NHKスペシャル"宗教2世"「神の子はつぶやく」感想①

ようやく観ることができたので、NHK+で視聴できるうちに感想を書き上げることにしました。


まずこのドラマ、かなり綿密に取材をして作り込んでいます。ちょっとしたセリフまで丁寧に作られている上、俳優さんたちの演技の力もあって、引き込まれてしまいました。

まず驚いたのは、SNSでエホバの証人2世の経験談を目にしている立場からも、キリスト教2世当事者としても違和感なく見ることができたことです。

(今回のドラマでは、主にエホバの証人をモデルにしていると思います。主人公姉妹が勧誘に参加させられるところは、モロに…という感じです。
でもそれに加えてキリスト教、特に原理主義的なプロテスタント2世が苦しみそうな部分も盛り込まれているように感じました

とくに主人公の遥ちゃんを演じた河合優実さん、素晴らしかったです。
表情だけでなく、とあるシーンののろのろとした手の動きが「ああ、虐待サバイバーっぽいな。私も以前はこんな感じがあったなあ」と当時の自分を思い出したくらいです…。

では早速、具体的な感想に移ります。
今日の記事では、私がキリスト教2世としてドラマから汲み取ったことを綴ります。


1.宗教1世の「母親」の生きづらさを描く意義

今回のドラマが秀逸だと思うのが、1世であるお母さん(田中麗奈・演)が宗教団体を信仰するまでの物語が描かれていたことです。宗教1世への理解なくして、宗教2世問題を理解することはできないだろうと気付かされました。

宗教にハマってしまう女性は、社会や福祉の助けを得られなかった人たちだという一面が描き出されていて、製作側の洞察力に感服です。

(ドラマの家族構成は、信仰してない父、熱心な信者である母、巻き込まれる娘たちという、
宗教2世の世界では多いであろう形になっていました。)

2.伝統キリスト教にも通じる世界観

2-1.あるよね、教団内の2世でも男性と女性とで窮屈さが全然ちがうの…

そして私がドラマを見ていて、胸がギューっとする感覚になったのは、比較的自由に学校生活を送っている義也くん(同じ教会の2世、説教師の息子)と母親からがんじがらめに干渉されている遥ちゃん(主人公)の対比を見たときでした。

私はキリスト教2世として、同じ宗教団体の2世でも女性に対する抑圧がより強いことは感じてきました。これは相当寄り添った取材をしてこなければ出てこない組み合わせだなあと…。
主人公を女性に設定したのも偶然ではないなと…。

そして高校時代、教団の教えに反発して自由になっていた義也くんが、父親と同じ「説教師」の勉強を始めたところでは複雑な気持ちになりました。

義也くんが悪いわけではないのに、
「ああ、あなたは比較的自由にお友達とも付き合っていれば、そこまで教団へのトラウマもないでしょうねえ」
と冷めた目で見てしまう自分がいるのです。
実際は「説教師家庭の苦しみ」もあったのかもしれないけど、そこは描かれていないので…。

キリスト教も、今でも牧師は男性が圧倒的に多いし、神父は男性のみと決まっています。
「女性が経験する2世のしんどさ」を知らない人たちばかりが、牧師や神父になって家庭のことに口出しをしていくって恐ろしいことだなと…。

(仮に女性の牧師がいても、教会内では立場の強い男性信者がいるので、その人たちの価値観に合わせざるを得ないだろうと想像しています)

こうして女性がより抑圧される世界が、世代を越えて再生産されてきたのかもしれないなと考えさせられました。


2-2.キリスト教系宗教1世の母親あるある!?
娘の性的なことに過敏に干渉…

つづいて私が昔を思い出して「うわあ…」と思ってしまったシーン。
遙は義也とのデートを母親に目撃されて、叱責を受けます。それは、男女関係に厳しい教団の教えにのっとったことでした。

「あんた、変なことされてないでしょうね」
というセリフと田中麗奈の言い方、表情…娘を心配するのではなく咎める感じが「ああ、思い出すなあ」と…。
私のいた宗派も、男女交際の禁止はなかったものの性的なことには厳しかったので、感じるものはありました。


2-3.原理主義的キリスト教っぽかったところ

私が育ったキリスト教の宗派は、穏健でした。
日曜日も学校の用事などは優先できたし、娯楽の制限もとくにありませんでした。
(それでも色々あったことは、このnoteで書いてきました)

ただ主人公に課される制限を見ながら、SNSで交流している他のキリスト教2世(原理主義的傾向の強いところ)のことを思い出しました。

・日程が日曜日に重なるから、修学旅行には行けない
・世の中の音楽は禁止


などの悩みを抱えているキリスト教2世も少数かもしれないけど、いるだろうなと…。
「運動会は日曜日」問題は、ネットでも時々目にするからです。

おそらく厳しい宗派で育ったキリスト教2世がこのドラマを見たら、私以上に感じるものは多かっただろうな(と同時に苦しいだろうな)とも思いました。

今日の記事は、ここまでです。
次のnoteでも、ドラマの感想を書いていくことにします。よかったら、お付き合いください。



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