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中小企業診断士試験解答までの思考過程:令和5年事例Ⅰ第1問


はじめに

 今から振り返ってみると多年度になってしまった原因は①論理の飛躍癖の改善に時間がかかったこと②情報処理能力の不足だと分析しています。①の論理の飛躍癖とは設問で聞かれていることを考えていると論理展開のつながりが途中で切れて違うことを答えてしまうことです。例えば令和5年の事例Ⅰ第2問で現経営者が行った差別化を答えなければならないのに現経営者のやったことをいろいろ考えているうちに「離職率を下げるため相互に助け合う土壌を作った。」というような差別化ではない解答をしてしまうことです。②の情報処理能力不足とは特に事例Ⅱで多く起こるのですが与件文の文字数が多くたくさんのキーワードが乱立するなかで混乱して何が何だかわからなくなってしまうことです。
 これらの問題を解決するために私は「つながり」ということを意識して問題を解くようにしまた。これができると聞かれていることから外れなくなり、乱立するキーワードに惑わされずに安定的に解答できるようになります。この思考過程を示しますので同じようなことで悩んでいる方は取り入れてみてください。
 これは再度思考過程を意識して解き直したときの思考過程なので本番で解いた再現答案とは一致しません。
 まずは令和5年事例Ⅰの自分で作成した解答を用意して読んでみてください。

与件文の読み方

 私は設問文から読まず、与件文から読んでました。理由は設問文を意識すると与件文に集中することができないからです。具体的には設問文が頭の片隅にあると与件文を読んでるときに設問文のキーワードに反応してしまい読み終わった後にA社の流れがほとんど頭に入っていないのです。A社ってどんな流れで成長し、今社長は何やりたいんだっけと思ってまた読みだしてしまうような状態になります。結局、設問文も読み直して時間を無駄に使ってしまいます。(一般的には設問文から読む人が多いようです。)
 与件文から読んで強みだけに線を引きます。情報処理能力が弱いため強みだけに絞って線を引きます。ただし、絶対に強みだけは外さないようにします。弱みや機会、脅威は7割でOKとします。実際は弱み・機会・脅威は後から拾いに行ってもそんなに外しません。(個人的な感覚値です。)

令和5年事例Ⅰ

第1問

 A社の強みと弱みを拾います。与件文を読んだときに強みに線を引いたので線が引いてある場所から優先順位をつけ、編集して30字以内にします。

線を引いたのは以下の通りです。
2段落目の「コシの強い蕎麦」
7段落目の「近隣の競合する外食店とは異なる、商品とサービスの質を高めることで、差別化を行った。」
8段落目の「相互に助け合う土壌が生まれ、従業員が定着するようになった。」「接客においては、自主的に問題点を提起し解決するような風土」

 ここに線を引いた理由はVRIO分析結果より強みと判断したからです。ただし、診断士の試験ではI(模倣困難なこと)とV(経済的価値)だけを意識すればよいです。Iを投入してVを生み出しているところを探します。経済学っぽく書くとf(I)=Vです。
※VRIO分析のIは模倣困難性であり模倣困難なことではありませんがこの記事ではI=模倣困難なこととしています。

 まずVですが経済的価値なので売上や利益が向上したという部分が該当します。与件文から売上と利益向上を抜き出すと
V1=8段落の最後「現経営者に引き継がれてから5年間は前年度の売上高を上回るようになり、2015年以降、安定的に利益を確保できる体制となった。」
となります。
 このV1を生み出したIを探すことになります。V1は「現経営者に引き継がれてから」Vを生み出したということなので7段落の「現経営者に引き継がれると」以降でIを探します。
I1=「近隣の競合する外食店とは異なる、商品とサービスの質を高めることで、差別化を行った。」
I2=「相互に助け合う土壌が生まれ、従業員が定着するようになった。」
I3=「接客においては、自主的に問題点を提起し解決するような風土」

となります。もちろん「ファミリー層の絞り込み」「個室やボックス席を中心とした」ことも現経営者が行ったことでありVを生み出していますが、Iではありません。ここで「コシの強い蕎麦」は直感的にIだと分かります。(言い切っていますが過去問をやるとこの直観は養われます。)現経営者に引き継がれてからコシが強くなったわけではないためV1を生み出していないと考えてしまいそうですがそうではありません。I1の「商品」は「コシの強い蕎麦」が生み出しているのです。したがって
I4=「コシの強い蕎麦」
となります。

弱みは
7段落の「原材料の仕入れが不安定」
8段落の「原材料の高騰がA社の収益を圧迫」「常連である地元の顧客も高齢化」
となります。(これは直接的に弱みだと分かるので説明不要だと思います。)

したがって解答は
強み「コシの強い蕎麦、質の高い商品とサービス、自主的に解決する風土」
弱み「原材料が高騰して仕入れが不安定、常連である地元の顧客が高齢化」
となります。

「つながり」の重要性

 ここでとても重要なのが「つながり」を意識することです。ここでいう「つながり」とは強みを探すときに以下のような思考過程で飛躍することなく連続的に考えていくことです。

<思考過程>
①設問の強みを探すぞ。
②強みはVを生み出すIだ。
③VはV1だ。
④V1にある「現経営者に引き継がれてから」に注意してIはI1~I4だ。

 このように①から④につながりがあるのがわかるでしょうか。上の行にある単語が必ず下の行で使われているということです。つまり①の強みが②でも使わていて②のVが③にも使わている、③のV1が④でも使われていて結果①強み=④I1~I4となります。またポイントは設問のキーワードからスタートして「つながり」を作って解答を作ることです。これをやると論理の飛躍が起こらず、混乱することがありません。
 設問のキーワードから論理展開して「つながり」を意識して解答を書くと自然と混乱なしに設問に答えることができます。

終わりに

 設問のキーワードから論理展開して「つながり」を意識して解答を書くとブレずに設問に答えることができるということがわかってもらえたでしょうか。第2問の思考過程も記事にしていきたいと考えています。


 






 





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