無拍子(8)

【8 そこにあった月こそ本物で、やっぱり本物はいいなぁと今日は思えた】

天空(あまぞら)と言われる透明の階段をグングン上っていく

途中何度か休憩を挟んで

休憩をはさむたびにワンピラポに[緑山猫]の説明をしていたのだけど、とうとう雲のところまでたどり着いてしまった。

その最中もなんだかすごくて、あっちこっちの雲にテレビがいっぱい引っかかっていた。

よくこれだけのものが地上に落っこちないものだなって思っているうちに雲の上の部分に顔が出た。

雲の上にはきらびやかな宇宙が広がっていた。

宇宙に出れば夜がいるのかと思っていたんだけど、やはりそこには夜の姿はなく

あの、ギラギラしていてへらへらした太陽が手の届くくらいのすぐそばに居ただけだったんだ。

ワンピラポは階段からポンと雲の上に飛び降りると、雲の具合を確かめているようにウンウン言いながら歩き回り

たまに引っかかっているテレビを蹴っ飛ばす。

一通り調べ終わったのか僕らに手招きをしながら

「ここらは、荒らされていないから大丈夫ぽぬ」

僕等はその手招きに応じながらも、おそるおそる雲の上に足を踏み出した。

踏み出してみるとそこは御影石のようにカチカチに硬くて、とてもじゃないが雲の上だとは思えない場所だった。

後でワンピラポに聞いた話では、ドルトムント伯爵の妹で竜のアンズが時々雲を食べてしまって雲が再生してすぐは、どうしても薄くて柔らかい雲になってしまうそうだ。

雲の再生が始まって2週間もたてば、雲は再び御影石のように硬くてテレビがいっぱい乗っても大丈夫になるのだそうだ。

ワンピラポは足元を確かめるように、僕らの行く先をフンフン鼻を鳴らしながら行く

30分歩き詰めて、たまらずワンピラポに問いかけた。

「ねぇワンピラポ。雲の上に落ちていたり、引っかかっているあのテレビは何なんだい?」

ワンピラポはフフッと声に出して笑うと

「あれについては、私が説明するより実際に見てもらった方がわかりやすいぽぬ。正直私の説明やら解説やらを聞いたって、貴様の目で見たもの感じたものとはまるで違うからぽぬ」

さっきからそこら中に散らかっているテレビの質問の答えと思えなかったので、も一度同じ質問を問いかけようとしたとき

雲の地平線からフフフと月が笑いながらあがってきた。

当然のように月はラディッシュを左手に携えている。

もちろん荒野で見た[MOON]と書いてあった月とは雲泥の差

そして僕らは月とすれ違う時、照れくさかったので

「ごきげんよう」と挨拶すると

月もなんとなく照れくさそうに

「ごきげんよう」と言ってくれた。






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英(はな)
ひとまずストックがなくなりましたので これにて少しお休みいたします。 また書き貯まったら帰ってきます。 ぜひ他の物語も読んでもらえると嬉しいです。 よろしくお願いいたします。 わんわん