無拍子(19)
【19 胡椒山椒の木に咲いている花ペンギン】
蜂に背中をつままれていて僕らは空中を飛んでいる。
一人につき二匹の蜂が頑張ってくれている。
でもそれは僕らの首元をぎゅっと締め付けらてて首がしまる
もちろん苦しいんだけど、イースカーもピギーも全然苦しんでいる様子には見えなかった。
飛んでいる最中イースカーに
「首、苦しくない?」って確認を試みたんだけど
蜂たちのハーモニーが
ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶって楽しそうに口ずさむ
その音でイースカーには僕の声は届かなかった。
ただ、背中の蜂たちには聞こえたみたいで
「苦しいですか*ぶぶぶぶぶ*」と聞いてくれた。
それに首を縦に振ると
「ちょっと待ってください*」って言うと、すぐ横を護衛のように飛んでいた二匹の蜂に
「こちら*きつい様だので手伝って*」と声をかけてくれた
二匹の蜂はすぐに手を出して僕の足を抱えてくれたんだけど、そのおかげで逆さまになって空中を漂った。
しばらく逆さまのまま飛んでいると、あの雷で出来た木のところへたどり着く。
蜂たちはセバ教授に
「一休みを*」
雷の木はのたもとにみんなをゆっくり下した。
雷の木はあの時より大きく光り輝いている。
「久しぶりのお客さんだ。最近は素通りするだけの人が多くてね。少しバチバチするけどいいかい」と言って、お茶をふるまってくれた。
そのお茶は凄く苦かったのだけど、妙に刺激的な味がしてとてもおいしかった。
「何で入れたお茶なの?」雷の木に聞くと、雷で出来た大きな木はニッコリ笑って
「ふぁそらしどの大名物[胡椒山椒の木の実]だよ」って教えてくれた。
そんな話をしている隣で座っているイースカーは顔を曇らせている
「どうしたのイースカー?」と尋ねると、
「ふう」とため息を一つついてから
「おいお前聞いてくれよう、お前は知らないんだなよう」と、間をおいてじっくり考えこんでしまった。
考え込んだ後で、うんうんと上下に首を振ったかと思うと
「おいお前聞いてくれよう。実はオレはお前と同じ人間人の子供だったんだよう」
この世界に来てから驚くことだらけだけど、さすがにこの時ばかりは
「ええっ」って声をあげてしまった。
「でもでも、君はペンギンだよね。それならさ、この間この雷で出来ている大きな木が言っていた[ふぁそらしど]の街が故郷だって言うのはどういうことなの?」
つい僕はイースカーを責めるようにまくし立ててしまった。
花ペンギンのイースカーは少し混乱して言葉が出なくなってしまったようだった。
すると端っこに座っていた黒い影のセバ教授が、出てこないイースカーの言葉を引き継いだ。
「ウ、この子はね。ウ、確かに人間人の子供だったんだ。ウ、だけどね。ウ、ふぁそらしどの[胡椒山椒の木]に咲いていた花ペンギンに触ってしまったのさ。ウ、それでその花に取り込まれてしまったんだよ。ウ、この世界はそういう場所なんだ。ウ、イースカーは裸足だったので自由になることができたんだ。ウ、それで星について勉強をすれば何とか治るのではないかと思った彼は。ウ、私のところにやって来たんだよ。ウ、それで3年学んでいたんだ。ウ、そうしているうちに私のところの星学でドルトムント伯爵のところに何らかのヒントがあるって浮かんできてね。ウ、それでイースカーはそこへ出かけて行ったのさ」
その話を理解するのに、何度か質問をし何度も答えてもらっている間
はだしの花ペンギンのイースカーも、イルカの雛のピギーも僕も涙がこぼれていた。