無拍子(16)

【16 ニイクラたちの墓場でレッツダンス、そうして禁断の木の実】

ニイクラたちの墓場を進んでもそこは墓場だけだった。

向かいの大陸からは段差だか角度だか緯度の都合だかでこの様子をうかがうことができなかった。

その様に僕らはびっくりしていた(イースカーを除いてね)

何せ、そこは墓場なんだけどそこいら中でクリスマスの電飾やらLEDの電気やら電球やらの光たちが、まるで僕らを歓迎しているかのようにポンリポンリと音を立てて文字通り踊っていたんだもの

僕はたまらず

「こんな素晴らしい場所があるのだね」と誰に言うでもなくつぶやく

するとイースカーはビックリした顔をして

「おいお前聞いてくれよう、今すぐにポケットの風船を出すんだよう!!」

墓場のモニュメントの間で、光たちは踊っていたんだけど

僕のつぶやきを合図に光はモニュメントを揺り起こし始めたんだ

すると、モニュメントたちはその姿をみるみるニイクラに変えていく

ニイクラたちの頭の携帯電話に光たちが飛び込み始めると

又あの時のように

『どこかの劇団が来たよ』だとか『いやいや舞踏団のあつまりだよ』『バレレ団の登場だ』と音楽にした言葉の演奏をし始めている。

僕は慌ててポケットの中から風船を取り出すといつものように、空気を吹き入れた。

パンパンに膨れた風船にイースカーは真っ先に飛び込んだ。

僕もそのあとに続いて飛び乗るときに外のニイクラたちが輪を作り始めるのがうかがえた

モニュメントだった何万のニイクラたちは、サルサのリズム踊りだしメヒカーナなダンスを使って、ワカモレの音を口に出していた。

まるで僕らを誘うように。

イルカの雛は僕の頭の上から飛び降りて、風船も後にしてニイクラの踊りの渦の中に飛び込んだ。

僕は慌てて、その後を追って風船を飛び出そうとしたとき

「おいお前聞きなさいよう、何度言ったらわかるんだよう!お前は星たちに目をつけられているんだよう!」

大きなイイスカーの声が僕の背中に突き刺さった。

僕は彼を見ると、彼はその黄色いくちばしをカパッと開ける

その口の中からイルカの雛のピギーがヒョイと飛び出した

「えっどうして!?ぶじだったの?」

僕が困惑していても、風船は黙ったままフワリフワリと空に飛び立っていく

上空に上がったところで、風船の薄いゴムでぼやかされてモニュメントだった何万の光たちとニイクラたちの、サルサのリズムの踊りとメヒカーナなダンスで、ワカモレの音を口に出しているようすは、僕の心を奪うのに持って来いの情景だった。

ニイクラの華やかな墓場がしばらくすると見えなくなる。

すると、その代わりの様に一本の光る木が目の前に出てきた。

そのあたりで風船はゆっくりと下がり始めた。

雷の木の前に降りた風船の中で、僕はイルカの雛のピギーに

「又、頭の上にお乗りなさいな」というやいなや彼女は

「もう大丈夫よ。一人で歩けますから」と顔に満面の笑みをたたえると、さっさと風船の外に出て行ってしまった。

イースカーはニイクラの墓場での出来事で、少し僕に腹を立てている様子だった。なんたって

「まったく…」「どうして…」「なんで…」

などとブツブツ「~よう」が聞こえないような声で言っていたからね。

だから僕はそれを、聞かなかったことにしてあげたんだ。

風船の外へ出て雷の木の前に行くとそこにはすでに、イルカの雛のピギーが居て

「ここらで休憩をしましょうよ」と雷の木に声をかけた。

すると雷の木は

「バチバチするけど大丈夫かい?」と答えた。

イースカーは大きな雷の木に

「おいお前聞いてくれ。みんな、ラディッシュを持っているから平気なんだよう」

「その声は、イースカーかい?」目をつむったままの雷の木は、声でイースカーの事がわかったみたい。

イースカーはめんどくさそうに首を振って喉を鳴らした。

「お前は街に行く気でここに来たのか?」雷の木はイースカーに問いかけた。

「おいお前聞いてくれよう、呪いのかけられた身についてはいつもの通りだよう、だから何もわかりゃしないよう」

雷で出来た大きな木は頭の上になっていた木の実を一つむしり取ってイースカーに放り投げると

「これを持っていけ、身内にあったら食べてみろ」

ピカピカの木の実を受け取ったイースカーは黙り込み、雷の木は、少しうすくなって、おしゃべりも薄くなってしまった。

その薄くなってしまった光の木も、とても奇麗だと思う









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英(はな)
ひとまずストックがなくなりましたので これにて少しお休みいたします。 また書き貯まったら帰ってきます。 ぜひ他の物語も読んでもらえると嬉しいです。 よろしくお願いいたします。 わんわん