無拍子(11)
【11 目的が生まれた日。トマトの独白】
食事を一通りすますと僕らは伯爵のもとに呼ばれた。
僕らが伯爵の部屋につくと、まずそこの椅子に座るよう言われドルトムント伯爵に向き合うように素直にしたがった。
「私はどうしてもあなたに会いたかったのです」
トマトは椅子に座るなりしゃべり始めた
「なぜなら私はあの工場で働きたいからなのです」
ドルトムント伯爵「うーん」と一つ唸ると目を閉じた。
何かを思案しているようなドルトムント伯爵は一言も発することはなかったただ唸り声だけが部屋の中に響く。
少し時間が過ぎる、と急に
「良しっ」と言うとドルトムント伯爵は先を続けた
「本当なら[目的をもってここに来てはいけない]ってのをお前さんは知っていてここにやってきたのよね、それって言うのがどういった事になるかも知ったうえであなたはここにやってきたのよね、そしてそれを私に伝えることでどうなるかもわからないでもなくここにやってきたのよね」
頭の中で思っていたことを一息に吐き出すと
「ん、ん、ん」と咳ばらいを3つ
テーブルの上に載っているオレンジ色の飲み物を一口
僕もつられて一口
「トマト。お前は彼とこのイルカの雛を親のところまで届けておくれ。それをまっとうに務めたとて、お前を工場で働かせるかどうかわ解らないのだよ」
そこまで言ってトマトの目の奥をじっと見つめ
「さあどうする?」
トマトは小首をちょっとかしげて
「行きません」と即答した。
もちろん僕は驚いた。
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