほら いつもの寄り道

そっか、相変わらずだね
おとうちゃん なんだかイキイキしてるよ
やっぱりおかあちゃんと一緒にいるからかな

そうか? また毎日叱られてばっかりだ
おまえはひとりで淋しくないか?
まさかこんなに早くおかあちゃんがこっちに来るなんて驚いたよ
姿が見えなくなったと思ったら すぐ後ろにいるもんだから

うん、急に何かを思い出したみたいに  “おとうちゃんのところに行かなくちゃ” って
“しっかりごはん食べて、戸締りするのよ” って
それだけ言って 行っちゃったんだ
でも大丈夫だよ、今はふたりで守ってくれてるんだよね
ゆうれいのおかあちゃんにも会えるの楽しみにしてたんだ

おまえ、大きくなったなぁ
それにしても おかあちゃん遅いな
方向音痴も相変わらずだし
迷子になってやしないだろうか

流れ星がひとつ流れると
おかあちゃんが現れたんだ
頭に草花のティアラをちょんっとのせて
両手いっぱいに花を抱えたおかあちゃんが
ただいま って微笑むと
キラキラとして
ボクはちょっと 泣いたんだ

ちるnote『おかあちゃんもゆうれいちゃん〜流星〜』より


『12月の南風』

12月の遊歩道には 花はない
あちらからきた散歩の仔犬が
すれ違いざまにこちらを見て
まるで魔法でもかけるように
フリフリと小さな尾を振ると
花の香りがするような南風が
大きくひとつふわっと吹いた

ちるnote『Thank you for coming』より


『ナンジャモンジャの木の下で』

あの時一瞬に通り過ぎた
あの場所を求めて歩いた
あの木が 気になっていた

人けのない静かな公園の
その一本の その木にだけ
ふわふわな白が咲いていた

まるで雪が降り積もったようで
その木だけがなんだか涼しげで
のどが渇いてたことに気づいた

帰ってアイスコーヒーを淹れよう
春が夏になってゆく

ちるnote『初夏、アイスコーヒーはじめました』より


『だって だいすきなんだもん』

もうおしまいだなんて言わないで
さみしいよ
おしまいになんてしたくない
まだもう少し
あともう少し
そばにいてほしかった

ちるnote『大好きなものを頬張って』より




物語にしては短すぎるものや、ただの日記なものも多々ありますけれど…
空想も日常も“ストーリー”ということで
どうか大目にみてください

物語
文学形態のひとつ
作者の見聞や想像をもとに、人物・事件について語る形式で叙述した散文の文学作品


story
《複》stories
[US] stɔ́ri | [UK] stɔ́ːri

【1. 名】
1. 物語、話〈 ◆事実でも架空でもよい〉
2. 文学作品の物語、短編小説
3. 小説や映画などの筋、ストーリー〈◆同story line〉
4. 事実として述べる言い分、申し立て
5. 〈話〉うそ、作り事
6. ニュース記事〈◆同news story〉
7. ニュース・新聞などのネタ
8. 〔昔から伝わる〕恋愛物語

【2. 名】
1. 建物の高さを表す階 〈◆同〈英〉storey〉
2. 〔ある階の全ての〕部屋 〈◆同〈英〉storey〉


わたしには、大きな物語は描けません
経験したことのない感情も描くことができません
短歌や詩と同様に、物語も日常の延長線上にあります

カケラはわたしの一部です

あとはみなさんの豊かな経験と想像力に心を委ねます
それぞれにイメージを、物語を、膨らませていただけたら嬉しいです
そう、一緒に作品をつくるような感じで




無事に一日を終える夜
今日も生きたなって思います

心と体を休めるそんな時間
雑音もいやなこともなくして
何か楽しいことを浮かべたら
いい夢が見られるでしょうか

朝 目が覚めると
生きてたなって思います

もし穏やかな休日の朝なら
もう一度 瞼を閉じます
さっきの夢を反芻したり
今日の予定を考えたり
また何か空想したりして

そんなふうに微睡まどろんでると
時々 二度寝してしまいます
ころ…ん…

『カケラ』

ブリキの缶をゆすると
ガチャガチャと重い音がした
いつの間にかこんなに貯まってた

なんにもわかってないんだよ
わたしに黙って捨てようとしてさ
カケラなんか集めて何が楽しいのって

取り返して 飛び出してきちゃった
このカケラは がらくたなんかじゃない
大事にしてきたわたしの宝物なんだから

シーグラス…  ほらきれいでしょう
淡くて小さなカケラを太陽にかざしても
その内側の気泡は静かで 少しも揺るがない

このカケラにも 物語があるんだから
このカケラには思い出があるんだから
捨てたりなんかしない

ひとつ ひとつ 取り出して並べていく
そのずっとむこうには あの海がある

ちるnote『物語のカケラ』


今週も短歌は ♡のなかへ…

どうぞよい一日を、よい一週間を


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