無拍子(5)

【5 ロックンロールバンドの名前はカジノフォーリーでも意味は?】

マンホールのフタ明け作戦に大失敗した僕は、早速ピンクのバラの花束を持ったトマトにさっきのマグロの頭の魚屋のおばさんが言っていた話をした

するとトマトは、

「あなた知らなかったの?」って不思議そうな顔をした。

ピンクのバラの花束はとてもトマトに似合っていて、僕は何も教えてもらえなかったことに腹を立てるのを忘れてしまった。

そんな時ふと遠くを見ると、なんだか騒がしいやつがこちらを気にしながらギターを片手にやってきた

その様子を見た僕は、この世界にやってきて初めてのまともな登場シーンだなと笑顔で向かい入れることができた。

彼は凄く騒がしいやつだったけど、カンサイジンだって言ってるからしょうがないのだろうなって僕は思った。

「ギターで何を弾くんだい」と尋ねると

「当然ロックンロールだよ」って格好をつけながら教えてくれた。

その受け答えを聞いてあらためて[答え]を聞いてはいけないのではなくて、目的を持ってはいけないのだなって僕の心が理解した。

次の瞬間ギターを片手に持っていた騒がしい彼はいきなり即興で演奏を始めた。

ギターの演奏を目の前にして、僕もトマトもあっけにとられていると、僕とトマトがいきなりフワリフワリと宙に浮く

「わっわっ」って僕の声が出たところでギターの音がいきなり止んだ。

僕とトマトは地面に落っこちる。

そんなに高く浮いていたわけではなかったので、そんなに痛くはなかったんだけど、おしりから落ちたのでジンジン痛みはあったのさ

僕とトマトが同じしぐさでおしりをさすっていると、ギターを持った騒がしいやつの名前がトマトの時のように太い筆で頭の中に書き込まれた。

「カジノフォーリーって名前なの?」

すると彼は

「そうはいっても、もうお前たちもカジノフォーリーやって」

「カジノフォーリー?それは何なの?」

「自分の世界に帰ったらしらべてみるんやな」

って言うなり、そこにあったマンホールのフタに飛び乗った。

僕らがありったけの力で開けようとしていたマンホールのフタは彼が乗るなりコインがくるくる回るように回りだす、すると彼はその中にするりと入ってしまった。

何回か回った後マンホールのフタはピタリと止まってしまう

そしてそのフタは彼がしたようなことをしても、二度と開くようなことはなかった。

僕はさっきのカジノフォーリーの言葉を胸に思い出した。

そうしたら、この世界からいつかは帰らなくちゃいけないのだなって思いが僕の心をキュンとさせた。




いいなと思ったら応援しよう!

英(はな)
ひとまずストックがなくなりましたので これにて少しお休みいたします。 また書き貯まったら帰ってきます。 ぜひ他の物語も読んでもらえると嬉しいです。 よろしくお願いいたします。 わんわん