無拍子(13)
【13 イースカーの独り言。僕の空き缶】
はだしのペンギンのイースカーは僕のスニーカーにくっついた空き缶を見つけると、
「いかすーよう」だとか「最高ねーよう」だとか「カッコイイよう」と繰り返し言っている
少しうれしくなった僕は得意げに
「硬いところを歩くといい音がするんだよ」
って、教えてあげたんだけど、それについては全く興味がないのか、目ヤニをぐりぐりとっていた。
「ところで、イースカーの畑には[緑山猫]っているの?」って聞いてみると、大きな黄色いくちばしをガバッと開けて
「畑にいる[緑山猫]う?」不思議そうに言う
そのあと僕は[緑山猫]の講習会を1時間半にわたってすることとなった。
その1時間半もの間、彼に何度も同じことを説明していても、ワンピラポの時のようにはいかず時間はどんどん過ぎていった。
これももちろん必然なのだろうと思い込んでいるところに
「お前は[神林のヤギの群れ]を見たことはあるかよう?」って聞いてきた。
彼の話ではそれは物凄く奇麗な物なのだそうだ。
では実際にそれはどういったものなの?
って聞いてみると
イースカーは
「う~んよう」とか「え~んよう」とか説明しようとしているんだけど、どうにもいい言葉が思いつかないみたいだったんだけど、おしまいには
「おいお前聞いてくれよう。うまく説明できるようになったら言ってくれ」って、僕に言ってきたんだ。
そういわれてもとは思ったんだけど、彼はあまり気にしていない様子だったので必然も大変だなって思ったよ
そのあとイースカーとは沢山話をしたのだけれど、彼が何かを説明するようなことになると、度々「お前聞いてくれよう。うまく説明できるようになったら言ってくれ」と言っていた。
それでもたまに時間が少し過ぎた後彼がいい言葉を見つけると
「おいお前聞いてくれよう」って言った後きまって
とても素敵な言葉を使って僕に理解させてくれた。
ところで僕らが向かっている街はどんなの所なんだろう?って聞いてみると半日たった頃突然に
「おいお前聞いてくれよう。これから行くところには、氷の角を頭に立てている人間人と、見事なくらいに立派な氷の角を持つトナカイたちの住む街なんだよう。街中ではところどころに光るカタツムリも見られるし、なんたって夏に降る雪たら輝く街並みって言うのかな?とても素晴らしいところなんだよう」って教えてくれた。
風船は1日半をかけてその街にたどり着いたのだけど、イースカーの指示している方向に風船はうまく飛ばず、かなりな回り道をしなければならなかった。
でも、イースカーの弁護をするわけではないんだけど、僕らの飛んでいく方角のすべてを星だけに頼ってしまったのだ。
目印にしていた星たち(東の一群をマーベラスと言うらしい)の気性は凄く悪いものだったのだ。
例えば今まで目印にしていたウルィティング星雲の2番星なんかは、わざと3.7度くらい位置を南にずらしたりしていたし、モゥシング座の3等星なんかピリルの衛星とその場所を交換こなんかしてたんだ。
そういった事が起こるたびに
「なぁお前聞いてくれよう。どうやらお前は信じないかもしれないがよう。そこらの星たちはお前のことをマークしているよう」などと、言ってイースカーは僕に責任をなすりつけたりしたんだ。
かといって僕は特に悪い気もしなかったんだけどね、昔イースカーが星の学者の手伝いをしていたって言う話の方が面白かったから
こうして僕らは
[ハチの308]って街にたどり着いた。