短編『何も気にならなくなる薬』その159
「論理」
「注入」
「バレンタイン」
今回はこの三つ。
その前にすこし脱線。
これからまた東北へ。
仕事とはいえ朝早く起きるのはやはり堪える。
寝ている間に目的地に着いている。そんな生活ができたら良いなと。でも、寝ている自分を他人に預けるというのは、なかなか勇気がいるなと酔っ払ったときのタクシーでいつも思う。
「バレンタイン?もう過ぎたじゃない」
「だから相談しているの、イベントじゃなくてもさり気なく渡せる方法」
「初めからイベントに乗っかればいいのに」
「だって、他の人と一緒に渡しても仕方ないじゃん」
「確かに彼はこの学校じゃ有名人だけど、で、どうするつもりなの」
「どちらにせよ手作りなのは変わらないわ」
「そこはこだわるんだ」
「だって、よく考えてみてよ、思いを伝えるには作り出したもののほうが想いとか愛情とか注入できるでしょ」
「なんだか論理的じゃない気がするけど」
「とにかく、これが作ったやつ」
「あら、仕事が早いじゃない」
「料理番組で勉強したの」
「どこを?まぁ、そしたらあとは渡すだけね。どれどれ、ってこれ市販の入れ物じゃない」
「うん、その方が安心できるかなって」
「安心ってなんだっけ?」
「見た目かな」
「いや、違うと思うけど」
「あれ、なに?チョコの持ってきてんの?一つ頂戴」
「あっ、うん」
「サンキュー」
「行っちゃった」
「まぁ、渡せたことになるかな」
「うん、よかったー、楽しみだなぁ」
「何が」
「ホワイトデー」
美味しいご飯を食べます。