医学部受験生は地理と倫理政経のどちらを選択すべきなのか【共通テスト社会】

国公立大学の医学部受験生は共通テスト社会でどの科目を選択するのが最適なのでしょうか。

日本史と世界史は暗記量が膨大であるため、理系にとってコストパフォーマンスの良い選択肢ではありません。「地理総合,地理探究」「公共,倫理」「公共,政治・経済」の3つが現実的な選択肢であるということになります。

地理と公民系科目のどちらを選択すべきかについては、医学部専門の予備校講師の方々の間でも議論が分かれているようです。

筆者は地理専門の講師ですが、「医学部受験者全員が地理を選択すべき」とは断言できないと考えています。
この記事ではポジショントークは一旦抜きにして、地理と公民系科目のどちらを医学部受験生が選択すべきか、複数の観点から比較していきます。


地理と倫理政経の比較

①受験者数

残念ながら「医学部受験生の選択科目」の割合のデータはありません。
ここでは共通テストで社会を1科目選択した受験者のデータを用いて受験者数を比較します。

以上のように2024年現在、地理の受験者数は公民科目の合計の受験者数を大きく上回っています。

受験者数が多いほどよりよい教材が世の中に出回っている場合も多いですし、難化したときのダメージも受けにくいので、地理の方がオススメしやすい科目ということになります。

②過去の平均点

上に示したのは共通テストが始まってからの、地理Bと公民3科目の4年間の平均点のデータです。

このデータからは地理Bの最も平均点が高く、安定しているといえます。

2025年度からは公民科目の再編成が行われ、従来の「倫理」「政治・経済」「倫理,政治・経済」「現代社会」の4科目から「公共,倫理」と「公共,政治・経済」の2科目となります。
再編後の数年間の平均点は不安定なものになる可能性があります。

過去の平均点、試験形式の変更という2つの観点からは地理の方がオススメしやすい科目ということになります。

③高得点の目指しやすさ

国公立大学の医学部受験をされる方は、社会科目に関しても
「最低でも8割、できれば9割」
という得点の目標を立てられているのではないでしょうか。


上に示したのが地理と公民科目の勉強時間と点数の上がり方のイメージ図です。

公民は「努力が得点の向上に直結する科目である」といえます。
一問一答をコツコツと回し続け、知識の穴を少なくしていけば確実に点数をアップさせることができます。

それに対して地理はどうでしょうか。

まず、全くの初学者に関しては他の科目より点数が取りやすいと言えます。
身の回りの事象に関連する問題や、前提知識がなくても推理で正解に辿り着ける問題が多いからです。


2015年度センター試験地理B本試験より

上で示したのが前提知識が不要である問題の例です。
積雪量が多い地域に住んでいる方なら非常に身近な話題ですし、そうでなくても推理することで容易に正答にたどり着くことができます。(正解は1番)。

しかし、地理は努力が点数が結びつきにくい科目でもあります。

地理の試験では常に初見の図表や統計への対応が求められます。
身につけた知識がそのまま点数に結びつくとは限らず、「その知識をどう使うか」という観点が必要になります。

また、地理は受験とは直接関係のないバックグラウンドの知識、いわゆる「教養」と呼ばれるものが点数に直結する科目でもあります。
ほとんど勉強していない人が悠々と8割を取っている一方で、コツコツ努力していても6割台を彷徨っている人も多いというのが共通テスト地理の実情です。

筆者は正しい努力をすれば地理で80点を取ることは誰でもできると考えていますが、90点を取る難易度はバックグラウンドの知識や論理的思考力によって大きく異なるとも思います。

90点を確実に目指したい人には「公共,倫理」や「公共,倫理政経」の方がオススメできるということになります。

④面白さ

「地理の勉強の方が公民より面白い」という方は多いです。

決して公民の悪口を言いたいわけではありません。
社会科目は理系の方にとってつまらなくて当たり前です。「暗記したことがそのまま問われる」のが社会科目の基本だからです。

地理は他の社会科目と一線を画します。
地理という科目は、社会科目の中では最も理系的な思考が活かしやすい科目だと思います。

基本的な知識を組み合わせて、新たな統計を読み解くプロセスが数学に似ているという人もいます。
地理的な事象に共通する性質を見つけていくプロセスが科学に似ているという人もいます。

すべての人に当てはまるわけではありませんが、「工夫して問題を解くのが好きだ」「論理的な思考を巡らせるのが楽しい」「単純な暗記はつまらないからやりたくない」という方には地理はオススメできる科目です。また、これらは医学部受験生の方には多く当てはまる特徴なのではないかと思います。

結論、どちらを選択すべきなのか


「コツコツ努力すれば9割を目指しやすい」
というのが公民系科目の強み
「暗記量が少なく、論理的思考力を活かしやすい」
というのが地理の強み

以上がここまでの要約になります。

つまり地理側から見れば、「9割を目指しにくい」という点が最大の懸念点であるということになります。

さて、医学部受験生は共通テスト社会で9割を目指すべきなのでしょうか?

もちろん、9割の得点があるに越したことはありません。1点でも多く社会で得点しておきたいでしょう。
しかし、そのタイムパフォーマンスはどうでしょうか?

「公共,倫理」や「公共,政治経済」は他の社会科目に比べれば圧倒的に90点を目指しやすいですが、容易ではありません。
社会科目で10点を上げることに必要な時間を、数学や、英語や、化学に費やした方が時間を得点に変換する効率が絶対によいと断言できます。

社会に二次試験はありません。共通テスト社会は80点で「耐える」という発想で、勉強時間を最小限にすることを考えるべきである、そのために地理を選択するのは最適な選択肢である、というのが地理専門講師としての筆者の結論です。

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