[ネタバレ]千歳くんはラムネ瓶のなか 二巻 感想
チラムネ二巻についての全般的感想と考察まとめ。テンション高めでお送ります。
例によってネタバレオンパレードですので、未読の方はご注意ください。
新・王道青春ラブコメここにあり!
もうね、考えうる限り最高のやり方でリア充側の青春ラブコメを描き切った、最高の二巻でした。
一巻における非リア成り上がりストーリーは本作の核ではないと予想していましたが、間違いなかったようで何よりです。
しかし、ガガガ公式ブログにて「エロのないエロゲ」と担当編集の方が表現してらっしゃいましたが、まさに至言。
往年エロゲの重量感、感情を揺れ動かされる展開、そして気づけば涙腺が。。。(ラストのあの挿絵はやばい)
まさかラノベで涙腺が死ぬとは思わなかったので、本当に胸熱でした。
最初、薄すぎる犯人と普通のストーリー展開に一瞬首を傾げましたが、その意味も自分なりにしっくりとくる解釈ができました。
転じて、そこから今後のチラムネの方向性も見えた気がします。そしてその先に待つであろう地獄絵図(愉悦並感)を幻視して、とにかく今後が楽しみで仕方がない。先生、毎月新刊出してください。
というわけで細かく所感をば。
示されたリア充側青春ラブコメの真髄
リア充は二巻でヒロイン個別ルートを全攻略する。そう、リア充ならね(白目)
いや確かに、二巻から各ヒロインの深堀りをやるのでは?と予想していましたが、まさか二巻でヒロインの個別ルートを攻略しきっちゃうとは思いませんでした。リア充怖い。
普通はヒロイン勢と少しづつ距離感を縮めていって、7巻とか8巻くらいで大イベントがあって、やっと一人が完落ちして。。。というのが真っ当な青春ラブコメの進め方のように思いますが、フルスペックリア充にそんな常識は通用しねぇ。
だってヒロインの好感度は一巻時点で個別ルート突入レベルまで極まった状態でスタートしてるわけですからね。そもそもルートに入るための共通パートなんてもんは、リア充には必要ないのです。
というか、もはや二巻からヒロイン個別ルートをがっつりやりたいがために主人公をリア充設定にしたという感まである。
それほど今巻は割り切った構成に感じました。
薄すぎるストーカー犯と普通すぎるストーリーの意味とは
今巻では七瀬悠月とニセコイしつつ、彼女をストーカーする相手は誰だ?という内容の推理風ストーリー展開でした。
最初は「誰が犯人か?」とか「どんな大層な犯行動機でストーカー行為をしたのか?」とか「最後には誰もが驚くようなどんでん返しが待っているのでは?」なんて風に考えながら読んでいましたが、推理パートは特に驚きも新鮮さもない、順当な結果に落ち着きました。
なので、一読直後は「犯人薄すぎない?」とか「ストーリーが極めて普通」とか「そもそも推理要素いる?」なんて風に思っていました。
二周目を読んでもその評価は変わりません。むしろ読むほどに推理要素のチープさが気になって。。。ふと気付きました。
これマジでストーカーとか推理要素とかどうでもいいんじゃん!
ええ、文字通り推理とか犯人がどうとか本当に心底どうでもよかったんです。
だってこの巻は七瀬悠月の個別ルートであり、つまり主軸となるのは七瀬悠月がどんな人物かということを魅せることなんですから。
つまりストーカーの彼はあくまで「七瀬悠月が悪意によって追い詰められると何を思い、どう動くのか」ということを示すための存在であり、深堀りすべき対象じゃないんです。
これはチン○ウパイセンについても全く同じです。こちらも負けじとチープでわかりやすい悪役でしたが、こっちも「七瀬悠月が暴力に晒された時にどうなるのか」ということを示すためだけの存在なのです。
つまり彼らはキャラクターではなく舞台装置というのが正しく、当て馬としての役割しかないものだったと。だからご大層な犯行動機やバックグラウンドを用意する意味もなければ、その必要もないんだと。
ストーリーもありきたりな展開でしかなかったのは、七瀬悠月の魅力を描く上でそこに力を入れる意味なんてある?と思ったからなのではないでしょうか。そんなとこにページ割くくらいなら悠月を書かせろ、みたいな(あとがきすら入らないほどページ制限ギリギリだったらしいですし)
ガガガチャンネル第100回で先生自身が仰っていましたが「これを推理ものと言ったら本職の人に怒られる」というのは、まさにこういうことなんじゃないかと思います。
きっと先生は「敵キャラとかストーリーとかホントどうでもいいから、追い詰められた悠月とか悪意に立ち向かう悠月とか、なんていうかとにかく悠月だけを見てくれ!」ということが仰りたかったんじゃないかなぁと愚考。
リア充ラブコメの真髄とは
先生が上述した通り、ヒロインの魅力を描くことに特化した方向性で二巻を書いたのだとすれば、今後も同じような構成が予想されます。
すなわち「毎巻ヒロインの個別ルートを大々的に展開し、あんな姿やこんな姿を見せまくる(尊死)」ということです。
普通なら物語の後半戦に差し掛からなければできないようなことを、最初からフルスロットルでやり抜くのでは、という予感に身震いしています。
これはまさに、主人公のスペックがカンスト、好感度フルマックス状態でスタートしているからこそできる荒技で、ここにリア充ラブコメの真髄があるのではないかと思います。
個別ルートの「先」に待つものは?
今巻で悠月が完落ちし、本格的にヒロインレースに名乗りをあげることになりました。
この後も同じように、各ヒロインが好感度120%状態になって戦場へ足を踏み入れてくることでしょう。
そして全員が出揃った後に待つのは、全力全開なヒロイン達による千歳朔争奪戦。血で血を洗う阿鼻叫喚のバトルロワイヤル(愉悦スマイル)になるはずです。
うん、やっぱ問題作ですね。
誰が笑い、誰が泣くことになるのか。どう負け、どう勝つのか。
青春ラブコメ界きってのハイスペック主人公は、いったい誰を選び、誰を突き放すのか。全員を選ぶのか? それとも誰も選ばないのか?
そんなことを妄想しつつ、首を長くして続刊を待ちたいと思います。
あと、もしかしたら別立てで「七瀬悠月の魅力を語る」ノート作るかもです。今回の本筋はそこだって言ってるわりにフワッとしか触ってないので。