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『鏖殺ノ乙女.』 感想







      すべてが茶番だった。


舞台に登る彼女達は薄っぺらい仮面をつけたまま、くるくると踊り続ける。煌びやかな宝石が散りばめられた派手なドレスに身を包んではいるが、それが空っぽな内面を覆い隠すための虚飾であることに、観客は皆気づいている。……我々は何を見させられているのだろうか?
しらけ切った会場の空気は、踊り続ける彼女達にも伝わっているのだろう。くるくると回転する速度を上げ、艶めかしい肢体を懸命に見せつけてくる様は健気だが、そこには何の矜持も、信念もありはしない。ただ観客に対する「媚び」だけが浮き上がり、より滑稽さに拍車をかける。確かに、扇情的でエロティックな光景だ。だが、そうした興奮は得てして醒めやすいものだ。
我々は、それが嗜みとばかりに一瞬で発火し、そして刹那の後に忘却する。後には何も残らない。ただのひとつも。

無意味。……そう、何もかもが無意味だったのだ。
それでも、彼女達は必死だった。たとえ無意味だったとしても、彼女達は踊り続ける以外に道はないのだから。それ以外の選択肢なんて、彼女達にあるわけがないのだから。

……踊っているのか、踊らされているのか。傍目からはわからないが、せめて今はただ、一刻も早くこの残酷なショーが終わることを願うばかりだ。






↑↑↑のっけからこんなポエムを垂れ流さずにはいられない程度には、つまらない作品だった。

う~ん、なんと言えばよいのやら・・・
前作「魔法少女消耗戦線」の良かった点をすべて潰し、悪かった点を更に伸ばした様な作品だった。

本作には、ま~それはそれは壮大なSF設定が敷かれているのだが、その壮大な設定のせいで、登場人物全員が地に足がつけられず、宙ぶらりんのまま物語が進行していく。

何故か「最初から」固い絆で結ばれているメイド、何故か「最初から」馬の合う悪友、何故か「最初から」最愛になっている妹(の”そっくりさん”)
全てに於いて始点が欠けている。だが、これは何も不思議なことではない。なぜなら、「最初から」彼女達は黒幕によってそういうふうに"設定"されているから。

・・・さて、これを茶番と呼ばずして何と呼ぼうか。画面の前のプレイヤーである私は、そうして眼前で繰り広げられる彼女達のむつみ合いを見せつけられる訳なのだが、一体全体私はどういった感情で彼女達のやり取りを見届ければいいのだろう。「最初から」茶番であることを宣告されてしまえば、どんな愛の囁きだって虚しく響くだけだろう。本来それはたった一つの特別な言葉のはずなのに、途端に使い古された安っぽいテンプレートにまで堕してしまった。記憶を弄りまわして、信念も矜持も何もかもを後付けにして。

復讐心?――ああそう、捏造された記憶だけどね。
みんなを守る?――ここには誰もいないのに?
きみが好きだ?――そんな言葉、僕はもう聞きたくないね。


なあ、これって一番やっちゃいけないことなんじゃないのか?
彼女達の実存を、最も馬鹿にして貶めていやしないか?(←こういうことを、まさしく人の尊厳を「凌辱」することに主眼を置いた作品に対して述べるのは倒錯した話だが、まさに「倒錯」しているが故に、凌辱ゲーはキャラクターの尊厳/実存と何よりも真摯に向き合う必要があると思う)

これが、「かわいそう=エロ」を掲げるブランドなりの、彼女達への陵辱だとでもいうのだろうか?残念ながら、僕はまったくノレなかった。

(しかも、質の悪いことに、この「茶番」を何度も何度もプレイヤーは繰り返し見せつけられる。ほんの少しずつ視点を変えながらも、この退屈さはちっとも変わらない。)

↑こうしたメタっぽい発言も、チープさに拍車をかける


最後の方は、壮大なSF描写と共に彼女達がこの茶番極まりない「システム」を壊し、自己を確立していくというお決まりの流れだが、事ここに至っても「茶番さ」はぬぐえなかった。特に積み重ねが無いのに、いつの間にか仲良くなっていく彼女達。なにこれ、結局「彼女達を取り巻く「システム」は何一つ壊れてませんよ」ってな具合に皮肉っているのだろうか?人はどこまでも「システム」の奴隷であると・・・


それにしたって、そういった類の「皮肉」は先達の「ク・リトル・リトル」の方が何倍も面白く、鋭く表現していたと僕は思うよ。アイロニーは「笑える」からこそアイロニーなんだよ?もっと僕を笑わせておくれよ・・・(笑えない皮肉ほど、見ていられないものはない)

いつ見ても笑顔にしてくれる魔法の画像


は~、それにしても「魔法少女消耗戦線」は良かった・・・(突然の懐古)
女性たちを踏み躙る男性陣(Black Cyc由来のユーモア溢れる竿役たち)も、そうした過酷な状況下で育まれる見目麗しい友情(そして崩壊していく様の美しさ※)も、それらの背後で犇めくどうしようもない「システム」の残酷さも、それでも抗い続ける人間の尊さも、何もかもが愛おしかったな……
SF描写だって上手くマッチしていたのだから、やっぱり本作も方向性は間違っていなかったのだと思う。嚙み合えば傑作を作れる力があることは、前作で充分すぎるほど証明していたのだし・・・

※みのりちゃんと七虹の友情は、実際には全然崩壊していないです

悪意マシマシの差分CGカット


・・・とにかく、今作は描写の何もかもが上滑りしていて、自分とは合わなかった。夢中でクリックしていた様な気もするが、それだって「何か一つくらい、良いところはないか」探しだすためにしていたようなもので、むしろ気持ちとしては強迫的で全然楽しくはなかった(自分は、面白いと感じた作品ほどペースが遅くなるタイプ)。
凌辱描写も、そもそもそうしたシーン数が少ないし、あっさりし過ぎだしで物足りない(トワさんの「自慰行為に耽る自分の姿」をモニター越しに眺めながらのオナニーは良かった👍)。
ただ、相変わらずメタヲ氏の絵は綺麗だし、音楽もとても良かったので、相応のクオリティーは担保されている。

次回作に期待したい。……このブランドの作品は絶対買うので。
なにせ「魔法少女消耗戦線」という、あれだけの傑作を作り上げた製作陣なのですから・・・


【追記】

特典冊子「スラムクイーン」を読んだ。

・・・こういうのでいいじゃん。内容は急ぎ足で描写もまだまだ足りてはいないけれども。それでも、僅か30枚程度の紙の上に、彼女達は確かに生きていた。……なんだよ、ちゃんと”地”に足がつけられるじゃん。その為の大地が、ここにはあったじゃんか。ここから、”積み重ねて”いけたじゃんかよ~😭
これを本編でもやってくれていたら・・・😭😭😭

精緻に組み上げられた構造物が崩壊していく様が美しいのと同様に、しっかりと物語に息づいたキャラクターだからこそ、その尊厳を破壊し、蹂躙し、簒奪する価値がある(空っぽの人形なんか、壊してもつまんねえだろ?)。
そうして最後に残った、もっとも輝かしいものに、我々はいつだって希望を見いだすのだから。



…最後にこれが読めて良かったです。これでようやく、この作品にもピリオドがつけらそうです。


おしまい

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