無拍子(6)

【6 まことしやかにそれは起こったのだがトマトは平然としている】

カジノフォーリーと別れた僕らはまた黙々と歩きはじめた。

ここでちょっと説明すると、ここまでの間トマトは相変わらずコロコロ笑っているのです。

一度何かのひょうしで面白そうだねって言ってみたら

「幸せな時は笑っているものじゃない?」

って言い、またコロコロ笑っていた。

僕はそれもそうだよなって思った。


トコトコ歩いていると、何もないはずのところドカンと何かにぶつかって尻もちをついてしまった。

トマトは僕と並んで歩いていたはずなのに、その何かの前でピタッと立ち止まってピンクのバラの花束の香りをフンフン嗅いでいた。

僕は座ったまま呆然とその様子を眺めていると空の上のほうから階段を下りるようにして犬の格好をした…

いや、人間の格好をした犬が兵隊の格好をして降りてきた。

それまで笑っていたトマトはそれを見て

「ドルトムント伯爵の手のものだから大人しくしていてね」って僕にそっと教えてくれた。そしてまた顔には笑顔を取り戻していた。

その兵隊の格好をした犬は、空からの透明の階段をどこかの国の兵隊のように、足を高々と上げて「ひと~つひとつ」と大声で言いながら降りてくる

もちろん二足歩行だ。

空中の階段を下に下にとおりてくる

とうとう荒野の赤い大地にあと一段というところでトマトに向かって

「吐き気がするような顔だね」って犬の兵隊は言い放った。

僕は腹を立て「なんてことを言ってるのさ」って言葉を吐き出す前に

先にトマトが

「うん。ありがとう。ワンピラポ」ってほほを赤く染めている

その笑顔がすごくかわいらしく思えたんだ。

犬の兵隊は僕に向き直ると大きな声で

「言おうと思ったは、負け犬のやることアンズの招待でなければ貴様なんぞに天空(あまぞら)を渡らせるどころか見せることすらなかったものさ」

この言い草にいよいよもって、悔しくなった僕は犬の兵隊に「うるさい」って言ってやろうと思ったのさ

でもやめた。

すると、犬の兵隊はものすごく嫌な顔をしたんだけど僕はさっき飲み込んだ言葉の代わりに

「僕は人に言わせるとカジノフォーリーなのだそうだ」と伝えると

「早く言え!!」と大きな声で、ものすごく喜んでくれた。

何せちぎれんばかりに尻尾を振っていたからね。

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英(はな)
ひとまずストックがなくなりましたので これにて少しお休みいたします。 また書き貯まったら帰ってきます。 ぜひ他の物語も読んでもらえると嬉しいです。 よろしくお願いいたします。 わんわん